忍者ブログ

塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

[PR]



×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


主要なさび止め塗料:下塗り塗料(2)



合成樹脂系防食塗料

 各種の合成樹脂が防食塗料に応用されるようになって、油性系さび止めペイントでは耐え得ないような厳しい腐食環境でも有効な防食塗料が開発されました。このような塗料を用途に応じて適切に選択することにより、高性能、高耐久性の防食塗装が可能となります。
 ただしここで注意が必要なことは、一般に合成樹脂系塗料は油性系塗料と比較して施工上の制限条件が難しいことです。特に、ほとんどの塗料(ジンクリッチペイントも含めて)の場合にブラスト処理による素地調整が必要です。

 鋼構造物の防食塗料に使用されるエポキシ樹脂塗料は主として、ポリアミドやアミンアダクトなどを硬化剤とする二液形塗料です。厚膜型塗料、低溶剤形塗料、無溶剤形塗料とすることもできます。ウレタン樹脂塗料も二液形塗料で、ほぼ類似した特性を有していますが、素地との付着性はエポキシの方が優れています。エポキシ系は大気曝露条件で白亜化しやすい欠点がありますが、ウレタン系は耐候性が良いです。
 下塗として使用する場合に、中塗りの塗装間隔が長くなると層間付着性が悪くなるので注意を要します。ウレタン樹脂系は低温乾燥性が良いので冬期にエポキシに代わって用いられることが多いですが、最近ではエポキシ樹脂系でも低温乾燥性の良いものが開発されました。ウレタン系は高湿度下で塗装すると発泡する傾向がありますので注意を要します。
 エポキシまたはウレタン樹脂にタール系塗料(タールピッチや膨潤炭など)を配合した塗料は極めて防食性が優れ、厚塗りが可能であるため、高度の防食性能と耐久性が必要な箇所や、塗り替え塗装に困難が伴う箇所などに用いられます。ほかの合成樹脂系塗料と比較して素地への浸透性が良く、不完全な素地調整面への適応性がやや良いです。この塗料には防錆顔料が配合されておらず、防食効果はもっぱら塗膜の環境遮断機能によるものですから、塗装に当たっては必要な塗膜厚を確保してピンホールのないように施工することが非常に重要です。色調が黒色、さび系に限られており、また着色塗料を塗り重ねてもブリード(にじみ)しやすいので美装仕上げには適しません。
 変性エポキシ樹脂塗料はエポキシ樹脂の一部を他の樹脂で置換したものですが、タールエポキシ樹脂塗料のタール系材料を他のブリードしない樹脂と置換したものともいえるのでノンブリードタールエポキシ樹脂塗料とも呼ばれることがあります。
 置換する樹脂、すなわち変性樹脂としては原油高温分解時や石油化学製品合成時の副生成物、コールタール分解時の生成物、ロジン誘導体などが使用されています。変性樹脂に低分子量のものを使えば素地への浸透性が良く、付着性も良好です。
 この種の塗料は高度の素地調整が不可能な場合、現地塗り替え、補修塗装などに適用することができます。着色塗料を塗り重ねた場合、タールエポキシ樹脂塗料のようなブリード現象が起こらないので美観の必要な箇所にも使用することができます。防食性能においてタールエポキシ樹脂塗料とほぼ同等の性能も得られています。
 防食塗料に用いられる塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体が代表的なものです。塩化ビニル系樹脂は一般に分子量が高く、高不揮発性分のワニスが得難いので一度に厚膜に塗装することが出来ませんでしたが、最近では厚膜の得られるタイプの塗料が出現しています。
 塩化ゴム系塗料は、塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化樹脂と可塑剤、安定剤、アルキド樹脂などの変性用樹脂から成る塗料です。塩化ビニル系塗料も塩化ゴム系塗料もいずれも熱可塑性樹脂で一液形の溶剤揮発によって乾燥する形の塗料で、耐水性・耐海水性などに優れています。耐熱性・耐溶剤性は良くありません。速乾性であることは素地への湿潤性が悪くなり、悪素地適性はなく適切な防食下地(ジンクリッチプライマーが適している)を要します。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

PR

主要なさび止め塗料:下塗り塗料(1)




 下塗り塗料は防食効果の主体をなすものであって、鉄鋼面に良好な付着性を有し、防食性能のために必要な膜厚を確保しうる塗装性状で、また適当な防錆顔料を配合して防食性能を向上させています。
 上塗り塗料と比較して顔料の配合比率が高く、光沢・色彩などの外観的要因、耐候性などには大きな配慮は支払われないことが多いです。

油性系防食塗料

 油性系防食塗料は最も長い使用実績のある鋼構造物用防食塗料です。通常の腐食環境で良好な防食効果を示し、さび落としの程度の許容度など施工性の幅が合成樹脂系塗料より大きいこと、はけ塗り作業性が良いこと、価格が比較的安いことなどが広く採用されている理由と思われます。ただし塗膜の乾燥が遅く、特に低温乾燥性が良くありません。
 下に主要な油性さび止めペイントの種類を示しました。
 JIS1種では純油性系ビヒクル、2種は油・樹脂混成系のビヒクルで2種の方が1種より塗膜の乾燥が早いです。防食性能においては1種の方が優れているので、第1層にはJIS1種を適用する例が多いです。第2層にはJIS2種を塗装する例も多いですが、橋梁を始め大型構造物では第2層にも防食性能の良い1種を使用するのが普通です。
 一般さび止めペイントは防錆顔料の配合率が低く、防食効果が小さいのでごく穏やかな腐食環境、あるいは耐久性を必要としない箇所にしか使用しません。防錆顔料の配合は油性系防食塗料の場合特に効果が著しいです。

主要な油性さび止めペイント

一般用さび止めペイント(JIS番号 K5621 1種・2種・3種)

・防食効果はあまり大きくないので、穏やかな腐食環境に使用する

鉛丹さび止めペイント(JIS番号 K5622 1種・2種)

・長い実績を有する
・防食効果が優れている
・塗膜の乾燥が遅い

亜酸化鉛さび止めペイント(JIS番号 K5623 1種・2種)

・鉛丹に次ぐ実績がある
・元来2液型である
・JIS該当品ではないが既調合形もある
・乾燥が早く防食性に優れている

塩基性クロム酸さび止めペイント(JIS番号 K5624 1種・2種)

・乾燥が早く塗膜物性が良い

シアナミド鉛さび止めペイント(JIS番号 K5625 1種・2種)

・乾燥が早く塗膜物性が良い

ジンククロメートさび止めペイント(JIS番号 K5627 A・B)

・Aは主として軽金属面、Bは鉄鋼用である

鉛丹・ジンククロメートさび止めペイント(JIS番号 K5628)

・鉛丹ペイントより速乾であるが、防食効果は及ばない

鉛酸カルシウムさび止めペイント(JIS番号 K5629)

・白色の下塗り塗料とすることができるので塗彩仕上げ用の下塗に用いて便利である
・特に亜鉛面用に適する

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

主要なさび止め塗料:ショッププライマー




 ショッププライマーは鋼板よりショットブラスト、グリットブラストなどの処理によってミルスケール、赤錆などの汚染物を除去した後に原板に塗装し、加工後、さび止め塗装が行われるまでの期間の防錆を目的とするものです。ショッププライマーに必要な性能は次の通りです。
(1)速乾性。短時間で取扱い可能。
(2)鉄鋼面への付着性良好。
(3)各種塗料の塗り重ねが可能で相互の付着性が良い。
(4)溶接・溶断に悪影響を及ぼさない。
(5)数か月以上の防錆性。
 ショッププライマーには、長ばく形エッチングプライマー、ジンクリッチプライマー、ノンジンクプライマー、ジンクプアープライマーなどが使用されています。
 エッチングプライマーは従来、ウォッシュプライマーと呼びならされてきた塗料です。最初に開発された形は現在、短ばく形と呼ばれているものです。ポリビニルブチラール溶液にジンククロメート(ZTO型)などの顔料を加えた主剤と、リン酸アルコール溶液を使用前に混合する二液形塗料です。短ばく形エッチングプライマーは鉄鋼用のほか軽金属、亜鉛めっき面などの付着性と防食性向上の目的に使用されますが、極めて薄膜で屋外防食性はなく、塗装後すみやかに塗り重ね塗装を行う必要があります。
 ショッププライマーに用いられるものは、フェノール樹脂などを加え、ある程度の耐久性が得られるように改良したもので、長ばく形エッチングプライマーと呼ばれます。主に塗り重ねられる塗装系が油性系、油変性アルキド樹脂系の場合に多く使用されます。
 重防食塗料が普及されるに従い、エッチングプライマーよりも高い防食効果を有するショッププライマーとして、ジンクリッチプライマーが使用されるようになってきました。
 ジンクリッチプライマーは亜鉛末の電気防食作用を基本とする塗料です。ショッププライマーとして使用するほか、膜厚50~75μm程度の厚膜形ジンクリッチペイントとして、重防食用塗料としても使用されます。無機質と有機質の別があり、無機質はアルキルシリケートあるいはアルカリシリケートをバインダーとしたものですが、ショッププライマーの場合はアルキルシリケート系が用いられています。有機質はエポキシ樹脂、ゴム系、ポリスチレン樹脂などをバインダーとして用いるものですが、エポキシ樹脂が殆どです。無機質と有機質の特長の比較について、概していえば無機質は防食性能、耐熱性に優れていますが、有機質は施工性に優れています。
 塗り重ねられる塗装系には広く各種の合成樹脂系塗料の適用が可能です。しかし油性系、油変性アルキド樹脂系の塗り重ねは出来ません。
 これは油性塗膜とジンクリッチ塗膜の層間で、早期に、はく離現象の発生する危険があるためです。その理由としては、層間で亜鉛石けんの生成反応が起こること、亜鉛の溶出によるアルカリ化によって、油性系塗膜が加水分解を受けやすいことなどが挙げられています。
 ジンクリッチプライマーをショッププライマーに使用したときに溶断・溶接性が劣り作業効率を低下させることがあります。
 このような場合、溶断・溶接の前に塗膜を除去するなどの手段を取ることがありますが、最近では塗膜除去の必要のない新タイプの無機ジンクリッチプライマーが開発されました。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

広告リンク

ブログ内検索

忍者AdMax

楽天市場

ランキング

ランキング