水性塗料とは、水を溶剤、希釈剤または分散剤とする塗料の総称です。この水性塗料を、構成する樹脂の形態別に分類すると、塗料用樹脂分子中に親水基を導入することによって水溶性にし、それに適当な顔料を配合して塗料化した水溶性樹脂塗料、界面活性剤などを用いて乳化重合で樹脂が合成され、樹脂粒子(0.1~10.0ミクロン)が水の中に分散されているか、後乳化で水中に樹脂粒子が強制分散されているエマルションで塗料化されたエマルション塗料、エマルションよりさらに粒径の小さい(0.1ミクロン以下)水溶性とエマルションの中間にあるコロイダルデスパーション(ハイドロゾル)塗料、粉体塗料を水中に分散させたような粒径の大きいサスペンション塗料などに大別することができます。一般に広く使用されている溶剤型塗料は、その中に20~70%の有機溶剤を含み、安全衛生面から、また大気汚染の公害面からもあまり好ましいものではありません。これに対し、水を分散媒とした水性塗料は、これらの有機溶剤型塗料の問題点を解消するものであり、有機溶剤型塗料と比較すると次のような長所を持っています。
(1)大気汚染がほとんどなく低公害塗料である。
(2)有機溶剤が水に置き換えられているので省資源型である。
(3)塗装環境が安全で衛生的であり、作業面でも火災の心配が少ない。
(4)塗装器具などの汚れは水で簡単に洗える。
反面、次のような短所もあります。
(1)水の蒸発潜熱が大きいので、蒸発が遅く、造膜過程で流れ、たれを生じる。
(2)水の表面張力が大きいので、脱脂を十分に行わないと塗面にはじき、発泡を生じる。
(3)セッティング中にベーパーウォッシュの現象を生じる。
(4)静電塗装で使用する場合には、塗料の回路を絶縁する必要がある。
(5)水洗ブースの場合は、ブース用水の排水処理が必要である。