耐候性での選定
粉体塗料の耐候性は主に使用する樹脂で決まります。粉体塗料の選定では、まず必要とされる耐候性などの塗膜特性から塗料の樹脂系を選定し、耐食性は使用される素材に対する化成処理の検討などで対応するのが一般的です。エポキシ樹脂を多く配合するエポキシ系やエポキシ/ポリエステル系などの塗料は耐食性や耐薬品性は良好ですが、紫外線による変退色やチョーキングが発生しやすいため屋内用途に多用されます。屋外耐候性が必要な場合にはポリエステル系やアクリル系などを採用する必要があります。その際、液体塗料の促進耐候性規格をそのまま粉体塗料規格に適用しようとすると選定に苦慮することがあります。例えばサンシャインウェザーメーター(SWOM)での促進耐候性試験では、高耐候性ポリエステル樹脂系粉体塗料が数百~千時間前後の耐候性であるのに対して、屋外型溶剤形塗料では2千時間程度を示すものもあり、大きく異なることがあります。促進耐候性試験の比較評価には「同じ塗料系、同じ樹脂系、同じ色調で評価する」といった大原則があります。実際には高耐候性ポリエステル粉体塗料は道路・建築資材や自動販売機などで多くの使用実績を有しています。粉体塗料採用の際には類似性能の塗装製品への採用実績なども照らし合わせて、適用規格の見直しも含めた柔軟な対応も必要です。素材・表面処理の検討
粉体塗装では溶剤型塗料以上に、素材の脱脂はもちろんのこと、化成処理の選定と管理が必要です。粉体塗料に適した化成処理としては、鉄素材ではリン酸亜鉛処理やジルコニウム系処理が挙げられます。リン酸鉄処理は溶剤型塗料とは異なり、粉体塗料では脱脂程度の耐食性しか得られないことが多いので屋外用塗装製品には推奨しがたいです。またリン酸亜鉛処理では処理剤の番手によっては、溶剤型塗料に適したものや粉体塗料に適したものなどがあるため確認が必要です。
ブラスト処理は、処理後ただちに塗装することには良好な表面処理の一つとなりますが、時間を空けてしまうと素材表面に酸化膜が生成して耐食性が大きく低下します。また、ブラスト素材に油分や塩分などが混入すると素材表面を汚染して付着性や耐食性が低下しますので管理が必要です。黒皮鋼板は表面状態のばらつきが大きく剥離要因となりやすいことから、耐食性が必要な用途では黒皮除去後にリン酸亜鉛処理など適切な化成処理を施すことが望ましいです。素材や処理を変更することが困難な場合には、エポキシ系など耐食性に優れた樹脂系塗料の採用や、プライマーなどの管理が必要となります。
粉体塗料のメリットは1コートで必要な塗膜性能が得られやすいことです。プライマーや上塗り塗装を入れた複層塗装系にするのか、素材や化成処理を見直して1コート塗装にするのか、要求性能や製品構成、経済性を考慮した検討のしどころとなります。