粉体塗料は常温で固体である必要性から、使用する樹脂のガラス転移温度(Tg)は高く、溶剤型塗料で使用される樹脂と比較して主鎖は固くなる傾向があります。このため塗膜の柔軟性を得るために架橋間分子量が大きい設計となります。一般的な熱硬化性溶剤型塗料の塗膜の架橋分子間は数百から千程度にあるのに対して、粉体塗料塗膜のそれは数千前後と大きくなり、網目の面積として考えると粉体塗膜のイメージが捉えやすくなります。このため粉体塗料で十分な耐食性を得るためには40~80ミクロンなどとメーカーが推奨する膜厚が必要となります。架橋間分子量を液体塗料並みに小さくする設計も不可能ではありませんが、樹脂のTgが高いことからガラスのような硬脆い塗膜となってしまいます。また、溶剤型塗料では耐溶剤性の向上策として架橋密度を高めて緻密な膜にする手法を用いることが出来ますが、粉体塗料では樹脂の主鎖自身を耐溶剤性に優れた組成にする手法がとられており、このことがポリエステル樹脂系粉体塗料の耐溶剤性と耐候性を共に高められない理由の一つとなっています。さらに粉体塗料の製造工程では、顔料は溶融混練機で樹脂中に練り混ぜられますが、液体塗料における"分散"にはほど遠い状態です。このため、顔料濃度には限りがあり、溶剤型塗料に比べて同じ膜厚での隠ぺい性は劣る傾向があります。