忍者ブログ

塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

[PR]



×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


粉体塗料・粉体塗装管理



粉体塗料の色差について

 粉体塗料の色調管理は通常色差⊿E=0.5~1.0程度で実施されます。色調管理の厳しい被塗物では、液体型塗料の規格に合わせて色差⊿E=0.3での管理を要望されるケースも散見されますが、塗料の特徴に即した管理値の設定が望ましいです。塗装製品の色調変動原因としては、例えば溶剤型塗料では「希釈粘度による変動」や季節による「シンナー変更に伴う変動」など、塗料の調色精度以外にも塗装ラインでの塗装条件による色調変動が発生します。これに対して粉体塗料では、黄変しやすい焼付炉など一部の設備問題を除けば、塗装ラインでの変動要因はなく、1年を通じつ安定した色調を得ることができます。このことを考慮すれば粉体塗料の色調管理値⊿E=0.5~1.0は決して緩い値ではないことが理解できます。

塗料及び使用環境の管理について

 粉体塗料が温度や湿度によって砂糖が固まるよう凝集して固化する現象をブロッキングといいます。ブロッキングは主に熱によって発生するため、塗料の輸送・保管時はもちろん、塗装環境においても温度管理が大切です。特に低温硬化塗料や高耐候性などおn機能性塗料はブロッキングが発生しやすい傾向があるため30℃以下の管理が望まれます。また、カラーガード品などの汎用常備色塗料においても35℃以下の管理が推奨されています。それ以上の温度ではほとんどの熱硬化性粉体塗料ではブロッキングの発生や、固相反応による肌荒れや光沢低下などの外観異常の発生原因の一つとなります。特にエポキシ系やエポキシ/ポリエステル系、ポリエステル/TGIC系及びアクリル系などの粉体塗料では固相反応によるゲル化が進行しやすいです。粉体塗料採用時には塗料の保管庫はもとより、塗装ブースも高温にならないように配慮することが望ましいです。夏季休業前などには粉体塗料の回収機のフィルターに逆洗をかけて付着した粉体塗料を払い落としたり、塗装機のタンクから塗料を抜き取って冷暗所に保管したりするなど塗装ライン内で塗料のブロッキングや劣化が発生しない工夫をすることが望ましいです。

粉体塗装の設備対応

 粉体塗装で発生する多くの不具合は事前の設備対応で防止することができます。粉体塗料の特徴に配慮された設備対応は塗装の省力化と、品質の良い塗装のポイントといえます。特に塗装機の検討の際には、最も多く塗装される標準的なワークの他に、最も塗装しにくい形状の被塗物での塗装確認が必要です。塗装設備が完成した後から、想定外の被塗物の自動塗装を実施しようとしても、ガン数の増加など再設備投資が必要になることが多いので注意が必要です。
 また、粉体塗料は回収粉を再使用できることが利点の一つとなっていますが、回収粉の再使用を前提とした”低塗着効率”の塗装設定は推奨できません。これは静電粉体塗装が微粉の塗装を得意としないことによります。粉体塗料粒子は空気の流れに乗って被塗物近傍まで搬送されますが、例えば20ミクロン以下の微粉は空気の粘性の影響を受けて被塗物に塗着しにくい傾向があります。塗着効率の低い設定をした場合、回収機内に微粉が増加・蓄積します。塗装機に送られるミキシングタンク内の塗料の粒度は、新粉との混合比率の低下とともに低下します。これがさらなる塗着効率の低下を引き起こし、塗装膜厚低下(スケの発生)や、ガン先などへ塗料が凝集してスピットの発生原因となります。回収粉の増加と微粉の蓄積が進むと、回収タンク内での塗料の流動性の低下(搬送不良)が発生し、最悪の場合、定期的に蓄積した回収粉を廃棄することも必要となります。一方、高圧エアーによる粉体塗料の搬送自体もインジェクター内や塗料粒子同士の衝突などにより粉体塗料が砕かれて微粉増加の要因となるため、塗料のムダ吹きも回収粉の増加や微粉化を促すことになります。
 微粉に関するこれらの注意事項は特に摩擦帯電ガンにおいて重要です。ガン内壁との接触摩擦帯電を利用して塗装する摩擦帯電ガンでは、大粒子径の塗料粒子に比べて微粉はガン内壁へ衝突しにくく、接触摩擦帯電しなかった塗料は回収粉の増加要因となります。摩擦帯電ガン使用時には、特に塗着効率を高めておくことが重要となります。
 回収粉は外部から持ち込まれるゴミなどに汚染されやすく、物や色混じりなどの塗装欠陥の原因となりやすいです。このため可能な限り新粉の使用比率を高めて塗装することが美粧塗装を実施するためにも好ましいです。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

PR

粉体塗料の選定法



耐候性での選定

 粉体塗料の耐候性は主に使用する樹脂で決まります。粉体塗料の選定では、まず必要とされる耐候性などの塗膜特性から塗料の樹脂系を選定し、耐食性は使用される素材に対する化成処理の検討などで対応するのが一般的です。エポキシ樹脂を多く配合するエポキシ系やエポキシ/ポリエステル系などの塗料は耐食性や耐薬品性は良好ですが、紫外線による変退色やチョーキングが発生しやすいため屋内用途に多用されます。屋外耐候性が必要な場合にはポリエステル系やアクリル系などを採用する必要があります。その際、液体塗料の促進耐候性規格をそのまま粉体塗料規格に適用しようとすると選定に苦慮することがあります。例えばサンシャインウェザーメーター(SWOM)での促進耐候性試験では、高耐候性ポリエステル樹脂系粉体塗料が数百~千時間前後の耐候性であるのに対して、屋外型溶剤形塗料では2千時間程度を示すものもあり、大きく異なることがあります。促進耐候性試験の比較評価には「同じ塗料系、同じ樹脂系、同じ色調で評価する」といった大原則があります。実際には高耐候性ポリエステル粉体塗料は道路・建築資材や自動販売機などで多くの使用実績を有しています。粉体塗料採用の際には類似性能の塗装製品への採用実績なども照らし合わせて、適用規格の見直しも含めた柔軟な対応も必要です。

素材・表面処理の検討

 粉体塗装では溶剤型塗料以上に、素材の脱脂はもちろんのこと、化成処理の選定と管理が必要です。粉体塗料に適した化成処理としては、鉄素材ではリン酸亜鉛処理やジルコニウム系処理が挙げられます。リン酸鉄処理は溶剤型塗料とは異なり、粉体塗料では脱脂程度の耐食性しか得られないことが多いので屋外用塗装製品には推奨しがたいです。またリン酸亜鉛処理では処理剤の番手によっては、溶剤型塗料に適したものや粉体塗料に適したものなどがあるため確認が必要です。
 ブラスト処理は、処理後ただちに塗装することには良好な表面処理の一つとなりますが、時間を空けてしまうと素材表面に酸化膜が生成して耐食性が大きく低下します。また、ブラスト素材に油分や塩分などが混入すると素材表面を汚染して付着性や耐食性が低下しますので管理が必要です。黒皮鋼板は表面状態のばらつきが大きく剥離要因となりやすいことから、耐食性が必要な用途では黒皮除去後にリン酸亜鉛処理など適切な化成処理を施すことが望ましいです。素材や処理を変更することが困難な場合には、エポキシ系など耐食性に優れた樹脂系塗料の採用や、プライマーなどの管理が必要となります。
 粉体塗料のメリットは1コートで必要な塗膜性能が得られやすいことです。プライマーや上塗り塗装を入れた複層塗装系にするのか、素材や化成処理を見直して1コート塗装にするのか、要求性能や製品構成、経済性を考慮した検討のしどころとなります。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

粉体塗料採用時の検討内容



焼付炉の確認

 近年では150℃前後で焼付可能な低温硬化タイプの粉体塗料が多く上市されています。しかし溶剤型塗装ラインの焼付炉の中には、使用されている断熱材が薄くてさらなる昇温に向いていなかったり、炉長が短かったりする場合が多いです。粉体塗料を検討する際には、真っ先に炉温測定を実施して、所定のコンベアスピードで粉体塗料に必要な被塗物温度保持時間が得られるかを確認することが大切です。

粉体採用色の確認

 粉体塗料の受注量は300kgからとしているメーカーが多いです。特注色の小ロット対応は経済的に合わないことが多いので、カラーガード品などの近似色の活用も一法です。小口色が多い場合には、色替え対応として液体塗装との併用も現実的な対策の一つです。

被塗物の素材厚

 粉体塗料は焼付型塗料のため十分な塗膜性能を得るには、仕様書に記載された"被塗物温度保持時間"を確保する必要があります。炉温測定では標準素材厚のワーク以外にも次の確認が必要です。
 ①被塗物の接合部分など最も素材が厚く熱容量が大きくて昇温しにくい部分
   焼甘防止を目的とします。炉長やコンベアスピードの決定要因となります。
 ②最も素材が薄くて昇温しやすい部位
   オーバーベーク防止を目的とします。炉温測定の最高温度設定の決定要因となります。
 粉体塗料の苦手とする被塗物は一般的に昇温に時間を要する熱容量の大きな被塗物ですが、低温硬化タイプの粉体塗料の登場で肉厚素材への塗装事例も増えてきました。しかし最も不得手な被塗物は「素材厚の差が大きい被塗物」です。最厚部で必要な焼付温度保持時間を確保できていても最薄部ではオーバーベークによる変色や塗膜の発泡などの不具合が生じやすいためです。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ にほんブログ村 住まいブログ 塗装・ペンキへ にほんブログ村 環境ブログ 大気・水・土壌環境へ
にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村


拍手[0回]

広告リンク

ブログ内検索

忍者AdMax

楽天市場

ランキング

ランキング