塑性加工を伴わないような金属同士の接触、すなわち鉄鋼製品の回転、摺動する部分には、荷重がかかると同時に、同じ面に繰り返し摩擦が加わるので、冷間加工に使用されるようなリン酸塩皮膜(リン酸亜鉛系皮膜やリン酸亜鉛カルシウム皮膜)は使用できません。この場合には、各種リン酸塩皮膜の中でも最も硬く、耐荷重性に優れ、油の吸収/保持性も良好なリン酸マンガン皮膜が用いられます。
リン酸マンガン加工液は、マンガンイオン、鉄イオン、リン酸イオン、硝酸イオンを含有する酸性水溶液です。反応機構はリン酸亜鉛系処理とほぼ同様であり、素地(鋼)のエッチングに伴う素地表面のpH上昇によって、加工液中から皮膜成分が沈殿析出する反応になります。皮膜はヒューリオライトと呼ばれる結晶形態を取ります。ただし、結晶中のマンガンと鉄の比率は加工液組成および処理条件によって変化します。