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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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塗料による防食




 金属の腐食は、局部電池の形成による電気化学反応であり、anode(陽極)では金属の溶解反応が起こり、cathode(陰極)では中性で酸素の存在する条件では水酸化物イオンが生成します。
 anode反応とcathode反応は、必ず等しい速度で進行し金属の溶解速度に相当する腐食電流が溶液中をanodeからcathodeに向かって流れます。
 鉄面に塗装を行うことにより、このanodeとcathodeの両極の間を高抵抗の塗膜で被覆し両極間に高抵抗を挿入したことになるので腐食電流は減少します。また塗膜下で起こる腐食反応をanode反応、あるいはcathode反応の分極を大きくすることにより抑制します。これらの防食作用には塗膜の透過性、防錆顔料の作用などが重要な役割を果たします。
 一般に塗膜は電気抵抗が高いので、ごく特殊な場合を除いてほとんどすべての場合その金属の腐食を軽減することができます。
 金属の腐食を少しでも軽減する性質のあるものを全て防食塗料ということができますが、現在ではより積極的に、金属の腐食を防止するために防錆顔料や塗膜の透過度の小さい展色剤(ビヒクル)を用いた塗料を防食塗料と呼んでいます。
 防食を目的とする塗料にはいろいろな用途があり、用いられる対象により必要とされる性状も異なったものとなりますが、一般に防食塗料の塗装のシステムとしては次のような機能が要求されます。
(1)塗膜が水や酸素などの腐食の原因となる物質を透過し難いこと。
(2)塗膜を透過して浸入した水や酸素などの腐食の原因となる物質を、無害にする成分を塗膜中に含んでいること。
(3)塗膜のおかれる条件に耐える耐候性、耐水性、耐薬品性などを有すること。
(4)必要な美観を保つこと。
 これらのすべてが必要とされる機能を満たすためには、1回の塗装、あるいは同種塗料の塗り重ねで満足する結果が得られることもありますが、一般にはそれぞれに違った性能を持つ塗料を数種類塗り重ねることにより、塗装系全体で必要な性能を発揮させるようにしています。
 すなわち、防食用に使われる塗料には、通常鉄面に防食性能と付着性の優れた塗料を直接塗装し、上塗りには耐候性や、腐食性物質の侵入遮断機能が優れた塗料を塗装します。両者の間に中塗りを塗装して相互の付着を助け、全体としての塗膜物性の調和を保つようにする場合が多いです。このような塗料の組み合わせを塗装系と呼びます。
 下塗り・中塗り・上塗りは同一または近似の展色剤(ビヒクル)による塗料を一貫して使用する場合が多いですが、上塗りの要求性能や塗装工程の都合によって、異なる系統の塗料を使用することもあります。
 塗装の防食効果は下塗り塗料に依存するところが大きいので、従来鋼構造物の防錆防食塗装では、下塗りの防食塗料の研究に力がそそがれてきました。しかし近年は、塗装系全体としての防食効果の向上、金属溶射(メタリコン)、めっきなど他の防食法の併用も考慮されています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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現地塗装における一般的禁止事項



気象条件、塗装現地条件などで、次の項目に該当する場合、塗装を行わないようにしてください。

(1)気温が5℃以下のとき。また湿気が凝結しそうな露点との差が3℃以内であるようなとき。

気温が低くなると乾燥が極端に悪くなります。また塗料粘度が増し、作業性が悪くなるため、シンナーを多く添加するようになり、結果として塗膜の厚みが薄く、仕上がりにも悪影響を与えることにもなります。さらに低温時には一般に被塗物面に水分の残存があることが多いので、塗装に悪影響を及ぼすことになります。日の出2時間後から塗装をはじめ、日没2時間くらい前に作業を打ち切って、条件のよいうちに乾燥させることが望まれます。

(2)相対湿度85%以上のとき。

 被塗物面の水分の付着による塗膜の付着性の悪化を招き、ツヤびけやブラッシングなどの仕上がり不良の原因となりますので、十分注意してください。

(3)降雨または降雪のとき。あるいは塗装開始後、または塗装終了直後にそのおそれがある時。

 (屋内塗装で湿気が高くない場合は、この限りではありません)

(4)強風またはほこり、ゴミの多いとき。

 風の強いときは乾燥の早い塗料では作業性が悪くなります。また、砂塵、塩分などが塗装中または乾燥中に付着した場合などは塗膜の性能低下や仕上がり不良となります。

(5)炎天下などで鉄部等の温度が高いとき。

 特に塗装面に泡が生ずるおそれのある時には、塗装しないでください。

(6)モルタル、コンクリートなどが養生不足のとき。

 モルタル、コンクリートなどのセメント系素材は未乾燥状態ではアルカリ成分が多く、塗膜の付着性や仕上がりに悪影響を与え、また塗装直後はうまく仕上がっていても、後日白化がみられることもあります。
 一般に養生放置は3週間以上行って、表面がpH10.0以下になるようにしてから塗装してください。

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塗料の一般的取り扱い注意事項



  1. 塗料は化学製品ですので、指定された以外に異種、異名の塗料との混合は絶対しないでください。
  2. 塗料の攪拌と混合
    塗料は使用する前に十分撹拌して均一な状態にしてください。特にエマルションペイント、さび止め塗料はは比重の関係で顔料が沈殿しやすい傾向にありますので、十分な攪拌を行ってください。
    多液性塗料の場合は、硬化剤の混合比に十分注意し、所定の割合で混合して均一な状態になるように十分撹拌してください。
  3. 希釈率、塗り重ね乾燥時間、可使時間などは所定の数値を厳守してください。
  4. 開缶は原則として使用する直前に行い、開缶したものはその日のうちに使用するのが望ましいです。
    多液性塗料は可使時間に十分ご注意ください。
  5. さげ缶に小分けする場合は十分に攪拌した均一なものを小分けし、使用するさげ缶は塗料別に清浄なものを使用してください。
  6. 塗装及び塗料の混合や攪拌、小分けは換気のよい場所で行い、必要な場合は機械による強制換気を行ってください。
    また、これらの作業周辺は火気厳禁であることに特に注意してください。
  7. 塗料容器及び使用中の塗料の入っている容器には、常にフタをするよう心掛けてください。
  8. 塗料、シンナーの保管は承認を受けた危険物倉庫に貯蔵・管理することが必要です。

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