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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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素地調整(surface preperation)




 素地調整は、対象物表面の有害物を除去し、また表面に適当な粗さを与えるために、物理又は化学的処理をすることです。また、ケレン、下地処理、下地ごしらえ、前処理などと言われることもあります。
 物理的処理方法には、ブラスト処理、手工具仕上げ、動力工具仕上げ、火炎処理などがあります。
 ブラスト処理処理は、一般に大面積の施工に適し、湿式と乾式があり、ほとんどは乾式が採用されています。湿式は粉塵防止が優先する特殊ケースに採用されます。また、研削材を打ち付ける方法には、ラインのブラストによく用いられる遠心力による方法(遠心式ブラスト)と、現地やブラストブースで良く用いられる圧縮空気による方法(エアーブラスト)があります。
 なお、使用する研削材によりショットブラスト、グリットブラストなどと呼ぶこともあります。
 手工具仕上げ(ハンドツールクリーニング)は、手軽な方法であり現地の施工にはよいのですが素地調整程度が低級の場合にしか採用できません。用いられる工具は、ワイヤーブラシ、サンドペーパー、スクレーパー、ハンマーなどになります。
 動力工具仕上げ(パワーツールクリーニング)は、手工具仕上げの次に手軽な方法であり現地の施工にはよいのですが塗装システムの素地グレードが低級の場合にしか採用できません。用いられる工具は、エアーや電気を動力としたディスクサンダー、ワイヤホイール、チューブクリーナー、チッピングハンマーなどになります。
 火炎処理は、あまり用いられませんが有機質の汚れ除去に適します。
 化学的処理方法は、工場におけるラインでの処理に主に用いられ、塩酸5~15%、硫酸5~15%、リン酸10~20%などのピックリングになります。リン酸塩処理やクロメート処理も素地調整の範疇に入れることがあります。
 また、油分、グリース、ダスト、土、塩分の付着除去には、溶剤、アルカリ、スチームによる方法があります。

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静電塗装(electrostatic coating, electrostatic spraying)




 被塗物(正電荷)と塗料噴霧装置(負電荷)の間に静電界を形成し、塗料粒子を負に帯電させて噴霧すると静電引力により被塗面に吸着されます。これによって塗料のロスが減少し、塗着効率が向上します。
 静電霧化方式と機械霧化方式に2大別されます。前者は遠心力によって塗料を薄層に広げ、これに電荷を与えて静電的な力によって微粒化するものです。塗装粒子は100%帯電していますので、塗着効率は非常に高いですが、被塗物の形状によっては、凸部、突出部などに集中的に塗着して膜厚にむらを生じ、補正塗装が必要となる欠点があります。後者はこれを静電界の中に送って帯電させる方法です。前者よりも塗着効率は低いですが、塗りむらが少なく、補正塗装が少ない利点があります。
 手持ち式静電塗装器は作業者が手に持って使用するもので、印加電圧を低くし、安全対策が施されています。静電効果を下げて塗着効率はやや低くなりますが、機械霧化と人手による作業によって塗りむらを減じ、補正塗装を少なくする効果があるので、最近利用が増加しています。

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塗料、塗装の無公害化について



無公害化への考え方

 最近塗料及び塗装に関する公害問題として、大気汚染、水質汚濁、臭気、廃棄物等が大きく取り上げられています。
 特に有機溶剤による環境汚染は欧米において大きな問題となり米国・ドイツ・イギリスでは厳しい法規制が打ち出されています。我が国においても大阪府等の地方自治体において規制の強化を考えています。
 またこのたび悪臭防止法が改正され、トルエン、キシレンを含めて10種の物質が追加された厳しい内容になっています。
 このような環境規制に対し。環境保全に役立つ無公害塗料または低公害塗料および塗装システムの開発が、今後の塗料メーカーの使命となっていくことでしょう。

無公害形塗料について

(1)非光学性塗料

 現在話題となっている光化学スモッグの発生要因の一つである芳香族系の炭化水素を使用しない塗料の総称であります。
 例えば、現在多方面に使用されている焼付塗料の代表メラミン―アルキド系の塗料は塗料中及び希釈シンナーにキシロール、トルオール等を含んでいますが、これらの溶剤をルール66等に規定されていない非光化学反応性のPoor Solvent に置換した溶液形の塗料や非水エマルション形塗料、非水ディスパーション形塗料と呼ばれるPoor Solvent を用いた分散型塗料がこれにあたります。

(2)高不揮発分形塗料(HNV形塗料、ハイソリッド形塗料)

 従来の一般塗料より溶剤成分を少なくし、しかも樹脂やその他の構成成分に研究を加えて、従来塗料と変わらない作業性を有するようにしたものです。
 塗膜乾燥時に排出する溶剤量を相当少なく出来るという利点と、圧膜塗装が可能になる利点があります。

(3)無溶剤形塗料(Non Solvent)

 従来一般の塗料は樹脂、顔料、溶剤を主成分として形成されています。特に最近の化学の発達により合成樹脂化が進むにつれ、光化学活性溶剤である芳香族(例えばキシロール、トルオール等)を主に使用してきましたが、塗装の合理化(ハイビルド化)及び公害対策として溶剤を使用しないで低粘度100%不揮発分樹脂を使用した塗料をいいます。
 代表的な塗料としては無溶剤形エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、UV塗料などがあります。

(4)粉体塗料

 広い意味では無溶剤塗料であり、高分子樹脂と顔料などを混合熱練合し冷却の後粉状にした塗料で、もちろん溶剤分を全く含有していません。
 我が国でも1968年より粉体塗装が実用化段階に入り、従来の塗料形態と異なる画期的な塗料の変換とも考えられています。
 この塗料のもつ多くの利点は、1)現今の厳しい公害問題に対処するための解決手段、2)労働力不足、3)製品品質レベルアップ、に大きく貢献する塗料です。
 現在塗装法としては静電塗装を使用し、我が国ではエポキシ系、熱硬化形ポリエステル系、熱硬化形ポリエステルエポキシ系、熱硬化形アクリル系などが市販されています。

(5)水系塗料

 水系塗料には下記のような種類があります。

①エマルション系

 水に樹脂、顔料を分散させたタイプ(例えばビニール系エマルション塗料、アクリル系エマルション塗料)で溶剤を含まないので、建築用として現場塗装に適しています。

②水溶性形

 完全に水に溶解する(例えば、水溶性アルキド樹脂塗料、水溶性エポキシ樹脂塗料)で電着塗料として使用されています。

③水分散形

 コロイダルディスパーションともいわれ、その特長はエマルションと水溶性の中間程度で、性能的にバランスが取れているため、自動車用の上塗(メタリックベース)塗料に一部使用されています。

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