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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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被塗装物に起因する欠陥とその防止方法




 被塗装物の素材の不良によって起きる欠陥は、吸収性の大きな材質、水分の含有、付着物の汚れなどが原因となって塗膜に欠陥を生じます。
 一例を挙げると、モルタル、ブラスター面などが乾燥不十分のうちに塗装すると、アルカリを含んだ水分のために、ふくれ、はがれ、退色などの塗膜を劣化させる原因となります。防止対策としては素材を十分に乾燥させ、モルタル水分計、pHメーターなどを用いて水分、アルカリ度を測定し、含水率6%以下、pH9以下で塗装可能時期を判断します。また、鉄面、亜鉛めっき面などの表面処理が不十分であると付着不良となり、はく離、はじきなどの原因となります。防止方法としては、化学処理による素地調整を完全に行うことが必要になります。

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水性塗料(water-based paint)




 水で希釈できる塗料をいい、水系塗料ともいいます。樹脂組成には水溶性のものを用いた水溶性塗料、エマルションペイントなどがあります。塗膜を形成した後には水に不溶となります。多くの場合、グリコール系の水溶性有機溶剤を含んでいるもののVOC削減には大きな効果が期待できます。
 水は有機溶剤と比べ、揮発速度が遅く表面張力が高いという性質を持ちます。そのため、①溶剤型塗料と比べ乾燥が遅くシンナー組成を変更して乾燥性・作業性を調整することができない、②被塗物が濡れていたり湿度が高い場合には、だれ、ずれ落ち、白化等の不具合が生じ易い。特に高湿度となると全く乾燥しなくなる場合がある。③表面張力が高いため、発泡や素地の状態に敏感ではじきを生じやすい、④開放した状態で置いておくと皮を張ったり、被塗物温度が著しく高いときは刷毛を引っ張り塗装作業が困難になる、などという点に注意が必要になります。
 このような特徴を持つため、防錆分野での水性塗料は塗装前加熱などの条件が設定できる工場でのライン塗装が主でしたが、最近では屋外での塗装作業性も考慮した2液形の水性重防食塗料システムも上市されてきています。

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シリコーン樹脂塗料(silicone resin paint)




 シリコーン樹脂塗料は、シロキサン結合(Si-O-Si)からなる主鎖のSiにメチル基(-CH3)やフェニル基(-C6H5)などの基が側鎖として結合した構造を持ったシリコーン樹脂の塗料です。
 炭素(C)原子の共有結合半径が0.077nmに対して、シリコン(Si)は0.117nmで大きく、またシリコン(Si)原子の電気陰性度が炭素原子の2.5、酸素(O)原子の3.5に比べて1.8と小さく、正電荷を帯びやすいという特徴があります。これらのことにより、シリコーンは炭素系のエーテルと以下の点で性質を異にしています。
 ・Si-O-Si結合は柔軟性、反発弾性に富んでいる。
 ・Si-O結合がC-C結合やC-O結合に比べて高い結合エネルギーを有している。このため、耐熱性、
  耐酸化性に優れている。
 ・Si-O-Si結合はしなやかな結合で、比較的大きな振幅で熱振動を行うので分子運動範囲が大きく
  なり、隣の分子をあまり寄せ付けない。その結果としてシリコーンの分子間引力は小さくなり、
  表面張力が他の液体と比べて特異的に小さい。
 これらのシリコーンの特性をうまく利用した塗料として、耐熱塗料及び高耐候性塗料があります。ここでは耐候性塗料について記述します。
 1)シリコーン変性アルキド樹脂塗料
  一般にはアルコキシシリル基あるいはシラノール基をもつシリコーン中間体と水酸基を有する
 アルキド樹脂の縮合反応により合成された樹脂を用いた塗料になります。
  この塗料は、1液の酸化重合反応型であり、塗膜は平滑で光沢が非常に高く、耐候性は長油及び
 中油アルキド樹脂塗料に比べて良好です。
  主な用途としては、屋外タンク、橋梁などの重防食塗料に用いられていましたが、次第に需要
 は減りつつあります。
 2)シリコーン変性アクリル樹脂塗料
  一般にはアルコキシシリル基あるいはシラノール基を持つシリコーン中間体と水酸基を有する
 アクリル樹脂の縮合反応により合成された樹脂を用いた塗料です。
  この塗料は、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする2液の常温硬化型であり、硬化反応性に
 優れ、均一な架橋塗膜が得られますので、建築外装用の高耐候性塗料として用いられ、フッ素樹脂
 塗料にせまる耐候性を有します。
 3)アルコキシシリル基を有するアクリル樹脂塗料
  一般的には側鎖にアルコキシシリル基を有するアクリル共重合体の樹脂を用いた塗料です。
  この塗料は、アルコキシシリル基が触媒の存在下、空気中の水分で加水分解してシラノール基
 を生成し、さらにシラノール基同士あるいはシラノール基とアルコキシシリルとの縮合反応により
 シロキサン結合を形成して三次元架橋し、塗膜を形成します。この反応で生成するシロキサン結合
 は結合エネルギーが大きく安定であるので、この塗膜は耐候性及び耐酸性に優れています。

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