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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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酸洗いの比較~リン酸系酸洗剤の紹介



《塩酸、硫酸などの強酸による酸洗い》

 スケール、赤さびなどを簡単に除去するには、この方法がよく行われています。通常10%程度の酸で行いますが、スケールの生成条件によって組成、厚さが異なり、酸洗いの難しさも同じではありませんが、スケールの種類をよく把握し、酸洗いすることが肝要です。酸洗いには腐食性の強い酸を使用するため、よく製品の表面を荒くすることがあり、その後の処理に支障が出てはいけません。酸洗浴には酸食抑制剤を添加することが常識となっておりますが、浸漬時間が長ければやはり腐食され、表面状態が変化しますから、温度、時間、濃度を適切に管理することが必要です。
 塩酸は酸化物を溶解する能力が大きく、硫酸は水素ガスによる機械的作用が大きいので、鋳造、鍛造、熱間圧延などでついた強固な酸化皮膜の除去には硫酸による方がよく、黄さび、赤さびなどは塩酸で速やかに溶解して除去するほうが望ましいです。しかし、酸洗い後の水洗が不十分で、そのまま放置し塗装した場合、塗膜の下において腐食が進行し、金属を”食い尽くす”ことから、必ず推薦によって除いておかなければなりません。また、酸洗い後に酸が残っているままリン酸塩処理を行った場合、皮膜が付きにくくなり、著しくさびやすくなってしまいます。

《鉄鋼表面の洗浄・清浄化とさび》

 通常鉄鋼がさびる原因としては水、水に溶けている電解質および酸素が必要になります。この三つの要素のうち一つ欠けるとさびは生じません。したがって、完全に清浄化された鉄鋼はさびません。さらにすべての塩や酸素を追い出した水に鉄鋼を浸漬しても全くさびないか、またさびても極めて徐々にさびます。しかし鉄鋼面を完全に清浄化するということは事実上不可能であり、現場に置かれている鉄鋼は必ず汚染されていますので、最終的にはさびは発生してしまいます。現場の作業場に置かれた鉄鋼にはグリースや油といった目に見える汚れのほかに、目に見えない汚れ、すなわち運搬中素手で触れて手の油を付けてしまったり、あるいは海辺だと素手で触れてなくても塩類が付着し、たとえ痕跡程度であっても、それが湿気を含んだ空気にさらされると塩水は水の蒸気圧を下げ、その結果水が鉄板に凝結して電解質溶液の薄膜ができてしまいます。このようになると、鉄板面上の陽極店では鉄イオンとなって溶け、陰極店に水酸化物イオンが蓄積してアルカリ性を呈し、鉄の腐食が始まってしまいます。したがって、金属面の清浄化とは、単に目に見える汚染以外にも口に見えない汚染をも取らなければなりません。
 洗浄は表面に存在するこのような物質を除去し、その代わりに無害であるものに置き換えます。すなわち、何もかもすっかりと洗浄することはできません。例えば何かの溶液で表面に付着しているものを完全に洗浄したとしても、その洗浄液の痕跡が必ず残ってしまうことになります。多少の痕跡が残っても何ら害にならないものはごくまれなのであります。

《リン酸系酸洗剤による酸洗い》

 そのごくまれな成分の一つがリン酸になります。すなわちリン酸で酸洗した場合、その残渣が若干量残り、大気や湿気にさらされたとしても、リン酸は完全に鉄表面と反応してリン酸第二鉄
となり、これは水に対して不溶性の物質ですので、前述した弊害はありません。ところが、塩酸や硫酸を使用して酸洗した場合、残留した酸成分はさらに鉄面と反応して、硫酸の場合硫酸第一鉄を作りますが、これは水に対して可溶性で、水と酸素の反応でその後水酸化鉄(さび)となってしまいます。一方、硫酸根や塩化物が残留し、この上に水分が凝結するとこれらの塩は水分中に溶け、電解質溶液となりますので、さびが発生します。塩酸や硫酸で洗浄した鋼板は容易にさびるとよくいわれるのはこういった理由によるものであります。
 しかし、硫酸根や塩化物ははリン酸で置換し、除去できることから、硫酸や塩酸で洗った後でも必ずリン酸で洗い落とせば表面に残る酸成分の大部分はリン酸となり、リン酸第二鉄まで反応し、これは水に不溶性のため、電解質溶液を作らずさびにくくなります。これがリン酸による酸洗の最大のメリットになります。ただし、塩酸や硫酸で酸洗いした後、リン酸で酸洗いしても、製品の形状によっては、特に合わせ目などの隙間に入った酸成分は置換しにくく、後にさびの原因となってしまいます。こういった理由から、米軍規格でも組み立て後の塩酸や硫酸での酸新井は禁じられており、リン酸を用いて洗浄するように規定されています。
 リン酸はミルスケールや、著しい赤さびは落としにくいのですが、軽度のさびや汚れは簡単に除去することができます。しかも、塗料に有害な破壊性を持つアルカリ脱脂後の残留したアルカリ成分や、塩酸や硫酸で酸洗いしたした後に残留した塩化物や硫酸根、その他水に溶解した陰イオンをことごとく除去し、さらには石けんのようなものすら破壊することができます。そして、鉄鋼面と自ら反応して、水に不要な密着性のあるリン酸鉄の皮膜を形成しますので、さびの防止に対して非常に効果的であると同時に、塗装のよい下地となります。実際のところでは、現場における作業、例えば、自動車部品や冷蔵庫などの洗浄に際しては必ずといってもいいほど若干の油が付着しているものですから、その油膜に対して浸透して表面を溶解しながら、さびを落とし、同時に油を乳化分散させつつ湿潤する、リン酸洗浄剤が必要となってくるのです。
 ここで、リン酸系酸洗剤の特徴を4つまとめておきます。
 〈ⅰ〉鉄鋼表面の汚れやさびを素地の荒れを最小限にとどめ、速やかに除去することが
   できる。
 〈ⅱ〉アルカリ脱脂剤には及びませんが、かなりの脱脂力がある。
 〈ⅲ〉抑制作用があり、鉄鋼表面の消耗および水素発生も少ない。
 〈ⅳ〉薄いリン酸鉄皮膜を形成して、塗装下地として良好である。
 リン酸系酸洗剤には、除錆を主目的としたものと、脱脂に重点を置いたものがあります。そして使用方法も、浸漬使用用、またはハケ塗り用、およびスプレー用に分けて、製品の形状や材質、汚染の程度または使用目的によって使い分けられます。特にひどいミルスケールや赤さびのある時はあらかじめサンドペーパーやワイヤーブラシなどである程度落としてから処理を行い、また油の付着程度の甚だしい場合は、予備洗浄を行ってから処理を行ったほうが能率的で仕上がり面もきれいになります。
 リン酸系の酸洗剤による浸漬洗浄で最も最も問題になるのは、加工液中に鉄分が蓄積し、酸洗時間が長くなり、また白い粉が付着して仕上がり面が汚くなってしまうことです。イオン交換樹脂を使用して鉄イオンを除去する方法もありますが、コストが跳ね上がってしまいますので、この状態になりましたら、老化した加工液を廃棄し、新たに建浴するのが一番の対策です。処理後はきれいな水で水洗しなくてはなりません。時折、俗にいうワイプ・オフ・タイプと呼ばれる洗浄剤で処理し、水洗せずに単にウエス拭きだけですぐに塗装している例がありますが、未反応のリン酸は吸湿性であり、界面活性剤の残留は水分を浸透させ、塗膜のはく離やさびの発生の原因となりますので、十分な水洗は必ずと言っていいほど必要になります。水洗後は可能な限り速やかに乾燥します。乾燥を早める目的で最終水洗は湯洗にし、またこれに0.3%ほどのクロム酸を溶かし洗浄することで、さび止めに効果が出ます。
 したがって、下記の工程にすれば理想的です。
 ①脱脂:油の付着の程度が著しい場合、アルカリ脱脂を採用。
 ②水洗:(溶剤脱脂の場合は不要)
 ③酸洗:リン酸系酸洗剤による
 ④水洗
 ⑤湯洗:クロム酸洗浄
 ⑥乾燥:ウエス拭き、エアブロー、赤外線などによる強制乾燥
 乾燥後は直ちに塗装するか、防錆油などを塗布して腐食要因物から保護しなくてはなりません。自動車、電気器具あるいは砲弾などの洗浄に実績のある洗浄方法です。

《リン酸系酸洗剤のご紹介》

●超強力錆び落とし さび取り剤 コーテック VpCI-426


 ・防錆剤のトップメーカー CORTEC/コーテック社製の水性強力錆落とし剤
  つけおきタイプ スプレーガン付き(500cc)
 ・用途:ステンレス・アルミ、 鉄 及び 非鉄金属表面のサビ落とし、スケール除去
 ・使用方法:原液または水希釈液を、錆びた部分につけおきもしくはスプレー。5~10分後に
  布でふきあげ。
 ・使用例:車やバイクのガソリンタンク・自転車・ステンレスキッチン・シンク・シャワー
  パイプ・金属機器各種錆び落とし。
 ・特徴:錆と科学的に反応し、サビ・スケールを除去します。リン酸系で速効性があります。
  ホームセンターでは手に入らない業務用プロ用製品です。


●ラスキル240



 ・鉄製品についた頑固な錆でも簡単に落とすことができるラスキル240。
 ・1kgの使いやすい量、また原液で使用できるタイプの販売とさせていただきます。
 ・ラスキル240は原液をそのまま使用してください。 サビがひどく、早く落としたい場合は、
  ブラシや布などでこすって、拭き取ってください。 最後に水洗い、または水ぶきをして、
  サビ取り剤を洗い流してください。
 ・部品・ネジの錆落し、工具や刃物の錆落し、鉄パイプの錆落し、バイクの燃料タンクの
  錆落し、レストア車の錆落し等、鉄製品の錆落しに使えます。

●鈴木油脂 浸漬用錆取り剤 液体サビ落とし4L S-012



 ・浸け置きをするサビ取り剤です。
 ・錆の程度により漬け置き時間及び濃度を調整し、漬け置きをします。
  サビとり後は水洗いをし、防錆浸透剤を使用すると再発防止に効果的です。
 ・使用方法:原液から100倍希釈まで有効。
       ひどい錆・・・原液を使用するか、希釈液を使用し浸漬し時間を長くします。
       かるい錆・・・錆の程度に応じて100倍まで希釈して使用します。
       原液を使用すると短時間で錆が落ちます。
       いずれの場合も使用後は、水できれいに洗い流します。
 ・成分:リン酸・非イオン系界面活性剤・グリコール系溶剤・精製水外観無色透明液体
 ・仕様:燃焼性なし / 揮発性低い / 密度(20℃)1.05 / pH(20℃)1.5 / 引火点なし / 発火点なし
  使用場所例 機械工場・金属加工等でご使用できます。

●AZ(エーゼット) サビアウト


 ・サビと化学的に反応し、金属を傷めず除錆します。金属表面を腐食しないので、小さな
  部品にも使用可能です。
 ・金属表面に油がついていても、サビ取り効果は変わりません。サビが取れたら、水洗いの
  あと、すぐに塗装ができます。
 ・直接塗布したり、水で5から6倍に薄めてお使いいただけます。

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常乾水性アルキド樹脂塗料




 常乾アルキド樹脂塗料は汎用塗料として多く使用されている塗料です。原料面での経済性あるいはリサイクル原料の使用も考えると、今後とも重要な塗料であり、欧米では硬化メカニズムあるいは水性化する方法、さらには利用のための基礎研究など広範囲の研究活動が活発な状況です。
 エマルションを安定化するためには、微細に分散する必要があることはよく知られているところですが、それ以外に水中で劣化しないドライヤーの開発とドライヤーの非鉛化という二つの問題があります。最近多くの基礎的な研究結果が発表され、その作用機構が徐々に明らかになりつつあります。
 アルキド樹脂の酸化重合による乾燥は、硬化時間の長いことが一つの欠点といわれていますが、水性化した場合はその時間はさらに約1.5倍になるといわれています。この原因は、水の酸素溶解量が少ないことと、水中では励起状態が長く続かないこと、ドライヤーが水と反応して劣化しやすいことが原因といわれています。
 水性塗料におけるドライヤーの存在場所とpHの関係は高pHで樹脂に配位しています。pHと効果速度の関係を見ると、pHの高い場合に早く硬化しています。効果速度の継時劣化は、それほど大きな変化ではありませんが、顔料を入れると著しく加速されます。この劣化の原因は樹脂の加水分解もありますが、コバルト金属が顔料表面に化学吸着し、その触媒作用により水酸化コバルトとなって沈殿するのが主たる原因と考えられます。この防止のためには以前はドライヤとコンプレックスをつくって安定化する1,10’-フェナントロリンを添加していました。着色することから、最近では2,2’-ビピリジルの添加が奨励されています。
 二次ドライヤーの鉛の代わりになる金属の探索は非常に広範囲に行われ、様々な試作配合が示されています。レアー金属にも効果が認められていますが、最終的には経済性からカルシウムやジルコニウムが選ばれるものと思われます。しかし、鉛の場合には多くの樹脂に共通した配合が見いだされるのに対して、鉛以外の金属を二次ドライヤーにした場合には共通の最適配合量は見いだせず、樹脂ごとに逐一設定する必要があります。

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塗装工程にかかわる環境対策




 塗装工程ではオーバースプレーなどにより出る廃塗料からの溶剤回収は古くから行われており、欧米の雑誌には経済性の試算などの報告があります。樹脂及び顔料の再利用は、技術的な困難さから研究は遅れていますが、チタン白を2ホウ化チタンに変えて取り出す基礎研究の報告があります。
 廃塗料が出ないことが理想的であり、塗着効率の高い粉体塗料・電着塗料の需要が増加していることは周知のとおりです。スプレー塗装においても塗装効率の高い近距離塗装・低圧スプレー塗装、水性塗料用ベル型塗装などが研究されています。また、色換えにともなう無駄の少ない塗装機も開発されています。さらに、水性スプレー塗装において、オーバースプレーした塗料を回収再使用する方法が各種開発されています。
 これら塗着効率の高い塗装設備は一般に高価であり、そのことがこれら技術の普及を遅らせている一因になっている場合が多く、その改善も必要な技術であります。電着塗装は多くの水洗工程を必要としています。その水洗部分の多くを省略して工程を大幅に簡素化する研究がなされています。水洗を省略することで予想される主な欠陥は溜まり部の仕上がり不良です。現行の塗料では塗材に傾きを与え、落ちやすくする必要がありますが、塗料の改善による解決の道も探索されています。

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