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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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熱可塑性粉体塗料②



(3)ポリエチレン粉体塗料
 熱可塑性粉体塗料としては価格が安いこともあり、最も多用されているものになります。主基材はポリエチレンで、重合法による高密度、中密度、低密度ポリエチレンの3種とエチレン酢酸ビニルコポリマーとがありますが、塗装作業性、塗膜の安定性などの点から主として低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル子コポリマーが用いられます。低密度ポリエチレンは引張強度や硬度は小さいですが、伸び率が高く、熱安定性にも優れています。ポリマーの分子量は、尺度としてメルトインデックス値(溶解指数)が用いられますが、粉体用としては、10~50g/10minのメルトインデックス値のものが用いられます。塗料製造法は化学的粉砕法と機械的粉砕法が取られており、化学的粉砕法はポリエチレンペレットをトリクロールエタンに加熱溶解し、これを撹拌しながら冷却沈殿または水などを加えて沈殿させるかして粉末ポリエチレンを作る方法で、機械的粉砕法は常温で粉砕するものと、ドライアイスなど冷媒を使用して冷凍粉砕する方法とあります。前者は粒子の形が球状に近く、かさ密度も大きくフローもよいです。
 ポリエチレン粉体は、溶融温度と分解温度との差が比較的大きいために加工しやすく、流動浸漬法、溶射法が広く使われ、塗膜性能もポリエチレンの化学的安定性から耐薬品性や耐水性に優れて、電気絶縁性もよいです。しかし紫外線によって酸化が促進されるため、屋外耐候性にはやや問題があります。したがって、紫外線吸収剤を併用することによって改善する試みがなされています。用途としては電気機器部品、線材製品の被覆に用いられているほか、化学工業用装置の部品や鋼管にも用いられています。
 バイエル社(ドイツ)では、エチレン酢酸ビニルをけん化したコポリマーを基材とした粉体塗料(EVA粉体)が開発されています。この塗料はポリエチレン粉体の欠点とされた耐候性や付着性などの性能面の問題点が解決され、さらに耐食性、耐大気汚染性にも優れた性能を持っています。したがって用途も拡大され化学プラント、街路燈、標識などに使用され塗装法も溶射法、流動浸漬法などが適用されています。

(4)ポリアミド粉体塗料
 粉体塗料用として使用されているポリアミドは、一般に炭素鎖の長いナイロン11あるいはナイロン12になります。
 ナイロン11の塗膜の物性は柔軟で、摩擦係数が低く、摩擦によるロスが極めて少ないです。また耐溶剤性、耐薬品性、電気的性質にも優れ、耐熱性についても、100℃で長時間使用が可能です。ナイロン11粉体の塗装加工法は流動浸漬が主でありますが、静電粉体塗装も可能です。この場合、電荷は正負いずれも使用可能ですが、正の方が電荷は大きく、塗着効率もよく、焼き付け後の表面状態も良いです。塩化ビニル粉体塗料と同様、加熱溶融後、光沢仕上げする場合は水冷し、急冷すると過度の結晶化を防ぎ、光沢ある仕上げが得られます。艶消し仕上げする場合は空冷します。鋼板に対する溶融塗膜の付着力は良好ですが、やや経時劣化しやすい欠点があり、一般に専用プライマーを塗ることが望ましいです。用途は耐摩耗性に優れているためベアリング表面、スプリングに耐食性に適しているので家庭用洗濯機、食器洗機などの部品、バッテリーケース、また船舶用、自動車部品など各種方面に使用されつつあります。

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熱可塑性粉体塗料①



粉体塗料として最も古くから流動浸漬用として使われてきたものになります。樹脂としては塩化ビニル、ポリエチレン、ナイロンなど高分子量のものが用いられ、加熱によって溶融し、架橋反応することなく皮膜を形成します。したがって、焼付け反応時間の必要はなく、短時間の加熱で済みます。
 反面、高温が必要であり、金属面との付着性については、接着プライマーを必要とします。

(1)塩化ビニル樹脂粉体塗料
 ポリ塩化ビニル(PVC)を基材とし、これに顔料、安定剤、酸化防止剤、可塑剤などを配合して塗料化されたもので、その製造法としてはメルトミックス法とドライブレンド法があります。前者は材料を混合分散し、PVCを加えて混合し、押し出し機で混練した後、ペレットまたはフレーク状のものを作り、これを衝撃粉砕機で冷凍粉砕(-50℃)して分級します。後者は高速せん断ミキサーを用いて可塑剤、安定剤、顔料などを樹脂とともに加温しながら混合し、ドライアップした後冷却して分級します。基本組成としては塩化ビニル樹脂プラスチックと大差なく、塩化ビニル樹脂に添加される成分や、可塑剤の種類および量によって塗膜の性能を変えることができます。また、塩化ビニル樹脂の分子量は高いほど塗膜性能が向上しますが、溶融造皮膜からすれば低い方が望ましいです。一般の重合度700~900程度のものが用いられ、塗装法としては主として流動浸漬法が適用され、一部溶射、静電吹付け法でも使用されています。
 塗膜性能は耐候性、耐水性、耐湿性、耐薬品性などの耐久性に優れており、弾性に富み、耐衝撃性、耐摩耗性にも優れています。硬さも半硬質から硬質まで広い範囲の品質のものが得られます。欠点として溶融温度と分解温度の差が比較的小さいので焼付け温度管理を十分にする必要があり、焼付け時刺激臭が強いです。また金属には付着性が小さいことから、プライマーを必要とするなどの問題があります。用途としてはフェンス、ガードレール、ポールなどの耐候性を要求される商品や金網、金属棚、バルブ、エルボなどの小物部品の流動浸漬用に用いられています。

(2)ポリプロピレン粉体塗料
 ポリプロピレンは無極性で、結晶ポリマーであることから強じんさと耐薬品性、耐溶剤性があります。また比重が0.9と非常に小さいため、重量的に塗り坪が多いことが特長です。欠点としては不活性のため、金属にはほとんど接着しないのでプライマーを必要とすることです。
 塗装法は静電吹付け塗装、流動浸漬いずれも可能であり、加熱融合、急冷になり強じんな塗膜となります。ポリプロピレン粉体は結晶性のため、溶融状態からは冷却に入る場合、冷却速度が早ければ早いほど、表面欠陥は少なくなります。ポリプロピレン粉体塗料の用途は加工性、低比重の点からもコスト的に有利であり、重防食材料としてプラントや化学装置に適用されています。

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熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の比較



粉体塗料の種類には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を基材にしたものとに大別することができます。両者の特徴を比較したものを下の表に示します。


熱可塑性樹脂熱硬化性樹脂
分子量高分子量低分子量
微粒子微粒子化が困難微粒子化が可能
溶融温度高い低い
薄膜塗装困難50ミクロン前後の塗装が可能
塗膜性状柔軟性硬い
耐化学薬品性優れている良い
プライマーの必要性必要性あり必ずしも必要ではない
塗装法の適性流動浸漬法 溶射法静電吹付け法

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