粉体塗料として最も古くから流動浸漬用として使われてきたものになります。樹脂としては塩化ビニル、ポリエチレン、ナイロンなど高分子量のものが用いられ、加熱によって溶融し、架橋反応することなく皮膜を形成します。したがって、焼付け反応時間の必要はなく、短時間の加熱で済みます。
反面、高温が必要であり、金属面との付着性については、接着プライマーを必要とします。
(1)塩化ビニル樹脂粉体塗料
ポリ塩化ビニル(PVC)を基材とし、これに顔料、安定剤、酸化防止剤、可塑剤などを配合して塗料化されたもので、その製造法としてはメルトミックス法とドライブレンド法があります。前者は材料を混合分散し、PVCを加えて混合し、押し出し機で混練した後、ペレットまたはフレーク状のものを作り、これを衝撃粉砕機で冷凍粉砕(-50℃)して分級します。後者は高速せん断ミキサーを用いて可塑剤、安定剤、顔料などを樹脂とともに加温しながら混合し、ドライアップした後冷却して分級します。基本組成としては塩化ビニル樹脂プラスチックと大差なく、塩化ビニル樹脂に添加される成分や、可塑剤の種類および量によって塗膜の性能を変えることができます。また、塩化ビニル樹脂の分子量は高いほど塗膜性能が向上しますが、溶融造皮膜からすれば低い方が望ましいです。一般の重合度700~900程度のものが用いられ、塗装法としては主として流動浸漬法が適用され、一部溶射、静電吹付け法でも使用されています。
塗膜性能は耐候性、耐水性、耐湿性、耐薬品性などの耐久性に優れており、弾性に富み、耐衝撃性、耐摩耗性にも優れています。硬さも半硬質から硬質まで広い範囲の品質のものが得られます。欠点として溶融温度と分解温度の差が比較的小さいので焼付け温度管理を十分にする必要があり、焼付け時刺激臭が強いです。また金属には付着性が小さいことから、プライマーを必要とするなどの問題があります。用途としてはフェンス、ガードレール、ポールなどの耐候性を要求される商品や金網、金属棚、バルブ、エルボなどの小物部品の流動浸漬用に用いられています。
(2)ポリプロピレン粉体塗料
ポリプロピレンは無極性で、結晶ポリマーであることから強じんさと耐薬品性、耐溶剤性があります。また比重が0.9と非常に小さいため、重量的に塗り坪が多いことが特長です。欠点としては不活性のため、金属にはほとんど接着しないのでプライマーを必要とすることです。
塗装法は静電吹付け塗装、流動浸漬いずれも可能であり、加熱融合、急冷になり強じんな塗膜となります。ポリプロピレン粉体は結晶性のため、溶融状態からは冷却に入る場合、冷却速度が早ければ早いほど、表面欠陥は少なくなります。ポリプロピレン粉体塗料の用途は加工性、低比重の点からもコスト的に有利であり、重防食材料としてプラントや化学装置に適用されています。