NAD塗料の主要な用途は自動車のメタリックカラーの上塗り塗装用です。自動車の塗装仕上げはメタリックカラーとソリッドカラーとがありますが、メタリックカラーはソリッドカラーに比べて塗装上の問題が多く、メタル色のムラ、たれ、わきなどが発生し、2コート1ベーク方式では光沢不良など、クレームが多くなります。これに対し、NAD塗料は、その特性からメタリック塗料として最も塗装効果を発揮する塗料になります。すなわちNAD塗料は分散系であるため、溶剤離脱が早く、塗装時あるいは造膜時の特殊な流動特性のためと推察され、造膜時の膨潤した粒子が、加熱融合時に収縮するときに、アルミニウム粉の配列をよくし、流れを防止して、定着させるためといわれています。また、塗料的には、分散媒として脂肪族炭化水素系の低沸点溶剤が用いられますが、塗面が平滑になるために必要な粘度を保つため、必要最小限の高沸点溶剤が、膜融合剤として用いられます。膜融合剤として使用される極性用材としてはセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチセロソルブ、カービトールアセテートなどがあり、場合により、エチレングリコールなどの高沸点溶剤も用いられます。これらの溶解力の強い高沸点溶剤を併用すると、塗装時には溶解力の弱い低沸点の脂肪族炭化水素系溶剤が急速に大気中に離脱放散され、残留している溶解力の強い高沸点溶剤が作用して分散粒子をお互いに溶着して高粘度の状態になり、アルミニウム粒子の対流を防止するため良好なメタリック仕上げになるとも考えられます。