NAD塗料は、造膜時ポリマー粒子の融合に熱の作用が必要とする性質から、熱硬化性アクリル樹脂塗料の範疇に入るもので、その特徴は熱硬化性アクリル樹脂塗料と比較して評価されます。しかし、塗膜形成助要素は有機溶剤で、塗膜形成主要素である樹脂は分散粒子として有機溶剤中に分散しているため、一般溶剤型塗料にない特徴を有しています。
(1)粒子ポリマーの性質が系全体の粘度にあまり寄与しないので、高分子量の粒子ポリマーを比較的少量の溶剤で塗装可能とする粘度とすることができます。したがって、樹脂の高分子量化による塗膜性能の向上と、高不揮発分化が可能です。
(2)塗料の粘度は高不揮発分にも拘わらず低粘度で、塗装時、溶剤が離脱しやすいため、塗着膜の粘度が容易に高くなることから、たれにくく、メタリック色の色ムラが少なく、ゴミの付着も少ないです。
(3)従来塗料の溶剤は、溶解力の関係から芳香族炭化水素系が主体でしたが、NAD塗料は、粒子ポリマーを溶かさないので、光化学不活性な脂肪族、脂環族炭化水素系溶剤を使用するため低公害塗料です。
(4)吹き付け塗装の際、塗料の霧化から塗着までの粘度上昇が大きいため、塗料ミストの跳ね返りが少なく塗着効率が良く、肉持ち、仕上がり外観も向上します。
NAD塗料は上記の特徴がある反面、下記に示す問題点もあります。
(1)顔料分散の場合、ロールミルや、サンドミルなどで練合すると分散粒子ポリマーが破壊されて、増粘し分散が困難になるため分散方式を検討しなくてはなりません。
(2)NAD塗料の造膜形成過程が一般溶剤型塗料と異なるため、付着性、耐酸性、鮮映性などの点で塗膜性能が劣る場合があります。