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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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リサイクルマテリアルを使用する塗料



私たちの社会が現在直面している最も深刻な問題はごみ問題です。今のところの専門家の認識では、この問題はもはや処理方法を考えるのでは解決できず、ごみを出さない方法を考えるべきであるとされています。エコマークの下段表示を見ても「リサイクル」となっているものが多いです。塗料に関するエコマーク商品類型はまだありませんが、今後現れるものと考えられます。
 現在までに取得されたエコマークにはPETボトルリサイクルが目立ちます。リサイクルPETボトルの塗料への適用としては、そのまま粉砕しフレークとしたものをサンドブラスト鋼板に溶融塗装して付着性を調べた例が報告されています。表に示すようにニューPETやPVCと比較してより強く、熱サイクル試験によっても劣化しないことが報告されています。日本においても粉体塗料への報告が報じられています。
 多方面に利用できるケミカルリサイクルについては、超臨界メタノールを利用した報告があります。



  表.サンドブラスト鋼板に塗装した塗膜の付着強さ  
  (10サンプルの平均値、カッコ内の値は標準偏差)
Steel
Pretreatment
CoatingsThickness(t)
(μm)
Adhesion
(kg/cm^2)
Sand blastedPET-R
PET-P
PVC
200<t<300169(21)
128(20)
 61(39)

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架橋方法の紹介



1.VPC(Vapor Permeation Curing)プロセスによる架橋

 液状ポリオールと液状イソシアネートの混合物を対象物に塗装した後、架橋触媒である第3級アミンの蒸気にさらすことにより架橋を促進する塗装方法になります。ポットライフの長い塗料を低温で速く硬化することができます。

2.浸透性架橋剤による塗膜の架橋

 この架橋方法はまったく新しい架橋方法になります。塗装工程ではカルボニル基を有する樹脂をバインダーとする塗料を様々な方法で塗装し、乾燥工程では次の浸漬工程に使用する架橋剤水溶液に溶解しない程度になるまで乾燥します。一般的には溶剤・水などの揮発分の大半を揮発した状態であり、電着・粉体塗装であれば融合した状態になります。この未硬化塗板を架橋剤溶液に浸漬します。架橋剤は塗膜に浸透して直ちに架橋し、初めの塗膜の形状を保ったまま架橋塗膜となります。架橋は表面から内部に進行するので、内部の非架橋部分を溶剤で取り除いた後の架橋膜の厚さを測定することで架橋剤の浸透状況がわかります。架橋剤水溶液から取り出した塗膜は水洗工程へと移行します。最後に乾燥工程で水切りをすれば直ちにハンドリング可能な完全硬化塗膜となっています。
 架橋剤にはジヒドラジド化合物を使用します。樹脂のカルボニル基とは脱水反応で架橋します。
 この塗装系が成立するための必要条件は次の三つになります。
 1)浸漬工程で未架橋塗膜が解けないこと。
 2)架橋剤が速やかに浸透できること。
 3)浸透した架橋剤は直ちにその場で架橋反応を完結し、未反応のまま塗膜内に残らないこと。
 最初の条件を満たすためには、塗膜を浸漬する液は水溶液である必要があります。第二の条件を満たすためには、塗膜を膨潤して架橋剤の浸透を容易にするような補助溶剤の添加が必要になります。同じ条件で種々の架橋剤を比較すると、最も分子量の小さなカルボヒドラジドの浸透速度が最も早く硬度も高くなります。しかし、その他低分子化合物の効果は分子量の順ではなく、樹脂との相溶性など他の要因も作用していると思われます。分子量の大きい樹脂では浸透性はなく表面硬化のみが認められます。三番目に、浸透した架橋剤の反応を速めるために、塗膜内部を酸性雰囲気にする必要があります。アニオン系の樹脂の場合は内部にカルボキシル基などが存在するので、浸漬に使用する架橋剤水溶液に特に三成分を加える必要はありませんが、カチオン系樹脂あるいは中性の樹脂を硬化する場合には架橋剤水溶液に酸成分を添加し、架橋剤とともに塗膜に浸透させる必要があります。アニオン系の場合にも、この酸の添加は硬化性をさらに速めるためにも有効です。
 架橋剤が塗膜内に過剰に浸透して未反応で残り、その量がコントロールできない状態になることを避けるために、架橋剤は塗膜に対して浸入と脱出を素早く繰り返し、反応したもののみが塗膜内に蓄積し、塗膜内の未反応架橋剤の量は極力少ない状態に常に保たれていることが望ましいです。そのために、架橋剤は親水性で樹脂との相溶性に欠ける必要があります。樹脂にヒドラジド基を導入し、ポリカルボニル化合物で架橋する逆の系では、架橋剤の浸透量をコントロールすることが困難になります。
 浸透速度とそれに伴う硬化塗膜の厚さは、1)樹脂組成、2)架橋剤の種類と組成、3)架橋剤水溶液中の塗膜を膨潤できる溶剤の量、4)浸漬温度の四つの因子によって決まります。実際の塗装においては、塗膜性能に関係しない3)と4)の二つの因子を変えることによって、浸漬時間と硬化膜厚の関係をコントロールします。一例として、40℃で6分の浸漬で20μmの厚さの塗膜が硬化できます。
 塗膜を膨潤している溶剤と水はそのまま塗板とともに持ち出されると考えられます。この量は最小にしてかつ浸透速度を速めるためには、架橋剤水溶液中の溶剤量を減らして塗膜の膨潤率を最小にし、浸漬温度を高め塗膜内での架橋剤の移動速度を最大にする必要があります。溶剤量を5%以下にし、60℃で浸漬した場合、膨潤率は15%程度になります。
 この方法で得られた塗膜の特徴は、表面は高度に架橋し素材面に近い部分はあまり架橋していません。そのため優れた付着性と高硬度を両立させることができます。また、この構造は表面での高いバリヤー性と優れた付着性を持つために防食性にも良い影響を与えます。
 この方法はいろいろな塗装方法と組み合わせることが可能です。カチオン電着・アニオン電着と組み合わせれば常乾電着が可能であり、プラスチック部品を組み込んだ最終製品で金属部分のみを塗装することもできます。また、オーバースプレーした塗料をリサイクルするタイプの水性スプレー塗装方法は常乾タイプの塗料には使えませんが、この方法で硬化すれば使用できます。

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新しいUV硬化塗料




 モノマー・開始剤の高価格・毒性、酸素による表面硬化阻害、高隠蔽塗料の内部硬化不足など多くの問題を抱えているにもかかわらず、今UV(紫外線)硬化塗料が脚光を浴びているのは、低温硬化・省エネルギー・速乾性・乾燥装置の小ささなど現代社内の要請に合致しているためであります。この特徴を生かしながら毒性と危険性を和らげようとする水性UV硬化塗料、無溶剤・廃塗料なしの粉体塗料の特徴とUV塗料の特性をともに生かすためのUV硬化粉体塗料などが検討されています。
 水性UV硬化塗料は木材用を主として使用されています。アクリル基を持ったエポキシ・ウレタン・ポリエステルなどのオリゴマー樹脂を界面活性剤で分散して使用します。親水基を導入し自己乳化するという報告もあります。普通のUV硬化塗料と比較して、放出物が少ない、多様な素材によく付着する、つや消し塗装がより簡単である、より分子量の高いポリマーの使用も可能であり高硬度・高物性にできるなどの特徴があり、また水の酸素溶存量が少ないために水の蒸気層がバリヤーとなって硬化速度が速いとの実験結果も示されています。一方、浸透性のない素材に塗った場合や厚塗りの場合には水の揮発にエネルギーと時間がかかるともいわれています。
 UV硬化粉体塗料による塗装は電気部品を中心に広がりつつあります。オランダDSM社の樹脂は、マレイン酸またはフマル酸を組み込んだ不飽和ポリエステル樹脂とビニルエーテルの不飽和基を持つウレタン樹脂との混合物であります。マレイン酸基またはフマル酸基とビニルエーテル基は1対1のドナーアクセプター錯体を作りラジカルによってすみやかに重合します。この重合は酸素の阻害作用をあまり受けません。
 塗装は、被塗物上の粉体塗料はまずIR(赤外線)によって加熱して融合し、次にUV照射によって架橋硬化します。通常のUV硬化塗料と比較して有機化合物の揮発物はなく毒性は極めて低く、塗料のリサイクルも可能であり、基本的に廃棄物は出ません。また、熱硬化タイプのものと比較すると、硬化温度は低く加熱時間は短くなります。加熱はIRにより表面から短時間で熱せられるので被塗物の温度はさらに低くなります。加熱による粒子の溶融と架橋硬化は別に行われるので、低温にもかかわらず粒子の融合は進み滑らかな塗面となります。UV硬化塗料で問題となる耐候性及び顔料を加えた系での硬化性に関するデータも報告されています。
 アモルファスのプレポリマーと結晶性のモノマーを組み合わせた低温硬化型のUV硬化粉体塗料についても報告されています。100から120℃で熱溶解した後UV照射して硬化します。この場合にも溶融と硬化のプロセスが単純化された結果、酸素による禁止効果が弱まりプロセスを正確にコントロールできるようになります。

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