モノマー・開始剤の高価格・毒性、酸素による表面硬化阻害、高隠蔽塗料の内部硬化不足など多くの問題を抱えているにもかかわらず、今UV(紫外線)硬化塗料が脚光を浴びているのは、低温硬化・省エネルギー・速乾性・乾燥装置の小ささなど現代社内の要請に合致しているためであります。この特徴を生かしながら毒性と危険性を和らげようとする水性UV硬化塗料、無溶剤・廃塗料なしの粉体塗料の特徴とUV塗料の特性をともに生かすためのUV硬化粉体塗料などが検討されています。
水性UV硬化塗料は木材用を主として使用されています。アクリル基を持ったエポキシ・ウレタン・ポリエステルなどのオリゴマー樹脂を界面活性剤で分散して使用します。親水基を導入し自己乳化するという報告もあります。普通のUV硬化塗料と比較して、放出物が少ない、多様な素材によく付着する、つや消し塗装がより簡単である、より分子量の高いポリマーの使用も可能であり高硬度・高物性にできるなどの特徴があり、また水の酸素溶存量が少ないために水の蒸気層がバリヤーとなって硬化速度が速いとの実験結果も示されています。一方、浸透性のない素材に塗った場合や厚塗りの場合には水の揮発にエネルギーと時間がかかるともいわれています。
UV硬化粉体塗料による塗装は電気部品を中心に広がりつつあります。オランダDSM社の樹脂は、マレイン酸またはフマル酸を組み込んだ不飽和ポリエステル樹脂とビニルエーテルの不飽和基を持つウレタン樹脂との混合物であります。マレイン酸基またはフマル酸基とビニルエーテル基は1対1のドナーアクセプター錯体を作りラジカルによってすみやかに重合します。この重合は酸素の阻害作用をあまり受けません。
塗装は、被塗物上の粉体塗料はまずIR(赤外線)によって加熱して融合し、次にUV照射によって架橋硬化します。通常のUV硬化塗料と比較して有機化合物の揮発物はなく毒性は極めて低く、塗料のリサイクルも可能であり、基本的に廃棄物は出ません。また、熱硬化タイプのものと比較すると、硬化温度は低く加熱時間は短くなります。加熱はIRにより表面から短時間で熱せられるので被塗物の温度はさらに低くなります。加熱による粒子の溶融と架橋硬化は別に行われるので、低温にもかかわらず粒子の融合は進み滑らかな塗面となります。UV硬化塗料で問題となる耐候性及び顔料を加えた系での硬化性に関するデータも報告されています。
アモルファスのプレポリマーと結晶性のモノマーを組み合わせた低温硬化型のUV硬化粉体塗料についても報告されています。100から120℃で熱溶解した後UV照射して硬化します。この場合にも溶融と硬化のプロセスが単純化された結果、酸素による禁止効果が弱まりプロセスを正確にコントロールできるようになります。