塗装作業は、被塗物がその場所に構築された状態で行われる現場塗装と、製作工場あるいは塗装工場内で行われる工場塗装に大別されます。さらに工場塗装には、被塗物が前処理・塗装・乾燥などの各ステージに順次コンベアで運ばれながら生産されるライン塗装があります。ライン塗装の場合、被塗物の形状・重量に適した設備が必要となりますが、定型のものを大量に塗装する場合は効率が良いです。
現場塗装は、工場塗装と比較して気象条件に左右されやすく塗料やシンナーの飛散に対する対策が必要になるなどの短所があります。一方工場塗装は、被塗物の形状・生産量に合わせた場所・設備が必要であり、現地架設後の部分補修塗装が必要といった短所があります。
鋼構造物の防食塗装の場合、被塗物が比較的大きく、形状も多種多様である場合が多く、一部を除きライン塗装には向きません。橋梁などの場合、従来は工場で下塗りまで塗装し、現地建設終了後中・上塗りを塗装することが主流でありましたが、鋼道路橋塗装・防食便覧(㈳日本道路協会 平成17年12月)によれば、新設橋梁の場合には「工場塗装した塗膜と現地塗装した塗膜の塗膜間での付着力の低下を防ぎ、均質で良好な塗膜を形成させるため、塗装は上塗りまで橋梁製作工場で塗装する全工場塗装とする」との記載があり、現在では全工場塗装が主流となっています。