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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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熱硬化性粉体塗料②



(2)アクリル樹脂粉体塗料
 熱硬化性アクリル樹脂は耐候性、保色性、耐汚染性などの塗膜性能に優れていることから、この特性を粉体塗料に生かして防食分野から美粧仕上げの分野へ需要拡大を狙ったもので、日本で開発された粉体塗料になります。
 熱硬化性アクリル樹脂としては常温では安定な粉末で、加熱時溶融して平滑な塗膜を形成する必要からガラス転移温度(Tg)が50℃以上でなくてはなりません。しかし、ガラス転移点が高いと、塗膜のたわみ性、付着力がかなり犠牲にされ、またブロッキングを起こさない反面、Tgが高く高分子量であると平滑なピンホールのない仕上がりが得られにくいです。樹脂ベースとしては溶剤型と同じく硬質モノマー(スチレン、メタクリル酸メチルなど)、軟質モノマー(マレイン酸、アクリル酸アルキルエステルなど)や、官能基モノマー(メタクリル酸グリシジルアクリルアマイドなど)の共重合体で、これらの組み合わせによって実用化されていますが、硬化反応から次の3つのタイプが主として用いられています。
 (a)水酸基含有アクリル樹脂のブロックイソシアネート硬化タイプ
 (b)カルボキシル基含有アクリル樹脂のビスオキサリゾン硬化タイプ
 (c)グリシジル基含有アクリル樹脂の二塩基酸硬化タイプ
 上記の内(c)のグリシジルタイプのアクリル樹脂は170~200℃で硬化し、塗膜外観、性能もバランスが取れており、耐ブロッキング性も良いことから自動車、家電などの美粧仕上げに用いられており、その他は一長一短があって実用化までには問題があります。
 熱硬化性アクリル樹脂粉体塗料の一般的性能は、光沢色調にさえ、硬くて耐薬品性、耐汚染性、耐候性に優れていることから用途としては外装建材用、家庭電器用、自動車用など美装用粉体として用途を広げつつあります。

(3)ポリエステル樹脂粉体塗料
 熱硬化型ポリエステル樹脂粉体塗料には、不飽和ポリエステルタイプと飽和ポリエステルタイプとに大別することができます。不飽和ポリエステルタイプは一般に焼付け時に熱変色が大きく、塗膜のたわみ性に欠けるためほとんど実用化されていません。飽和ポリエステルタイプとしては、主としてはテレフタル酸、ネオペンチルグリコールなどを主成分としたOH官能型の比較的融点の高い硬い樹脂が用いられる。硬化剤としてはメラミン樹脂のようなアミノ化合物、酸無水物およびブロックイソシアネートなどが用いられます。メラミン樹脂硬化タイプは、塗膜の平滑性、薄膜時のレベリング性は良いのですが、硬化反応時に生成するメタノールやホルマリンの揮発成分により発泡しやすく、また保管中に湿気を吸収し、貯蔵安定性も悪いです。酸無水物硬化タイプは塗膜状態、物性に優れていますが、塗膜中に未反応の酸無水物が残ると、耐食性、耐水性などが悪くなり、また焼付け条件が通常200℃20分程度の高温焼付けが必要になります。ブロックイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)を使用する硬化タイプは、常温では反応せず、高温時においてブロック剤が解離して、飽和ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート基が反応して硬化が進むものであります。この系の特徴は、溶融と反応のバランスがよく平滑性に優れた塗膜が得られますが、解離したブロック剤が放出されるため塗膜の発泡の原因となることがあります。このためブロック剤として塗膜内に残ってかつ塗膜性能を損なわないものが研究開発(バイエル社)されています。
 熱硬化型ポリエステル粉体塗料は、溶融ブレンド法が採られており、樹脂、顔料、硬化剤その他の添加剤を混合ミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融練合します。練合した後、冷却粉砕、分級により粉体化します。
 この塗膜は硬度、光沢に優れ、耐候性、耐食性にも優れているため、用途としてはプレハブ鉄骨、フェンスなどの外部用建材や配電盤、分電盤などの重電機器およびエアコンなど非常に汎用性が広く熱硬化型アクリル樹脂粉体塗膜と比較すると耐汚染性には劣ります。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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熱硬化性粉体塗料①



熱硬化性粉体塗料は、低分子量のポリマーを加熱することにより溶融して流動性を持ち、同時にポリマー骨格上にある官能基の間で架橋反応が起き、溶融、硬化が同時に進行して平滑な表面を形成します。したがって、軟化温度と硬化温度の間に大きな温度差があって、さらに貯蔵安定性の面からすれば、融点が高く、かつ溶融温度範囲が狭いことが望ましいです。熱硬化温度以下では、溶融粘度が低いことが最も望ましいです。一般に熱硬化性粉体塗料の塗装法は主として静電吹付け塗装法が適用され、素材にプライマーを処理することなく、直接塗装されることが多いです。

(1)エポキシ樹脂粉体塗料
 エポキシ樹脂粉体塗料が熱硬化性粉体塗料として最初のもので、静電粉体塗装法とともに実用化されたため今日の粉体塗料の発展があったものと考えられます。樹脂は溶剤型塗料と同様にビスフェノールとエピクロルヒドリとの縮合物が用いられ、この樹脂はコストが安く、各種各様のグレードのものができ、多数の硬化剤と反応する能力を持っていますが、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせは、その塗膜の性能に大きく影響します。硬化剤は二種類あり、すなわちあらかじめ樹脂と混合して粉体塗料化するため常温付近では反応しない硬化剤と、多少反応性があって一部エポキシ樹脂と反応して、半硬化状態となり、塗膜はジシアンジアミド、三フッ化ホウ酸塩酸無水物などが用いられ、ジシアンジアミドは安価で性能に優れ、100℃以下では安定であるため最も使いやすいものになります。ただし硬化反応性が遅く、180℃~200℃で1時間の焼付けが必要になります。そのため硬化促進剤としてグアニジン、イミダゾールなどを併用して低温硬化させる必要があります。後者は芳香族アミン、脂肪族アミンが用いられ、塗膜の耐熱性、耐化学薬品性など優れていますが、貯蔵安定性が悪く、貯蔵中に硬化が進むことがあります。
 エポキシ樹脂粉体塗料は、ドライブレンド法と溶融ブレンド法により造られ、ドライブレンド法はエポキシ樹脂、顔料、充填剤その他の添加剤をまず加熱溶融して均一に混合し、これを冷却粉砕した後硬化剤をブレンドします。
 この方法では液状の硬化剤、エポキシ樹脂は使用できません。溶融ブレンド法は、硬化剤など全成分を加熱溶融して均一に混合するもので、液状のエポキシ樹脂、硬化剤が使用でき、ミキサーは温度コントロールできるものでなければなりません。一般にスクリュウエクストルーダーが適しています。
 エポキシ樹脂粉体塗料の硬化塗膜は硬くて、強じんで、耐薬品性、電気絶縁性に優れ、金属に対しても付着性が良いです。用途は耐水、耐食性に優れていることから、水道鋼管の内外面塗装、鉄骨材の塗装などに用いられ、電気絶縁用としてモーターのロータ、ステータ、アーマチューアなどにも用いられています。エポキシ樹脂粉体塗料は、保色性、耐候性が悪く、紫外線によりチョーキングしやすいので、屋外用には使用できません。

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熱可塑性粉体塗料②



(3)ポリエチレン粉体塗料
 熱可塑性粉体塗料としては価格が安いこともあり、最も多用されているものになります。主基材はポリエチレンで、重合法による高密度、中密度、低密度ポリエチレンの3種とエチレン酢酸ビニルコポリマーとがありますが、塗装作業性、塗膜の安定性などの点から主として低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル子コポリマーが用いられます。低密度ポリエチレンは引張強度や硬度は小さいですが、伸び率が高く、熱安定性にも優れています。ポリマーの分子量は、尺度としてメルトインデックス値(溶解指数)が用いられますが、粉体用としては、10~50g/10minのメルトインデックス値のものが用いられます。塗料製造法は化学的粉砕法と機械的粉砕法が取られており、化学的粉砕法はポリエチレンペレットをトリクロールエタンに加熱溶解し、これを撹拌しながら冷却沈殿または水などを加えて沈殿させるかして粉末ポリエチレンを作る方法で、機械的粉砕法は常温で粉砕するものと、ドライアイスなど冷媒を使用して冷凍粉砕する方法とあります。前者は粒子の形が球状に近く、かさ密度も大きくフローもよいです。
 ポリエチレン粉体は、溶融温度と分解温度との差が比較的大きいために加工しやすく、流動浸漬法、溶射法が広く使われ、塗膜性能もポリエチレンの化学的安定性から耐薬品性や耐水性に優れて、電気絶縁性もよいです。しかし紫外線によって酸化が促進されるため、屋外耐候性にはやや問題があります。したがって、紫外線吸収剤を併用することによって改善する試みがなされています。用途としては電気機器部品、線材製品の被覆に用いられているほか、化学工業用装置の部品や鋼管にも用いられています。
 バイエル社(ドイツ)では、エチレン酢酸ビニルをけん化したコポリマーを基材とした粉体塗料(EVA粉体)が開発されています。この塗料はポリエチレン粉体の欠点とされた耐候性や付着性などの性能面の問題点が解決され、さらに耐食性、耐大気汚染性にも優れた性能を持っています。したがって用途も拡大され化学プラント、街路燈、標識などに使用され塗装法も溶射法、流動浸漬法などが適用されています。

(4)ポリアミド粉体塗料
 粉体塗料用として使用されているポリアミドは、一般に炭素鎖の長いナイロン11あるいはナイロン12になります。
 ナイロン11の塗膜の物性は柔軟で、摩擦係数が低く、摩擦によるロスが極めて少ないです。また耐溶剤性、耐薬品性、電気的性質にも優れ、耐熱性についても、100℃で長時間使用が可能です。ナイロン11粉体の塗装加工法は流動浸漬が主でありますが、静電粉体塗装も可能です。この場合、電荷は正負いずれも使用可能ですが、正の方が電荷は大きく、塗着効率もよく、焼き付け後の表面状態も良いです。塩化ビニル粉体塗料と同様、加熱溶融後、光沢仕上げする場合は水冷し、急冷すると過度の結晶化を防ぎ、光沢ある仕上げが得られます。艶消し仕上げする場合は空冷します。鋼板に対する溶融塗膜の付着力は良好ですが、やや経時劣化しやすい欠点があり、一般に専用プライマーを塗ることが望ましいです。用途は耐摩耗性に優れているためベアリング表面、スプリングに耐食性に適しているので家庭用洗濯機、食器洗機などの部品、バッテリーケース、また船舶用、自動車部品など各種方面に使用されつつあります。

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