(2)アクリル樹脂粉体塗料
熱硬化性アクリル樹脂は耐候性、保色性、耐汚染性などの塗膜性能に優れていることから、この特性を粉体塗料に生かして防食分野から美粧仕上げの分野へ需要拡大を狙ったもので、日本で開発された粉体塗料になります。
熱硬化性アクリル樹脂としては常温では安定な粉末で、加熱時溶融して平滑な塗膜を形成する必要からガラス転移温度(Tg)が50℃以上でなくてはなりません。しかし、ガラス転移点が高いと、塗膜のたわみ性、付着力がかなり犠牲にされ、またブロッキングを起こさない反面、Tgが高く高分子量であると平滑なピンホールのない仕上がりが得られにくいです。樹脂ベースとしては溶剤型と同じく硬質モノマー(スチレン、メタクリル酸メチルなど)、軟質モノマー(マレイン酸、アクリル酸アルキルエステルなど)や、官能基モノマー(メタクリル酸グリシジルアクリルアマイドなど)の共重合体で、これらの組み合わせによって実用化されていますが、硬化反応から次の3つのタイプが主として用いられています。
(a)水酸基含有アクリル樹脂のブロックイソシアネート硬化タイプ
(b)カルボキシル基含有アクリル樹脂のビスオキサリゾン硬化タイプ
(c)グリシジル基含有アクリル樹脂の二塩基酸硬化タイプ
上記の内(c)のグリシジルタイプのアクリル樹脂は170~200℃で硬化し、塗膜外観、性能もバランスが取れており、耐ブロッキング性も良いことから自動車、家電などの美粧仕上げに用いられており、その他は一長一短があって実用化までには問題があります。
熱硬化性アクリル樹脂粉体塗料の一般的性能は、光沢色調にさえ、硬くて耐薬品性、耐汚染性、耐候性に優れていることから用途としては外装建材用、家庭電器用、自動車用など美装用粉体として用途を広げつつあります。
(3)ポリエステル樹脂粉体塗料
熱硬化型ポリエステル樹脂粉体塗料には、不飽和ポリエステルタイプと飽和ポリエステルタイプとに大別することができます。不飽和ポリエステルタイプは一般に焼付け時に熱変色が大きく、塗膜のたわみ性に欠けるためほとんど実用化されていません。飽和ポリエステルタイプとしては、主としてはテレフタル酸、ネオペンチルグリコールなどを主成分としたOH官能型の比較的融点の高い硬い樹脂が用いられる。硬化剤としてはメラミン樹脂のようなアミノ化合物、酸無水物およびブロックイソシアネートなどが用いられます。メラミン樹脂硬化タイプは、塗膜の平滑性、薄膜時のレベリング性は良いのですが、硬化反応時に生成するメタノールやホルマリンの揮発成分により発泡しやすく、また保管中に湿気を吸収し、貯蔵安定性も悪いです。酸無水物硬化タイプは塗膜状態、物性に優れていますが、塗膜中に未反応の酸無水物が残ると、耐食性、耐水性などが悪くなり、また焼付け条件が通常200℃20分程度の高温焼付けが必要になります。ブロックイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)を使用する硬化タイプは、常温では反応せず、高温時においてブロック剤が解離して、飽和ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート基が反応して硬化が進むものであります。この系の特徴は、溶融と反応のバランスがよく平滑性に優れた塗膜が得られますが、解離したブロック剤が放出されるため塗膜の発泡の原因となることがあります。このためブロック剤として塗膜内に残ってかつ塗膜性能を損なわないものが研究開発(バイエル社)されています。
熱硬化型ポリエステル粉体塗料は、溶融ブレンド法が採られており、樹脂、顔料、硬化剤その他の添加剤を混合ミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融練合します。練合した後、冷却粉砕、分級により粉体化します。
この塗膜は硬度、光沢に優れ、耐候性、耐食性にも優れているため、用途としてはプレハブ鉄骨、フェンスなどの外部用建材や配電盤、分電盤などの重電機器およびエアコンなど非常に汎用性が広く熱硬化型アクリル樹脂粉体塗膜と比較すると耐汚染性には劣ります。