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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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各種アルキド樹脂:不飽和モノマー変性アルキド樹脂



アルキド樹脂の脂肪酸基中の不飽和二重結合を利用して、ビニル型の不飽和モノマーで変性することが出来ます。
 用いられるモノマーは。スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチルその他アクリル、メタクリルエステルなどで、これらのモノマーで変性することによって、速乾性、耐水性その他の特徴を持った樹脂が得られます。

(1)スチレン化アルキド樹脂
 スチレンモノマーで変性されたアルキド樹脂は、速乾性であり、耐水、耐アルカリ性に優れ、光沢保持性、耐候性も良いです。欠点としては、熱可塑性であり、油脂を溶解するために芳香族炭化水素溶剤のようなかなり強力な溶剤を必要とし、反面空気乾燥した塗膜は、耐溶剤性に弱く、塗り重ねする場合には、リフティング(ちぢみを生じること)する傾向があります。したがって、一回塗りで終わる上塗り塗料や、産業機械、什器などの塗装仕上げに用いられます。
(2)ビニルトルエン化アルキド樹脂
 前項のスチレン化アルキド樹脂は、溶剤として強力な芳香族炭化水素溶剤を必要とし、ミネラルスピリットのような脂肪族炭化水素系溶剤には溶けにくい欠点があります。これに対して、ビニルトルエン化アルキド樹脂はミネラルスピリットに溶かすことが出来ます。また、ビニルトルエンは置換基としてメチル基を持っていますので、アルキド樹脂との相溶性に優れているために、大豆油変性アルキド樹脂でも変性することが可能です。速乾性、硬度、耐水性に優れているため自動車用補修用塗料、ハンマートン塗料などに使用されています。
(3)メタクリル酸メチル変性アルキド樹脂
 メタクリル酸メチルもアルキド樹脂の変性に利用されます。メタクリル酸メチルと共重合させるアルキド樹脂もスチレン化アルキド樹脂の場合と同様に共役不飽和結合のの脂肪酸基を持ったものでなければ、不均一な、溶剤に溶けない樹脂となってしまいます。共役不飽和油としては、脱水ひまし油が有効です。

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各種アルキド樹脂:樹脂変性アルキド樹脂



硬質樹脂状物質により変性することによって、油変性アルキド樹脂の長所である耐候性、付着性、可とう性などを生かしながら硬質樹脂から得られる高硬度、速乾性、光沢の向上などの性質をさらに付与させるものです。

(1)ロジン変性アルキド樹脂
 ロジンの主成分であるアベチン酸が、アルキド樹脂の製造反応の際にアルコール基と反応してエステル化します。
 すなわち、無水フタル酸と多価アルコールのポリエステル主鎖に対してロジン酸と脂肪酸がエステル結合によって側鎖を作ります。ロジン自体脂肪族炭化水素溶剤に溶けやすいので、ロジン変性アルキド樹脂もミネラルスピリットに良く溶けます。また、溶剤放れも良好で、速乾性、内部乾燥に優れ、硬度、光沢の良い塗膜を助成します。変性に使用するロジンの量は用とによって違いますが、あまり多く使用すると脆くなり耐候性が劣化します。
(2)フェノール変性アルキド樹脂
 油変性アルキド樹脂の欠点である耐水性、耐アルカリ性を向上させるためにフェノール樹脂で変性します。フェノール樹脂を添加すれば、耐水、耐アルカリ性を向上させるとともに光沢、硬度が増大し付着性も向上します。欠点としては紫外線により紫外線により劣化しやすいので、下塗り塗料に用いられます。また、中油性、短油性アルキド樹脂と組み合わせて用いると耐薬品性、耐溶剤性に優れた塗膜が得られ、ドラム缶のライニングなど特に耐食性を要求されるプライマーに用いられます。

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各種アルキド樹脂:脂肪酸変性アルキド樹脂



多塩基酸と多価アルコールのみからなるアルキド樹脂は硬くて脆いという特徴があります。また、樹脂は溶剤に溶けにくいという欠点を持っています。多塩基酸の一部をあまに油などの乾性油脂肪酸で置き換え変性することによって、溶剤に溶けやすい塗料用としての特性を付与することが出来ます。アルキド樹脂は、骨格をなす多塩基酸と多価アルコールとの種類、組み合わせによっても特性が変わってきますが、変性する脂肪酸(油)の種類および量の多少によって多種多様の樹脂を生成します。樹脂中の脂肪酸(油)の量の多少を表わすのに、長油性、中油性、短油性など、油長を以て呼称します。油長の長短は、アルキド樹脂中の脂肪酸がグリセリンと反応して、脂肪酸トリグリセライドが樹脂中に占める重量百分率で示し、分類されます。
 脂肪酸の量が多くなるにしたがって溶剤に対する溶解性が増し、脂肪族(ミネラルスピリット)だけでも溶けますが、脂肪酸の量が少なくなると芳香族炭化水素系溶剤(キシロール)を用いなければ溶けなくなります。また、脂肪酸量が多くなるほど同一濃度の場合粘度が低くなり、同一粘度の場合は高揮発分となります。塗膜性能も油長が長くなるに従い、硬度は低くなり、光沢も少なくなります。耐候性はある程度長油性のものが良いです。

(1)長短油性(油長35%以下)
 長油性アルキド樹脂の硬度付与剤、アミノ樹脂やニトロセルロースと併用されます。
(2)短油性(油長35~45%)
 加熱乾燥用に向くアミノ樹脂は、ニトロセルロースと併用されます。油量が少ないのでほとんど空気乾燥しないため、アミノ樹脂との組み合わせで加熱乾燥仕上げの自動車用エナメルに用いられます。
(3)中油性(油長45~55%)
 最も広範囲な用途に用いられます。加熱乾燥させるとさらに性能が向上し、種類によってはメラミン樹脂を20%まで添加することが出来ます。しかも変性脂肪酸(油)量によっては空気乾燥します。
(4)長油性(油長55~65%)
 空気乾燥性であり、かつ屈曲性が優れているので自然乾燥用塗料として用いられます。

 また、変性する脂肪酸(油)の量によって、アルキド樹脂の性能が異なります。すなわち、きり油、あまに油、大豆油、サフラワー油などの乾性油(不飽和脂肪酸)で変性されたものは、油長により空気乾燥するもの、または加熱乾燥し、保色性、付着性、耐候性などに優れた塗膜を形成します。ひまし油ややし油などの不乾性油(飽和脂肪酸)で変性されたアルキド樹脂は、、常温では乾燥しないで、いつまでも軟粘性を持っており、短油性樹脂としてメラミン樹脂と併用して加熱乾燥型塗料に用いられる他、ニトロセルロース塗料の付着性、耐候性などの性能向上に用いられます。

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