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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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皮膜化成処理の概要



皮膜化成処理とは、金属が加工液と接触した際に起こる化学反応を利用して、金属表面に皮膜を形成させる処理方法です。この場合の反応は、処理液による金属のエッチング(表面のわずかな溶解)によって始まり、
①エッチングによって溶出した金属成分が、加工液中の成分と化合物を形成し析出する
②金属の酸化に伴って処理液中の成分が還元され析出する
③金属の酸化に伴って処理液中の水素イオン、あるいは酸化剤が還元され、金属表面のpHが上昇することによって加工液中の有効成分が沈殿析出する
などの二次反応、あるいはこれらの複合反応によって皮膜の形成が行われます。また、皮膜化成処理は電解や塗布を利用する成膜法とは異なり、被処理金属の形状に影響されにくい特徴があり、被処理金属が形状物の場合に、特に有用な処理方法といえるでしょう。
 現在工業的に用いられている皮膜化成処理方法としては、リン酸塩処理、シュウ酸塩処理、反応型クロメート処理などが知られており、各種金属材料の耐食性、塗装性能(塗膜密着性および塗装後耐食性)、あるいはトライボロジー特性を向上させる目的で適用されています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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電着塗料用樹脂の化学:カチオン電着塗料



①エポキシ樹脂
 エポキシ樹脂ベースの電着塗料が開発されて、鉄鋼材料の耐食性向上に寄与したために、カチオン電着塗装が常に優れていると思われがちではありますが、必ずしもそうではありません。カチオン電着塗料の高耐食性を実現させたのは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をベースに使用したことによります。この樹脂は耐薬品性や靱性に優れます。
 一般にエポキシ樹脂の変性反応は、樹脂末端のオキソラン環を利用します。すなわちオキソラン環は三員環でひずみが大きいため、求核試薬による開環付加反応が非常に容易に起こります。エポキシ樹脂をカチオン化するために通常、アミンやアルカノールアミンを付加しますが、アンモニア、ジアミン、ケチミン、および有機酸とのアンモニウム塩などを付加する方法も知られています。
 塗膜性能は分子量、エポキシ当量、アミン当量などに依存します。エポキシ樹脂単独では塗膜の機械的物性、塗膜仕上がり、ラインでの作業性など、耐食性以外の諸性能が良くありません。特にエポキシ当量の大きなビスフェノールA型エポキシ樹脂は硬質で、屈曲性などの機械的性質が悪いです。これを改良するためにアクリル、ポリエーテル、ポリエステルなどのポリオール樹脂、ポリアミド樹脂、液状ポリブタジエンの末端カルボキシル化物、オレイン酸などの脂肪酸が変性剤として使用されます。ポリオールなどの水酸基含有化物は、硬化反応に関与するだけではなく、可塑剤やフロー改良材としても働きます。

②アクリル樹脂
 アクリルカチオン樹脂も、メタクリル酸メチルを主体としたアクリル共重合体をベースとしています。アクリル樹脂をカチオン化する方法は、アミノ基を含有するアクリルモノマーの共重合、グリシジル基含有アクリル共重合体へのアミン付加、などがあります。
 アクリルカチオン塗料は、エポキシカチオン塗料に比較すると耐食性が悪いので、改良するためにエポキシ樹脂を混合し、耐候性や耐食性のバランスを取りながら配合量を決めます。

③カチオン電着塗料用架橋剤
 カチオン電着塗料では、ブロックイソシアネートによるウレタン硬化が一般的ではありますが、酸化重合やエステル交換反応による硬化方法、さらにこれらを複合した硬化方法が利用されています。
 イソシアネート基は、水や活性水素基との反応性が高いためそのままの状態で水系塗料として使用することは不可能であり、ブロック化イソシアネートとして安定な状態で使用します。活性基をマスクし、不活性基に変換して貯蔵安定性を改善します。逆に活性基が必要な場合は、加熱などによって不活性基からマスキング剤を脱離して活性基を再生します。このようなマスキング剤をブロック剤といいます。
 一般に電着で使用されるブロック剤はアルコール、カプロラクタム、オキシムなどがあります。
 イソシアネートには芳香族、脂肪族、および脂環族があります。芳香族系イソシアネートは反応性が高くて安価ですが、黄変性や耐候性が悪いです。脂肪族および脂環族系イソシアネートは非黄変性で、耐候性に優れています。
 イソシアネートは、アミノ基や水酸基と反応して尿素化やウレタン化します。カチオン電着塗料の硬化はカチオン化のために導入された1級および2級アミノ基、および(または)水酸基と再生したイソシアネートが反応することによります。

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電着塗料用樹脂の化学:アニオン電着塗料



①アクリル樹脂
 建材部品などの装飾用分野において、アクリル樹脂電着塗料が使用されています。アクリル樹脂は透明性に優れ、黄変しないので、1回塗りで仕上げるワンコート塗装には好都合です。
 電着塗料用アクリル樹脂は、主にメタクリル酸メチル系重合体です。メタクリル酸メチルは硬度、耐水性および耐光性に優れていますが、密着性や耐衝撃性に劣るため、塗膜物性を調節する目的で、アクリル酸エステルを共重合します。
 アクリル樹脂の電着塗料は、メラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂を架橋材として使用します。これらのアミノ樹脂は、アクリル樹脂に導入された水酸基や、メチロール化アミド基と縮合反応して硬化すると同時に、アミノ樹脂自体の縮合反応も起こします。

②ポリブタジエン樹脂
 アニオン電着塗装において、液状ポリブタジエンをベースとした電着塗料が最も防錆力に優れていると評価されていました。しかしながら、スキャブ腐食のような塗膜損傷部からの腐食が著しいため、次第にエポキシ樹脂系カチオン電着塗装に転換されてきました。
 液状ポリブタジエンには、二重結合位置により1,2構造と1,4構造があります。電着塗料に使用する液状ポリブタジエンの分子量は1000~3000です。水溶化するためには、ポリブタジエンの二重結合にマレイン酸を付加してアミンで中和します。また塗膜性能を調整するために、マレイン酸のカルボキシル基とヒドロキシル化合物とをハーフエステル化することもあります。
 ポリブタジエン樹脂は耐加水分解性、顔料分散性、酸化重合による自己架橋性、軟化点が低いため硬化塗膜の平滑性が良いことを特徴とします。また基本骨格が炭化水素であるため、耐水性、耐食性、および耐薬品性に優れます。

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