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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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潤滑剤としてのイオン液体の特性




 イオン液体は陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)のみから構成される溶融塩であり、多くの場合、その融点が100℃以下のものを指します。従来の塩は構成要素であるカチオンとアニオンの間に強力なクーロン力が働くため、容易には液体にはならず、たとえば食卓でお馴染みの塩化ナトリウムを「融かす」ためには800℃以上に加熱しなければなりません。イオン液体は構成イオンのかさ高さや非対称性、共鳴構造などを利用することで構成イオンの表面電荷密度を小さくし、静電引力を弱めることで低い融点を示します。構成イオンの設計によっては明確な融点を示さず、ガラス転移温度が-90℃を下回るイオン液体も存在します。これは、仮に南極に持っていったとしても、凍らないことを意味します。また、水や有機溶媒などの分子性液体に比べると構成イオンの相互作用が強いため、極めて蒸発しにくく難燃性という性質も持っています。
 以上のように、イオン液体は広範な条件で乾燥せず、燃えることもなく、また凍らないといった特性を示す材料であり、様々な分野への応用が期待されています。ここではその1つとして潤滑剤への応用例について紹介したいと思います。一般に自動車においてガソリンが生み出すエネルギーの7~10%は摩擦・摩耗によって失われていると言われています。したがって、低摩擦な潤滑剤の開発は高効率・長寿命な製品開発に寄与することが期待されています。一般に潤滑剤の摩擦係数は基材表面との親和性や運用条件(速度・荷重など)によっても異なることから、系全体について勘案して上での潤滑剤の設計が重要となります。
 イオン液体は熱安定性や難揮発性を有することから、真空中や高温下といった過酷な運用条件に耐える潤滑剤として期待が寄せられています。これらはイオン液体の基油としての特性といえます。一方、摩擦によって基材表面と化学反応を起こすことにより、金属ハロゲン化物などからなる潤滑膜(トライボフィルム)を形成することも特性の1つとして挙げられます。例えば高真空中において機能するグリースとしての潤滑特性の比較においては、一般に使用される多重アルキルシクロペンタン(MAC)油やパーフルオロポリエーテル(PFPE)油と比較して、イオン液体の方が優れた境界潤滑性を示すといった報告もあります。
 通常の潤滑剤に比べると、高純度に精製するのが難しく、コスト的には課題が残るものの、潤滑機構の理解や実機での試験が進み、その有用性が認知されるようになれば精製プロセスの簡略化によるコスト低減も大作として考えられます。今後のイオン液体研究の発展に期待したいところです。

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ミストコート(mist coat)




 被塗物が多孔質である場合、この上に通常の塗装を行うと、発泡して塗膜乾燥後にピンホールやふくれ状またはクレーター状の塗膜欠陥が生じます。これを防止するための封孔処理の方法としてミストコート方式があります。
 代表的には、重防食塗装系において、無機ジンクリッチペイントの上にエポキシ樹脂塗料下塗りを塗装する場合に、ミストコートの塗装が必要とされています。無機質ジンクリッチペイントの塗膜は多孔質で。通常塗膜中に10~30%の空隙(ボイド)があるといわれています。この上に通常の塗装を行うと、空隙中の空気が塗料と置換されて塗膜表面から抜け出すことにより泡やピンホールが生じることになります。ミストコートは、エポキシ樹脂塗料下塗りを塗装する前に、例えばエポキシ樹脂塗料下塗りを約30~60%希釈したものを塗装するものであり、このミストコートにより空隙中の空気をあらかじめ置換充填してその後の塗装で発泡しないようにすることができます。
 ミストコートの要件としては、使用する塗料は、無機質ジンクリッチペイントと付着性のよいことはもちろんでありますが、空隙内の空気と置換しやすく、置換後に発泡などの形跡を残さない程度の適正な低粘度にする必要があり、塗料により希釈率は多少変動しますが、通常30~60%くらいとされています。
 また、ミストコートを行う場合は、無機質ジンクリッチ塗膜の塗膜状態で空隙量が異なり、吸い込み量が異なってきますので、均一にしかも置換発泡が十分行われるよう十分な膜厚(塗布量)になるよう注意が必要です。

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塗装工程省略




 2液塗装・低温架橋反応系・2コート1ベークなどの採用による省エネルギー塗装システムの開発は古くから行われています。最近ではこれをさらに進めて工程そのものを省略する塗装システムが開発されています。

《下塗り・上塗りのワンコートシステム》

 防食性のよいエポキシ樹脂と耐候性のよいアクリル樹脂を混合した塗料を塗装し、焼き付け時にその表面張力の違いによりエポキシ樹脂は金属面側に、アクリル樹脂は塗膜表面に配勾させることで、下塗りと上塗りの両機能を持つ塗膜を1回の塗装で形成することができます。
 比較的焼き付け温度の高いカチオン電着と粉体塗装で行われています。粉体塗装の例では、両樹脂の溶解性パラメーターの差が2以上になると2層に分離し始めます。この方法で塗装した塗膜の耐候性・耐食性は両性能とも良好です。このように配勾した組成をもった塗膜は今後増えるものと思われます。

《表面処理・塗膜の同時形成システム》

 金属表面に直接塗料を塗装すると耐食性に劣ります。耐食性を上げるためには、リン酸塩などによる表面処理あるいはクロメート処理などを行った上に塗料を塗装します。塗料に特別なリン化合物を加えておくことで、In-Situに表面処理膜を形成する研究が発表されています。メラミン硬化型水性塗料の例を見ると、表面処理した金属板の上に普通の塗料を塗装した場合よりも、塗料の中にリン化合物を混合した塗料を未処理金属板に塗装した場合の方が圧倒的によい結果になっています。

《プレス油塗布を省略する塗料》

 ウレタン樹脂ディスパーション、コロイダルシリカ、ポリエチレンワックスを混合して100~150℃で乾燥した塗膜は150℃の高温領域でも優れた潤滑機能を示すために、この塗料を塗装した鋼板は、プレス油の塗布なしに加工することができます。プレス油の洗浄にはクロル系の溶剤が必要であり、この省略は環境に大きく貢献します。

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