2液塗装・低温架橋反応系・2コート1ベークなどの採用による省エネルギー塗装システムの開発は古くから行われています。最近ではこれをさらに進めて工程そのものを省略する塗装システムが開発されています。
《下塗り・上塗りのワンコートシステム》
防食性のよいエポキシ樹脂と耐候性のよいアクリル樹脂を混合した塗料を塗装し、焼き付け時にその表面張力の違いによりエポキシ樹脂は金属面側に、アクリル樹脂は塗膜表面に配勾させることで、下塗りと上塗りの両機能を持つ塗膜を1回の塗装で形成することができます。
比較的焼き付け温度の高いカチオン電着と粉体塗装で行われています。粉体塗装の例では、両樹脂の溶解性パラメーターの差が2以上になると2層に分離し始めます。この方法で塗装した塗膜の耐候性・耐食性は両性能とも良好です。このように配勾した組成をもった塗膜は今後増えるものと思われます。《表面処理・塗膜の同時形成システム》
金属表面に直接塗料を塗装すると耐食性に劣ります。耐食性を上げるためには、リン酸塩などによる表面処理あるいはクロメート処理などを行った上に塗料を塗装します。塗料に特別なリン化合物を加えておくことで、In-Situに表面処理膜を形成する研究が発表されています。メラミン硬化型水性塗料の例を見ると、表面処理した金属板の上に普通の塗料を塗装した場合よりも、塗料の中にリン化合物を混合した塗料を未処理金属板に塗装した場合の方が圧倒的によい結果になっています。《プレス油塗布を省略する塗料》
ウレタン樹脂ディスパーション、コロイダルシリカ、ポリエチレンワックスを混合して100~150℃で乾燥した塗膜は150℃の高温領域でも優れた潤滑機能を示すために、この塗料を塗装した鋼板は、プレス油の塗布なしに加工することができます。プレス油の洗浄にはクロル系の溶剤が必要であり、この省略は環境に大きく貢献します。