塗膜下腐食を化学的に抑制する作用を有する顔料をさび止め顔料と呼びます。わずかな水分、酸素などの腐食性物質が塗膜を透過し、素地金属面に到達しても、塗膜下腐食の進行を抑える目的で使用されます。作用機構により次の3種類に分類されます。
鉛丹(Pb
3O
4)、亜酸化鉛(Pb
2O)、シアナミド鉛(PbCN
2)、塩基性クロム酸鉛(PbCrO
4・PbO)、塩基性硫酸鉛(3PbO・PbSO
4・H
2O)など、油性系および油変性合成樹脂系バインダーと反応して金属石けんを作る性質のあるものを塩基性顔料と呼びます。この作用による塗膜の遮断機能の向上、顔料自身および金属石けんの抽出水の化学的腐食抑制作用によって塗膜の防食硬化を向上します。
ジンクロメート(主成分はクロム酸亜鉛H
2CrO
4Zn)、ストロンチウムクロメート(SrCrO
4)などは強い酸化性のクロメートイオンを溶出し、これらの可溶性成分の不動態化作用により防食作用を行います。このような機能を有する顔料を可溶性顔料と呼びます。
さび止め顔料として用いられる金属粉顔料は亜鉛末であり、ジンクリッチペイントとして広く使われています。これは亜鉛末の電気防食作用を基本とした塗料になります。
以上述べたように従来利用されているさび止め含量は重金属を含むものが多いため、最近これを含まないものが開発され実用化されています。リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛(ZnMoO
4)、メタホウ酸バリウム(BaB
2O
4)などがあります。
なお、アルミニウム粉、MIO顔料(micaceous iron oxide、主成分は酸化第二鉄α-Fe
2O
3)などもさび止めを目的とする塗装系によく用いられる顔料でありますが、薄片状や雲母状の顔料による腐食因子の遮断機能、塗膜の耐候性などの向上、着色などの目的に使用されており、腐食の化学的抑制作用を有するものではありませんので、さび止め顔料とは呼ばれません。
関連用語:ジンクリッチペイント