《イソシアネート架橋水性塗料》
イソシアネート架橋2液工業用塗料は、日本ではあまり歓迎されてきませんでしたが、最近の省エネルギー指向と耐酸性雨性の必要からようやく本格的に始まろうとしています。一挙に水性2液塗料にまで進むことができれば環境に対する貢献は大きいです。
イソシアネート架橋水性塗料についての報告は多く、最近の研究は、被塗材の影響あるいは添加材効果など実用化に必要な項目、実際の使用に沿った試験、新しい重合方法を使った経済的な合成方法に及んでいます。また、水との接触によるイソシアネートの劣化を防ぐために、そう転換直前の溶液に硬化剤を加えよく混合したのち少量の水を加え撹拌し、エマルション化する方法が報告されています。この場合には、硬化剤の親水化処理は必要なく、耐水性の改善も期待できます。しかし、可使時間を明確にする手段は見つかっていません。《エポキシ架橋水性塗料》
2液エポキシ樹脂塗料は防錆下塗りを中心に広く使用されています。防錆塗料に必要な酸素透過阻止能に優れるエポキシ樹脂は、水性防錆塗料用としても必須の樹脂であります。しかし、エポキシ樹脂は、樹脂が親油性であること、エポキシ基とカルボキシル基は反応するために親水基として使えずノニオン界面活性剤のみで分散しなければならないために微粒子にすることが難しいのです。粒子径が大きいと架橋剤を均一に塗膜中に分布させることが困難になります。水溶性で樹脂との相溶性に欠ける架橋剤よりも分散タイプで樹脂との相溶性に優れる方が均一に混ざりやすく、塗膜性能に良い結果を与えます。また、分散タイプの架橋剤は系全体のゲル化を起こすためにポットライフも明瞭になり興味深いところです。《シラノール架橋水性塗料》
溶剤型塗料ではアルコキシシリル基と湿気の反応で発生したシラノール基の縮合あるいは逆に発生した水酸基とイソシアネートの反応を利用した常乾1液塗料があります。この架橋系の特徴は結合が単純で着色・毒性の危険がなく、耐候性などのデータが豊富なことであります。
水性塗料では加水分解することなくアルコキシシリル基を樹脂に導入することが困難で現在はあまり利用されていませんが、様々なアルコキシシリル基をもった化合物が市販されるようになり、ラテックスへの後添加による導入技術も開発されていることから今後多く使われるようになるものと考えられます。
最近では、反応性の高いメチル基より反応性の劣る分子量の高いアルキル基のアルコキシシリル基を樹脂に導入し、使用時に触媒を加えて活性化する2液タイプが検討されています。導入の方法も単にアルコキシシリル基を持つモノマーの共重合ではなく、エマルション及びラテックス合成後にエポキシ基とアルコキシシリル基を持った架橋剤を添加する方法も報告されています。メチル基以外のアルキル基を持ったアルコキシシリル基の反応は遅くエマルション及びラテックスの粒子融合が十分に行われた後、空気中の湿気とゆっくり反応して架橋するので高性能が期待できます。《カルボジミド架橋水性塗料》
カルボジミド基はカルボキシル基と反応するので、カルボキシル基含有ラテックスを架橋するのに適しています。常温架橋から140℃加熱架橋まで反応性の異なる架橋剤が市販されています。架橋の進行はラテックスの融合を阻止するので、融合が十分に起こった後に架橋する方が塗膜性能はよくなると考えられています。種々の反応速度を持ったジミド架橋剤で架橋したカルボキシル基含有ラテックスの塗膜性能を調べ、反応速度の遅い架橋剤で架橋した塗膜の性能がよいことを確認しています。