塗料における溶剤の役割は、被塗物や顔料を「ぬらす」ことと、樹脂や硬化剤などを「溶かす」ことであり、それぞれ表面張力と溶解性パラメータが重要な支配因子となります。単一種類の溶剤で被塗物に対する濡れ、バインダー樹脂、硬化剤の溶解性、塗装~塗着~乾燥・硬化までの粘度(流動性)調整など、複雑な制御を行うのは不可能です。このため複数種類の溶剤が併用されますが、このときには蒸発速度と沸点を考慮する必要があります。
沸点が高いほど、蒸発が遅いのが一般通則でありますが、たとえば、シクロヘキシルアルコールとメチルイソブチルケトンは沸点が同じにもかかわらず、蒸発速度は圧倒的にメチルイソブチルケトンの方が速いです。アルコールとケトンのように化学構造が異なれば、必ずしも沸点と蒸発速度は相関しない場合がありますので、注意が必要です。
塗料の製造から塗装現場まで、各種法規制にしたがって諸々作業が実施されることが重要です。溶剤に関係する主な法規として、消防法、大気汚染防止法、労働安全衛生法、毒物劇物取締法、化学物質管理促進法などがあります。個々の内容につきましては、インターネット当で閲覧可能でありますので、使用者が各自で確認することが必須となります。
それぞれの法律に該当する溶剤は、指定された使用方法に従い、使用量・貯蔵量の届け出、製品への使用の事実と含有量の表示、有害情報と使用上の注意事項の表示をしなければなりません。