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塗装技術の門

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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フッ素樹脂塗料:概要、種類と特性



▽概要
 フッ素樹脂は4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体、3フッ化1塩化エチレン樹脂、2フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン共重合体、2フッ化ビニリデン樹脂、1フッ化ビニル樹脂などがこの範疇に入ります。しかし、このうちフッ素樹脂塗料としては、2フッ化ビニリデン樹脂を主体としたものと1フッ化ビニル樹脂を主体としたものとがあります。これらのフッ素樹脂はフッ化度が低いため、高フッ化度の樹脂と比べると、その特性はやや劣るというものの、一般塗料用樹脂に比べると、耐候性、耐薬品性、物理的加工性に優れています。特にフッ化ビニリデン樹脂は耐候性が極めて良いのでカラー鋼板用として建材関係に欧米では使用されています。

▽フッ素樹脂の種類と特性
 フッ素樹脂は高フッ素化樹脂と低フッ素化樹脂に大別することができます。
 塗料の基材となるフッ素樹脂は、フッ素化の程度とフッ素原子の分子中の配置によって樹脂の安定性、特性が変わってきますが、一般的特性は次のようになります。
 (1)非粘着性で、汚れにくい。
 (2)耐候性に優れ、紫外線や厳しい気象条件に対して安定である。
 (3)低温脆化による抵抗力が強い。
 (4)電気特性に優れ、絶縁破壊強度が高い。
 (5)耐薬品性が強い。
 (6)機械的強度が高い。

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熱硬化性粉体塗料②



(2)アクリル樹脂粉体塗料
 熱硬化性アクリル樹脂は耐候性、保色性、耐汚染性などの塗膜性能に優れていることから、この特性を粉体塗料に生かして防食分野から美粧仕上げの分野へ需要拡大を狙ったもので、日本で開発された粉体塗料になります。
 熱硬化性アクリル樹脂としては常温では安定な粉末で、加熱時溶融して平滑な塗膜を形成する必要からガラス転移温度(Tg)が50℃以上でなくてはなりません。しかし、ガラス転移点が高いと、塗膜のたわみ性、付着力がかなり犠牲にされ、またブロッキングを起こさない反面、Tgが高く高分子量であると平滑なピンホールのない仕上がりが得られにくいです。樹脂ベースとしては溶剤型と同じく硬質モノマー(スチレン、メタクリル酸メチルなど)、軟質モノマー(マレイン酸、アクリル酸アルキルエステルなど)や、官能基モノマー(メタクリル酸グリシジルアクリルアマイドなど)の共重合体で、これらの組み合わせによって実用化されていますが、硬化反応から次の3つのタイプが主として用いられています。
 (a)水酸基含有アクリル樹脂のブロックイソシアネート硬化タイプ
 (b)カルボキシル基含有アクリル樹脂のビスオキサリゾン硬化タイプ
 (c)グリシジル基含有アクリル樹脂の二塩基酸硬化タイプ
 上記の内(c)のグリシジルタイプのアクリル樹脂は170~200℃で硬化し、塗膜外観、性能もバランスが取れており、耐ブロッキング性も良いことから自動車、家電などの美粧仕上げに用いられており、その他は一長一短があって実用化までには問題があります。
 熱硬化性アクリル樹脂粉体塗料の一般的性能は、光沢色調にさえ、硬くて耐薬品性、耐汚染性、耐候性に優れていることから用途としては外装建材用、家庭電器用、自動車用など美装用粉体として用途を広げつつあります。

(3)ポリエステル樹脂粉体塗料
 熱硬化型ポリエステル樹脂粉体塗料には、不飽和ポリエステルタイプと飽和ポリエステルタイプとに大別することができます。不飽和ポリエステルタイプは一般に焼付け時に熱変色が大きく、塗膜のたわみ性に欠けるためほとんど実用化されていません。飽和ポリエステルタイプとしては、主としてはテレフタル酸、ネオペンチルグリコールなどを主成分としたOH官能型の比較的融点の高い硬い樹脂が用いられる。硬化剤としてはメラミン樹脂のようなアミノ化合物、酸無水物およびブロックイソシアネートなどが用いられます。メラミン樹脂硬化タイプは、塗膜の平滑性、薄膜時のレベリング性は良いのですが、硬化反応時に生成するメタノールやホルマリンの揮発成分により発泡しやすく、また保管中に湿気を吸収し、貯蔵安定性も悪いです。酸無水物硬化タイプは塗膜状態、物性に優れていますが、塗膜中に未反応の酸無水物が残ると、耐食性、耐水性などが悪くなり、また焼付け条件が通常200℃20分程度の高温焼付けが必要になります。ブロックイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)を使用する硬化タイプは、常温では反応せず、高温時においてブロック剤が解離して、飽和ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート基が反応して硬化が進むものであります。この系の特徴は、溶融と反応のバランスがよく平滑性に優れた塗膜が得られますが、解離したブロック剤が放出されるため塗膜の発泡の原因となることがあります。このためブロック剤として塗膜内に残ってかつ塗膜性能を損なわないものが研究開発(バイエル社)されています。
 熱硬化型ポリエステル粉体塗料は、溶融ブレンド法が採られており、樹脂、顔料、硬化剤その他の添加剤を混合ミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融練合します。練合した後、冷却粉砕、分級により粉体化します。
 この塗膜は硬度、光沢に優れ、耐候性、耐食性にも優れているため、用途としてはプレハブ鉄骨、フェンスなどの外部用建材や配電盤、分電盤などの重電機器およびエアコンなど非常に汎用性が広く熱硬化型アクリル樹脂粉体塗膜と比較すると耐汚染性には劣ります。

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熱硬化性粉体塗料①



熱硬化性粉体塗料は、低分子量のポリマーを加熱することにより溶融して流動性を持ち、同時にポリマー骨格上にある官能基の間で架橋反応が起き、溶融、硬化が同時に進行して平滑な表面を形成します。したがって、軟化温度と硬化温度の間に大きな温度差があって、さらに貯蔵安定性の面からすれば、融点が高く、かつ溶融温度範囲が狭いことが望ましいです。熱硬化温度以下では、溶融粘度が低いことが最も望ましいです。一般に熱硬化性粉体塗料の塗装法は主として静電吹付け塗装法が適用され、素材にプライマーを処理することなく、直接塗装されることが多いです。

(1)エポキシ樹脂粉体塗料
 エポキシ樹脂粉体塗料が熱硬化性粉体塗料として最初のもので、静電粉体塗装法とともに実用化されたため今日の粉体塗料の発展があったものと考えられます。樹脂は溶剤型塗料と同様にビスフェノールとエピクロルヒドリとの縮合物が用いられ、この樹脂はコストが安く、各種各様のグレードのものができ、多数の硬化剤と反応する能力を持っていますが、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせは、その塗膜の性能に大きく影響します。硬化剤は二種類あり、すなわちあらかじめ樹脂と混合して粉体塗料化するため常温付近では反応しない硬化剤と、多少反応性があって一部エポキシ樹脂と反応して、半硬化状態となり、塗膜はジシアンジアミド、三フッ化ホウ酸塩酸無水物などが用いられ、ジシアンジアミドは安価で性能に優れ、100℃以下では安定であるため最も使いやすいものになります。ただし硬化反応性が遅く、180℃~200℃で1時間の焼付けが必要になります。そのため硬化促進剤としてグアニジン、イミダゾールなどを併用して低温硬化させる必要があります。後者は芳香族アミン、脂肪族アミンが用いられ、塗膜の耐熱性、耐化学薬品性など優れていますが、貯蔵安定性が悪く、貯蔵中に硬化が進むことがあります。
 エポキシ樹脂粉体塗料は、ドライブレンド法と溶融ブレンド法により造られ、ドライブレンド法はエポキシ樹脂、顔料、充填剤その他の添加剤をまず加熱溶融して均一に混合し、これを冷却粉砕した後硬化剤をブレンドします。
 この方法では液状の硬化剤、エポキシ樹脂は使用できません。溶融ブレンド法は、硬化剤など全成分を加熱溶融して均一に混合するもので、液状のエポキシ樹脂、硬化剤が使用でき、ミキサーは温度コントロールできるものでなければなりません。一般にスクリュウエクストルーダーが適しています。
 エポキシ樹脂粉体塗料の硬化塗膜は硬くて、強じんで、耐薬品性、電気絶縁性に優れ、金属に対しても付着性が良いです。用途は耐水、耐食性に優れていることから、水道鋼管の内外面塗装、鉄骨材の塗装などに用いられ、電気絶縁用としてモーターのロータ、ステータ、アーマチューアなどにも用いられています。エポキシ樹脂粉体塗料は、保色性、耐候性が悪く、紫外線によりチョーキングしやすいので、屋外用には使用できません。

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