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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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付着の理論:拡散説



1951年、Voyutskiiらはポリイソブチレンラミネートの自着実験を行い、同種ポリマーが接触すると分子拡散運動により接触界面を超えて分子が拡散し、境界面がわからなくなって接着することを発見しました。彼らは自着ばかりでなく、拡散説をすべての接着現象に拡張しています。
 拡散説は接着機構に分子運動論を導入した点でユニークではありますが、セロハン/ゴム系などで分子拡散は到底考えられませんし、理論が定性的であることや、レオロジー的問題を無視しているなどといった批判も多いのが実情です。

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付着の理論:電気説(電気2重層説)



1944年、Deryaginらは、剥離速度/剥離力の関係を研究して、付着力は異種物質の接着界面における電気2重層の荷電量と電位差で決まるという静電気理論を提唱しました。
 電気説は合成繊維衣類などで私たちが日常的に経験しています。Skinnerらも界面の荷電を直接測定しています。また、剥離速度や温湿度・雰囲気といった環境の影響をよく説明できます。しかし、導電塗膜がよく付着する事実を説明することは出来ませんし、Deryaginの説の基礎である理論式の適用にも疑問が残ります。

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付着の理論:吸着説(吸着2段階説)



吸着説(吸着2段階説)は、Mc LarenやZismanらにより提唱・支持され、古くから知られています。
 付着するためには、次のように分子の拡散と吸着の2段階を経て、被塗物-ビヒクルポリマーの分子間が引き合います。
 第1段階――溶液または融液からポリマーが固体表面に核酸移動する段階。そしてポリマー分子の極性基が被塗物表面分子の極性基に接近する。
 第2段階――塗液-被塗物の分子間距離がある範囲(Åオーダー)内に接近すると、主としてファンデルワールス力が作用して吸着平衡に達し、接着力を発揮する。
 ファンデルワールス力のような弱い力に頼るよりは、水素結合力や共有結合力による付着の方が当然好ましいということになります。エポキシ樹脂がよく付着するのは、金属表面上での水酸基同士の水素結合によるものであったり、ウレタン塗料のイソシアネート基と木材セルロースの水酸基とがウレタン結合(共有結合)を形成するためである、ということなどが言われています。ただし、これらには確証がありません。個々の結合力は弱くても、ファンデルワールス力に頼らざるを得ないのが現状です。
 吸着説は「似たもの同士はよく接着する」という経験則にもよく合致し、ビヒクルポリマーの重合度・温度・圧力の影響を合理的に説明できる利点があります。しかし、拡散と吸着の相反する分子運動で説明することは、ちょうど2枚舌で説明するようなものですし、また、平衡論であることから、脱着速度の影響は説明できないなどの弱点もあります。

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