吸着説(吸着2段階説)は、Mc LarenやZismanらにより提唱・支持され、古くから知られています。
付着するためには、次のように分子の拡散と吸着の2段階を経て、被塗物-ビヒクルポリマーの分子間が引き合います。
第1段階――溶液または融液からポリマーが固体表面に核酸移動する段階。そしてポリマー分子の極性基が被塗物表面分子の極性基に接近する。
第2段階――塗液-被塗物の分子間距離がある範囲(Åオーダー)内に接近すると、主としてファンデルワールス力が作用して吸着平衡に達し、接着力を発揮する。
ファンデルワールス力のような弱い力に頼るよりは、水素結合力や共有結合力による付着の方が当然好ましいということになります。エポキシ樹脂がよく付着するのは、金属表面上での水酸基同士の水素結合によるものであったり、ウレタン塗料のイソシアネート基と木材セルロースの水酸基とがウレタン結合(共有結合)を形成するためである、ということなどが言われています。ただし、これらには確証がありません。個々の結合力は弱くても、ファンデルワールス力に頼らざるを得ないのが現状です。
吸着説は「似たもの同士はよく接着する」という経験則にもよく合致し、ビヒクルポリマーの重合度・温度・圧力の影響を合理的に説明できる利点があります。しかし、拡散と吸着の相反する分子運動で説明することは、ちょうど2枚舌で説明するようなものですし、また、平衡論であることから、脱着速度の影響は説明できないなどの弱点もあります。