反応型クロメート加工液中のアニオン成分として、特にリン酸を添加した場合については、クロム酸クロメート皮膜ではなく、リン酸クロムを主成分とする皮膜を形成するため、リン酸クロメート処理と称して、クロム酸クロメート処理と区別されます。
リン酸クロメート皮膜の生成機構は、クロム酸クロメート処理同様、素地のエッチングによってクロム酸が3価のクロムに還元されるところから始まりますが、生成した水酸化クロムからはクロム酸クロムを生じることがなく、リン酸と反応して難溶性のリン酸クロムが皮膜として析出します。
リン酸クロメート処理は、高い耐食性を有することはもちろん、皮膜中に6価クロムを含有しないこと、皮膜が難溶性であることなどの特徴を有し、各種塗装の前処理や、6価クロムの溶出を嫌う部材(アルミ缶の表面処理など)に対して広く使用されています。
なお、アルミニウム合金に対してリン酸クロメート処理を施した場合、アルミニウム素地とクロメート皮膜界面は、クロム酸クロメート皮膜と同様に、酸化アルミニウムやフッ化アルミニウムが偏析していることが知られています。