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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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【自動車】高級感のある塗装外観を得るための工夫:塗装系




 鮮やかな色や深みを出すための塗装系がすでに採用されています。例えば、明度を調節した中塗りに低隠ぺい力の上塗りを組み合わせることによって鮮やかな色を出す塗装系と上塗りを二層にして顔料を少なくした同系統色を用いて深み感を出す塗装系などになります。
 また、上塗り塗膜だけでは不十分な耐衝撃性能や耐食性能については、化成処理、電着塗料、中塗り塗料を配慮することによって目標を達成しています。例えば、走行中に巻き上げた小石などによる衝撃が問題になる場合でも、中塗り塗膜が小石の運動エネルギーをほとんど吸収するように設計すると、電着塗膜以下に損傷を受けないので、防食性能は維持されます。また、化成処理は鋼板表面を不活性にして局部電池形成を抑制し、電着塗料はボディの隅々まで均一の塗装できるように設計されているので、自動車ボディの腐食を抑制する機能を有しています。

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【自動車】高級感のある塗装外観を得るための工夫:顔料




 顔料は色調から有色・無色顔料、化学構造上からは無機・有機顔料に分けられます。白色顔料には酸化チタン、黒色顔料にはカーボンブラック、有色顔料には無機・有機顔料が使用されます。有機顔料は色調が鮮やかな点が特長になります。
 白色顔料には、光をほとんど吸収することなく大部分を反射するものが好適です。樹脂の屈折率は1.49~1.60程度ですので、これより屈折率の大きい物質を用いるほど、顔料と樹脂の界面での光の散乱が大きくなり、より白く見えます。無彩色顔料と称されるもの(例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムなど)は屈折率が1.5前後で樹脂のそれとあまり変わらないため、樹脂中で白色を呈しません。したがって、白色顔料として屈折率の高い酸化チタン(ルチル、屈折率2.6~2.9)が用いられます(アナターゼ、屈折率2.5)。ルチルの純度が低かったり、別の結晶構造のアナターゼを含んだりすると白色度が低下するので、純度や結晶形の制御が重要になってきます。粒径が小さくなると表面積が大きくなり、反射率は大きくなりますが、光の波長と同程度あるいはそれより小さくなると、光の透過が始まり、散乱は小さくなってしまいます。屈折率1.48の媒体中に分散した屈折率2.71の酸化チタンは、粒径0.34μmで最大散乱を与えると計算されます。したがって、塗料用酸化チタンの一次粒子径はこの値付近に制御されています。
 一方、有機顔料は共役二重結合と助色団の系の電子のπ→πおよびn→π遷移によって発色します。アゾ系、共役ポリエン系、多環縮合系など多数の顔料がありますが、無機顔料に比較して劣る点が多かったため、化学構造面からの改良が行われ、フタロシアニン系・キナクリドン系顔料が開発されました。有機顔料にも、化学構造が同じでも二つ以上の結晶構造をとるものがあります。無置換キナクリドン顔料はα、β、γ三種の結晶形を持ち、α、γ型は赤、β型は赤紫色を示します。したがって、結晶形ごとに光学的性質が異なるので、特定の結晶形だけを取り出すための顔料処理法が重要になります。
 また、顔料の粒径によっても色は変化します。最適粒子径は顔料の吸収波長の0.3~0.5倍の大きさになります。これより小さくなると、塗膜の透明性が増し、鮮やかさが増すと同時に短波長の光ほど散乱が大きくなるので、散乱光は青みを帯びてきます。逆に粒子径が大きくなると、透過光が大きくなり、鮮やかさが低下すると同時に顔料の色に対して補色関係の色の割合が多くなります。
 一方、光の特殊な反射を利用する方法として、アルミニウム粉や表面を酸化チタンでコーティングしたマイカなどを用いる方法があります。前者では、偏平なアルミニウム粉を塗膜中で表面と平行に配向させています。そこで、入射角と観測角を変えて塗膜を眺めると、光路長が変化するので異なったメイドや色調を示すと同時に、アルミニウム粉からの反射によって金属光沢を示します。後者では、酸化チタンの量で干渉色を制御しているため、真珠のような色調や光沢を示すものになります。
 以上の点から顔料に関しては、純粋な物質の特定の結晶形を用い、粒子径を揃えて使用することにより美しさを発現させ、また、粒子の配向を制御することにより光の特殊な効果を発揮させているといえるでしょう。

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【自動車】高級感のある塗装外観を得るための工夫:樹脂




 物体表面での光の反射は正反射と拡散反射を含みます。一般に、正反射の成分が大きいほど光沢が強くなります。表面色の感覚は反射光自身の性質だけでなく、反射面の平滑性や材質の屈折率の影響を受けます。光沢度はJIS Z 8741により、鏡面光沢度、鮮明度光沢度などが定義されています。前者は物体表面の鏡面反射光束に対する比として表されます。基準面には屈折率1.567のガラス表面が用いられます。また、後者は光沢面に映る反射増の鮮明さによって光沢を表すものであります。屈折率の高い塗膜を用いると、塗膜は高い鏡面光沢度を示す傾向にあります。また、塗膜の輝きや鮮やかさを発現するためには、樹脂の透明性が重要でありますが、合成技術などの進歩に伴い、樹脂の着色度は著しく改良されています。
 一方、塗膜は自然環境に長期間さらされると光沢を失ってきます。これは太陽光、水などの作用によるものであり、特に太陽光中の紫外領域の光がこのような塗膜の劣化二大きく影響してきます。紫外光は樹脂を励起させることにより、空気中の酸素とパーオキサイドラジカルを形成させ、それによって高分子鎖を切断していきます。その結果、光沢が失われてしまいます。したがって、上塗り用樹脂は、このような反応を起こしやすい二重結合やフェニル基などの構造を含まないように設計されます。また、紫外光が塗膜光沢低下の主要素でもあるので、塗膜中に紫外吸収剤を添加し樹脂の劣化防止が行われています。代表的な吸収剤としては、ベンゾトリアゾールがあり、これはケト・エノール異性が紫外光吸収と熱放射によって可逆的に起きるのものであります。紫外光による劣化において、白色顔料の酸化チタンは触媒的に作用するので、その表面をアルミニウム、亜鉛、ケイ素、ジルコニウムなどの酸化物でコーティングすることによって、触媒作用の軽減が試みられています。
 一方、塗膜表面に傷をつきにくくするためには、硬度化樹脂塗膜のヤング率を高くして硬度を増す必要があります。ヤング率を高くするには橋かけ密度(n)やガラス転移温度(T)を高くすることで達成できます。一般に、Tはlognに比例します。橋かけ密度は骨格樹脂と橋かけ剤の反応点の密度で表されます。したがって、橋かけ剤の官能基密度を大きくしたり、焼付温度を高くして十分反応させることによって、nを大きくすることができます。また、Tを使用温度よりも高くなるように設計できれば、見かけ上の硬さを増すことができます。
 以上の点から、現在はメラミン・アルキド焼付型やアクリル焼付型樹脂が使用されています。さらに、光沢低下の少ない樹脂としてフッ素樹脂が検討されています。

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