物体表面での光の反射は正反射と拡散反射を含みます。一般に、正反射の成分が大きいほど光沢が強くなります。表面色の感覚は反射光自身の性質だけでなく、反射面の平滑性や材質の屈折率の影響を受けます。光沢度はJIS Z 8741により、鏡面光沢度、鮮明度光沢度などが定義されています。前者は物体表面の鏡面反射光束に対する比として表されます。基準面には屈折率1.567のガラス表面が用いられます。また、後者は光沢面に映る反射増の鮮明さによって光沢を表すものであります。屈折率の高い塗膜を用いると、塗膜は高い鏡面光沢度を示す傾向にあります。また、塗膜の輝きや鮮やかさを発現するためには、樹脂の透明性が重要でありますが、合成技術などの進歩に伴い、樹脂の着色度は著しく改良されています。
一方、塗膜は自然環境に長期間さらされると光沢を失ってきます。これは太陽光、水などの作用によるものであり、特に太陽光中の紫外領域の光がこのような塗膜の劣化二大きく影響してきます。紫外光は樹脂を励起させることにより、空気中の酸素とパーオキサイドラジカルを形成させ、それによって高分子鎖を切断していきます。その結果、光沢が失われてしまいます。したがって、上塗り用樹脂は、このような反応を起こしやすい二重結合やフェニル基などの構造を含まないように設計されます。また、紫外光が塗膜光沢低下の主要素でもあるので、塗膜中に紫外吸収剤を添加し樹脂の劣化防止が行われています。代表的な吸収剤としては、ベンゾトリアゾールがあり、これはケト・エノール異性が紫外光吸収と熱放射によって可逆的に起きるのものであります。紫外光による劣化において、白色顔料の酸化チタンは触媒的に作用するので、その表面をアルミニウム、亜鉛、ケイ素、ジルコニウムなどの酸化物でコーティングすることによって、触媒作用の軽減が試みられています。
一方、塗膜表面に傷をつきにくくするためには、硬度化樹脂塗膜のヤング率を高くして硬度を増す必要があります。ヤング率を高くするには橋かけ密度(n)やガラス転移温度(Tg)を高くすることで達成できます。一般に、Tgはlognに比例します。橋かけ密度は骨格樹脂と橋かけ剤の反応点の密度で表されます。したがって、橋かけ剤の官能基密度を大きくしたり、焼付温度を高くして十分反応させることによって、nを大きくすることができます。また、Tgを使用温度よりも高くなるように設計できれば、見かけ上の硬さを増すことができます。
以上の点から、現在はメラミン・アルキド焼付型やアクリル焼付型樹脂が使用されています。さらに、光沢低下の少ない樹脂としてフッ素樹脂が検討されています。