【熱安定性】
ヒンダードポリオールエステルは擬環状中間体を経由する低活性化エネルギー型の低温分解を受けにくいため、従来のエステルの欠点であった熱安定性が大きく向上しており、熱分解温度が高くなっています。
熱天秤分析曲線から求められる最高重量損失速度を示す温度はペンタエリストール・ヘプタン酸エステルで380℃に達します。
一方、実用的熱安定性を推測するテストにパネルコーキング試験がありますが、各種合成潤滑油についてテストした結果はポリオールエステルが優れた実用的熱安定性を示しています。
エステルは高温に長時間さらすと熱分解し、一般にカルボン酸とオレフィンを与えます。【熱酸化安定性】
潤滑油使用時の酸化安定性と良好な相関を示す高圧空気中の酸化による"発熱開始温度"(ミクロ型高圧示差熱分析)は、ポリオールエステルが190℃以上を示し(パラフィン系鉱油は173℃)、微量の金属塩が混入してもこの温度は鉱油におけるほど大きくは低下しませんでした。
各種の合成潤滑油の酸化安定試験結果は、ポリオールエステルが優れた安定性を示しています。
油は酸化を受けると、粘度が大きく上昇しますが、ポリオールエステルの粘度上昇の原因は、エステル中のアシル基が酸化されてオキソ基、ヒドロキシル基(主として第二級アルコール)が発生し、後者の脱水生成物である二重結合によりエステルが熱重合するために高粘度物質を与えることによるものと推定されています。