一般の油性さび止め/フタル酸樹脂系などの防食塗装は、屋外田園部など飛来塩分の影響をほとんど受けない一般環境で5~10年程度の塗り替え周期の維持を目標としています。一方、海上、海岸など過酷な腐食環境にある橋梁、鉄塔、煙突、設備機器などの鋼構造物を保護するために、一般の防食塗装より格段に防食性、耐久性に優れ、10年以上の塗り替え周期の維持を目標とする塗装を重防食塗装と呼びます。
現在、この目的には厚膜型ジンクリッチペイントあるいは金属溶射皮膜の上に厚膜型合成樹脂塗料を塗り重ね、総膜厚約250μm以上とした塗装系が多く用いられています。ジンクリッチペイントは、防食塗料として亜鉛粉末を塗膜中に70%以上含む防錆塗料で、エポキシ樹脂系などの有機系、エチルシリケート系などの無機系がともに用いられます。金属溶射皮膜は、溶融した粒状の形成皮膜材料(亜鉛、アルミニウム、亜鉛-アルミニウム、アルミニウム-マグネシウムなど)を圧縮空気で鋼材に吹き付けて皮膜層を形成します。溶射皮膜の上に塗装する合成樹脂塗料には、エポキシ樹脂系、変成エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系などが用いられています。
さらに、樹脂ライニングに近い性能を有する塗料として次のものの採用が増加しつつあります。すなわち、鱗片状のガラスフレークを配合して塗膜の腐食因子遮断機能と機械的性質の向上を図ったガラスフレークコーティング、2液型ポリウレタン樹脂塗料で非常にポットライフの短いものを使用し、主剤と硬化剤をスプレーガンの直前で混合して塗装することにより、速硬化性の超厚膜塗装を行うもの、エポキシ樹脂塗料に多量の骨材を加えて厚膜塗装を可能としたものなどであります。