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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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塗膜形成の化学



ラッカーやビニル樹脂形塗料のような溶剤型塗料では、塗膜形成時に化学反応は伴いませんが、橋かけ型塗料では塗膜の硬化乾燥は化学反応によるので、以下これらについての概要を述べます。橋かけ型とは金網のような分子が交差して巨大分子の形になると推定しての呼称になります。
 いろいろな樹脂は、まずそれを溶解できる混合溶剤に溶かしてから塗料を作ります。このときの理想は、少量の溶剤でなるべく多くの量の樹脂を溶かし、しかもそれが塗装できる低粘度であることが望ましくなります。一般にその樹脂の分子量の大小が因子としてはウエートが大きくなります。このため濃度と粘度とは相反する関係にあります。すなわち分子量が大きいと、濃度を低くしないと塗装粘度にならないため、結果として乾燥膜厚の厚みは薄くなると塗装回数は多くなります。このため塗料用の樹脂は比較的分子量の小さなものにならざるを得ません。
 溶剤型の塗料では、融点の高いものを使って溶剤蒸発後の樹脂が、塗膜として実用性がある範囲となるようなものを選択します。しかしこれでは性能的に限度があります。
 化学的塗料は比較低分子量の低い初期重合体(プレポリマー)を使って塗装時の膜厚を上げるようにし、その代わり、その後化学反応を行って被塗物の上で、巨大分子量の樹脂にして、塗膜としての性能を広く、かつ強いものにしようとの考え方に基づいて作られたものになります。
 化学反応によってプレポリマーを、縦横に連結して分子量を大きくするわけでありますが、この場合電車の連結器と同じように、プレポリマーにも連結器が必要になってきますし、またレールがないからバラバラ状の分子を連結するための、連結用具も必要になります。この連結器および連結用具を科学上は「極性基」といいます。
 連結ですので、1セグメントとしてのプレポリマー中には2個以上の極性基が必要になります。また連結用具のことを架橋材、橋かけ剤、硬化剤などと呼んでいます。

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塗膜形成の物理



塗料はゾル、塗膜はゲル状です。ゾル→ゲルへの移行は乾燥によりますが、これが物理的には塗料の流動性が小さくなったことを意味します。すなわち、
 (塗料)→(塗装)→(塗料の粘度増加)→(弾性の出現)→(粘弾性の増加)→(塗膜)
の過程で作られます。このときそれぞれが数値的に表わしうるのであればいいのですが、実際は状態変化が激しいため、粘弾性の測定は極めて困難です。
 塗料の粘度が10000Pになると、指触では乾燥塗膜と感じられます。この10000Pの粘度は一般にその樹脂の軟化点における粘度に相当するもので、固体-液体の境界領域での粘度になります。したがって乾燥が早いということは、短時間の間に粘度が上がり、10000P以上の粘度になることを意味します。ここで注意したいのは、この粘度の状態では、塗膜中に溶剤分がなくなっているわけではありません。このため完全に乾燥すると、塗膜厚は非常に薄くなります。業界ではこのことを「肉やせ」と呼んでいます。
 塗料から溶剤が蒸発するときの挙動は、溶剤単独の時とは同じではなく、塗料からの方が遅くなります、その理由は、
(1)樹脂の溶解による蒸気圧の低下
(2)樹脂と溶剤との相互作用(親和性)
(3)溶剤の内部の抵抗拡散
(4)溶剤の蒸発とともに塗料内部の濃度傾斜
(5)表面膜の形成
が挙げられます。溶剤の蒸発初期は、恒量蒸発で、うず流動を起こして塗料内部の均一化があって、溶剤分子は表面から蒸発します。後期は、粘度が上がるのでうず流動は止まり、溶剤分子は塗膜表面層に拡散しながら蒸発します。うず流動停止後のいわゆる残留溶剤の蒸発も、速度が初期のものよりも遅いだけで、機械的には同じと考えられています。一般に塗料中の溶剤分が、約80%蒸発してしまうまでは、蒸発速度はほぼ同じで、85~90%くらいになると急激に低下し、終わりの5%くらいが全体蒸発終了するには、かなりの時間がかかります。ここで、当然のことではありますが、塗料中の溶剤蒸発は、
(1)膜厚
(2)空気流量
(3)温度と湿度
に深い関係があります。

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粉体塗料・水系塗料



《粉体塗料》

 広義での無溶剤塗料であり、高分子樹脂と顔料などの混合熱練合し冷却、粉状にした塗料で、当然のことながら溶剤を含んでいません。日本でも1968年より粉体塗装が実用段階に入り、従来の塗料形態と異なる画期的な塗料の変換とも考えられています。
 この塗料の持つ多くの利点は、現今の厳しい公害問題に対処するための解決手段、労働力不足・人件費高騰への対処、製品品質レベルアップに大きく貢献するという点です。
 現在塗装法としては静電塗装を使用し、日本ではエポキシ系・熱硬化型ポリエステル系・熱硬化型アクリル系などが市販されています。

《水系塗料》

水系塗料は下記のような種類のものがあります。
・エマルション
 水に樹脂、顔料を分散させたタイプ(例えばビニル系エマルション塗料・アクリル系エマルション塗料)で溶剤を含まないので、建築用として現場塗装に適しています。
・水溶性型
 完全に水に溶解する(例えば、水溶性アルキド樹脂塗料・水溶性エポキシ系塗料)で電着塗料として使用されています。
・水分散型
 コロイダルディスパーションともいわれその特長はエマルションと水溶性の中間程度で、性能的にバランスが取れているため自動車用の上塗り(メタリックベース)塗料に一部使用されています。

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