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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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主要なさび止め塗料:下塗り塗料(1)




 下塗り塗料は防食効果の主体をなすものであって、鉄鋼面に良好な付着性を有し、防食性能のために必要な膜厚を確保しうる塗装性状で、また適当な防錆顔料を配合して防食性能を向上させています。
 上塗り塗料と比較して顔料の配合比率が高く、光沢・色彩などの外観的要因、耐候性などには大きな配慮は支払われないことが多いです。

油性系防食塗料

 油性系防食塗料は最も長い使用実績のある鋼構造物用防食塗料です。通常の腐食環境で良好な防食効果を示し、さび落としの程度の許容度など施工性の幅が合成樹脂系塗料より大きいこと、はけ塗り作業性が良いこと、価格が比較的安いことなどが広く採用されている理由と思われます。ただし塗膜の乾燥が遅く、特に低温乾燥性が良くありません。
 下に主要な油性さび止めペイントの種類を示しました。
 JIS1種では純油性系ビヒクル、2種は油・樹脂混成系のビヒクルで2種の方が1種より塗膜の乾燥が早いです。防食性能においては1種の方が優れているので、第1層にはJIS1種を適用する例が多いです。第2層にはJIS2種を塗装する例も多いですが、橋梁を始め大型構造物では第2層にも防食性能の良い1種を使用するのが普通です。
 一般さび止めペイントは防錆顔料の配合率が低く、防食効果が小さいのでごく穏やかな腐食環境、あるいは耐久性を必要としない箇所にしか使用しません。防錆顔料の配合は油性系防食塗料の場合特に効果が著しいです。

主要な油性さび止めペイント

一般用さび止めペイント(JIS番号 K5621 1種・2種・3種)

・防食効果はあまり大きくないので、穏やかな腐食環境に使用する

鉛丹さび止めペイント(JIS番号 K5622 1種・2種)

・長い実績を有する
・防食効果が優れている
・塗膜の乾燥が遅い

亜酸化鉛さび止めペイント(JIS番号 K5623 1種・2種)

・鉛丹に次ぐ実績がある
・元来2液型である
・JIS該当品ではないが既調合形もある
・乾燥が早く防食性に優れている

塩基性クロム酸さび止めペイント(JIS番号 K5624 1種・2種)

・乾燥が早く塗膜物性が良い

シアナミド鉛さび止めペイント(JIS番号 K5625 1種・2種)

・乾燥が早く塗膜物性が良い

ジンククロメートさび止めペイント(JIS番号 K5627 A・B)

・Aは主として軽金属面、Bは鉄鋼用である

鉛丹・ジンククロメートさび止めペイント(JIS番号 K5628)

・鉛丹ペイントより速乾であるが、防食効果は及ばない

鉛酸カルシウムさび止めペイント(JIS番号 K5629)

・白色の下塗り塗料とすることができるので塗彩仕上げ用の下塗に用いて便利である
・特に亜鉛面用に適する

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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主要なさび止め塗料:ショッププライマー




 ショッププライマーは鋼板よりショットブラスト、グリットブラストなどの処理によってミルスケール、赤錆などの汚染物を除去した後に原板に塗装し、加工後、さび止め塗装が行われるまでの期間の防錆を目的とするものです。ショッププライマーに必要な性能は次の通りです。
(1)速乾性。短時間で取扱い可能。
(2)鉄鋼面への付着性良好。
(3)各種塗料の塗り重ねが可能で相互の付着性が良い。
(4)溶接・溶断に悪影響を及ぼさない。
(5)数か月以上の防錆性。
 ショッププライマーには、長ばく形エッチングプライマー、ジンクリッチプライマー、ノンジンクプライマー、ジンクプアープライマーなどが使用されています。
 エッチングプライマーは従来、ウォッシュプライマーと呼びならされてきた塗料です。最初に開発された形は現在、短ばく形と呼ばれているものです。ポリビニルブチラール溶液にジンククロメート(ZTO型)などの顔料を加えた主剤と、リン酸アルコール溶液を使用前に混合する二液形塗料です。短ばく形エッチングプライマーは鉄鋼用のほか軽金属、亜鉛めっき面などの付着性と防食性向上の目的に使用されますが、極めて薄膜で屋外防食性はなく、塗装後すみやかに塗り重ね塗装を行う必要があります。
 ショッププライマーに用いられるものは、フェノール樹脂などを加え、ある程度の耐久性が得られるように改良したもので、長ばく形エッチングプライマーと呼ばれます。主に塗り重ねられる塗装系が油性系、油変性アルキド樹脂系の場合に多く使用されます。
 重防食塗料が普及されるに従い、エッチングプライマーよりも高い防食効果を有するショッププライマーとして、ジンクリッチプライマーが使用されるようになってきました。
 ジンクリッチプライマーは亜鉛末の電気防食作用を基本とする塗料です。ショッププライマーとして使用するほか、膜厚50~75μm程度の厚膜形ジンクリッチペイントとして、重防食用塗料としても使用されます。無機質と有機質の別があり、無機質はアルキルシリケートあるいはアルカリシリケートをバインダーとしたものですが、ショッププライマーの場合はアルキルシリケート系が用いられています。有機質はエポキシ樹脂、ゴム系、ポリスチレン樹脂などをバインダーとして用いるものですが、エポキシ樹脂が殆どです。無機質と有機質の特長の比較について、概していえば無機質は防食性能、耐熱性に優れていますが、有機質は施工性に優れています。
 塗り重ねられる塗装系には広く各種の合成樹脂系塗料の適用が可能です。しかし油性系、油変性アルキド樹脂系の塗り重ねは出来ません。
 これは油性塗膜とジンクリッチ塗膜の層間で、早期に、はく離現象の発生する危険があるためです。その理由としては、層間で亜鉛石けんの生成反応が起こること、亜鉛の溶出によるアルカリ化によって、油性系塗膜が加水分解を受けやすいことなどが挙げられています。
 ジンクリッチプライマーをショッププライマーに使用したときに溶断・溶接性が劣り作業効率を低下させることがあります。
 このような場合、溶断・溶接の前に塗膜を除去するなどの手段を取ることがありますが、最近では塗膜除去の必要のない新タイプの無機ジンクリッチプライマーが開発されました。

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【粉体塗装】安全性と衛生上の問題




 粉体塗装では、溶剤形塗料のように有機溶剤による火災の危険性や中毒の心配はありませんが、粉じん爆発や粉じんを吸入することによる衛生上の問題が若干あります。

粉じん爆発

 粉じん爆発の例としては、炭じん、アルミ粉、小麦粉などがよく知られています。一般に、物質の細かい粉末粒子が空気中に分離浮遊している環境下で、爆発に必要な条件が全部揃っている限り爆発を起こすといわれています。粉体塗装の場合、このような条件が揃うことは殆どありませんが、粉体塗料自体は燃焼しますから十分な注意と対策を講じておくに越したことはありません。

防止対策

・ブース内の通風をよくし、粉じん濃度が高くならないようにする。
・ブースやダクトに粉がたまらないようにする。これは延焼を防ぐ意味で重要です。
・塗装機はできるだけ安全度の高いものを使用すること。また万一に備えて、発火したら、粉の吐出や回収装置が止まるような安全対策を講じておく必要があります。
・ハンガーなどは常に整備し、接触不良から起きるスパークの発生がないようにする。
・回収装置やダクトは、摩擦により静電気が発生するのでアースを十分とる。
・ブース内は、プラスチックのような燃焼しやすい材料は避ける。
 実際に粉体塗装が爆発的に燃焼した例はありませんが、ガンから出る塗料に着火したり、これがブース内に落ちてたまっていた塗料に着火した程度の事例はあります。いずれの場合も、急速に燃え広がることがないので溶剤形塗料のように大きな災害につながることはありません。塗料による燃焼性に大きな差はありませんが、メタリックのようなアルミ粉を使用するものは危険性があり好ましくないとされています。現在は安全性について検討されている段階です。

衛生上の問題

 粉じんの中でも2μm以上のものは鼻毛などでさえぎられて肺に達せず、0.5μm以下の細かいものは肺に達してもすぐに吐き出されるといわれます。粉体塗料中には0.5~2μmの範囲のものも微量存在しますから、いくらか人体に影響を与えると考えられています。実際に数十年間の実績の中で問題になった例はありませんが、できる限りの粉じん対策はとっておくべきです。顔に粉をかぶる状態での作業や、粉じんの立ちこめている環境は好ましくありません。設備上で十分な対策を取ると同時に、必ず防じん効果のよいマスクを着用するように心掛けるべきです。

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