ショッププライマーは鋼板よりショットブラスト、グリットブラストなどの処理によってミルスケール、赤錆などの汚染物を除去した後に原板に塗装し、加工後、さび止め塗装が行われるまでの期間の防錆を目的とするものです。ショッププライマーに必要な性能は次の通りです。
(1)速乾性。短時間で取扱い可能。
(2)鉄鋼面への付着性良好。
(3)各種塗料の塗り重ねが可能で相互の付着性が良い。
(4)溶接・溶断に悪影響を及ぼさない。
(5)数か月以上の防錆性。
ショッププライマーには、長ばく形エッチングプライマー、ジンクリッチプライマー、ノンジンクプライマー、ジンクプアープライマーなどが使用されています。
エッチングプライマーは従来、ウォッシュプライマーと呼びならされてきた塗料です。最初に開発された形は現在、短ばく形と呼ばれているものです。ポリビニルブチラール溶液にジンククロメート(ZTO型)などの顔料を加えた主剤と、リン酸アルコール溶液を使用前に混合する二液形塗料です。短ばく形エッチングプライマーは鉄鋼用のほか軽金属、亜鉛めっき面などの付着性と防食性向上の目的に使用されますが、極めて薄膜で屋外防食性はなく、塗装後すみやかに塗り重ね塗装を行う必要があります。
ショッププライマーに用いられるものは、フェノール樹脂などを加え、ある程度の耐久性が得られるように改良したもので、長ばく形エッチングプライマーと呼ばれます。主に塗り重ねられる塗装系が油性系、油変性アルキド樹脂系の場合に多く使用されます。
重防食塗料が普及されるに従い、エッチングプライマーよりも高い防食効果を有するショッププライマーとして、ジンクリッチプライマーが使用されるようになってきました。
ジンクリッチプライマーは亜鉛末の電気防食作用を基本とする塗料です。ショッププライマーとして使用するほか、膜厚50~75μm程度の厚膜形ジンクリッチペイントとして、重防食用塗料としても使用されます。無機質と有機質の別があり、無機質はアルキルシリケートあるいはアルカリシリケートをバインダーとしたものですが、ショッププライマーの場合はアルキルシリケート系が用いられています。有機質はエポキシ樹脂、ゴム系、ポリスチレン樹脂などをバインダーとして用いるものですが、エポキシ樹脂が殆どです。無機質と有機質の特長の比較について、概していえば無機質は防食性能、耐熱性に優れていますが、有機質は施工性に優れています。
塗り重ねられる塗装系には広く各種の合成樹脂系塗料の適用が可能です。しかし油性系、油変性アルキド樹脂系の塗り重ねは出来ません。
これは油性塗膜とジンクリッチ塗膜の層間で、早期に、はく離現象の発生する危険があるためです。その理由としては、層間で亜鉛石けんの生成反応が起こること、亜鉛の溶出によるアルカリ化によって、油性系塗膜が加水分解を受けやすいことなどが挙げられています。
ジンクリッチプライマーをショッププライマーに使用したときに溶断・溶接性が劣り作業効率を低下させることがあります。
このような場合、溶断・溶接の前に塗膜を除去するなどの手段を取ることがありますが、最近では塗膜除去の必要のない新タイプの無機ジンクリッチプライマーが開発されました。