上塗りは外部の環境に直接さらされるので、使用条件により耐候性・耐水性など環境条件に耐える性能が必要です。腐食性物質の遮断機能も優れていることが望ましいです。美観の保持が必要な場合には上塗り塗膜が主要な役割を果たすことになるので、保色性。光沢保持性など外観の維持にも優れている必要があります。下塗りあるいは中塗りとの付着性が良好でなければならず、これらと同一系統のビヒクルから成る塗料であるのが普通ですが、上塗りの要求性能によっては異なる系統の塗料が使用されることもあります。
上塗りの色調はなるべく堅牢なものを選ぶことが望ましいです。
色の堅牢度は使用顔料の種類によるところが大きいです。近い色調でも堅牢度の高い顔料と、そうでない顔料では保色性に大きく差を生じます。一般に鮮やかな色調よりはやや濁った色調の方が堅牢度が高く、変色しにくいといえます。
油性さび止めペイントの上塗りには長油性フタル酸樹脂塗料が広く用いられています。
塩化ゴム系塗料は塩素化樹脂、変性樹脂、可塑剤、安定剤などから成りますが、耐候性は変性樹脂の種類と量によるところが大きいです。変性樹脂には耐候性の良いアクリル変性アルキド樹脂などが用いられますが、あまり量を多く用いると光沢や作業性は向上しますが、塩化ゴム系塗料の特長である耐薬品性や層間付着性が低下するので好ましくありません。
高度な防食性能を有する塗装系として、エポキシ樹脂塗料とウレタン樹脂塗料の組合せが使用されます。エポキシ樹脂塗料は日光の作用で
白亜化し易いので下塗りや中塗りとして用い、耐候性の良いウレタン樹脂塗料の上塗りを組合わせるものです。
ウレタン樹脂塗料の硬化剤であるイソシアネート化合物には黄変して耐候性が劣るものがありますので、この目的には耐候性の良い無黄変形の硬化剤を用いることが必要です。
最近では、ポリウレタン樹脂塗料に比べてさらに耐候性の良いふっ素樹脂塗料が大型の構造物に塗装されています。特に海上にかかる長大橋は、最近ではそのほとんどがふっ素樹脂塗料で仕上げられています。
また、アクリルシリコン樹脂塗料(シリコン変性アクリル樹脂塗料)も徐々に増えつつあります。
中塗りとしてよく知られている
MIO塗料はヨーロッパでは上塗りとしてよく使用されています。耐候性が良く上塗りとして適当な性能を有していますが、わが国ではMIOの仕上がり感があまり好まれていないようで実績は少ないです。
アルミニウムペイントも上塗りとして用いられます。日光を反射するので、耐候性が良く、りん片状のアルミニウム粉が塗膜面に平行に並ぶこと(リーフィング)によって塗膜の遮断機能が向上することはMIOの場合と同様です。