鉛系さび止め塗料は最も古くから使われているさび止め塗料で、使用する顔料により、JIS K 5623(2002)「亜酸化鉛さび止めペイント」、廃止JIS K 5624(2002)「塩基性クロム酸鉛さび止めペイント」、廃止JIS K 5622(2002)「鉛丹さび止めペイント」があります。さらに、ビヒクルの種類によって、次のように分けて呼びます。
JIS1種タイプ:ボイル油をビヒクルとしたもの(油性系)
JIS2種タイプ:フタル酸樹脂ワニスをビヒクルとしたもの(合成樹脂系)
さび止め効果はJIS1種タイプの方が良好であるといわれていたが、近年の配合技術の向上により、防さび性はJIS2種タイプと同等であるとの報告がなされています。塗膜の乾燥・硬化はJIS2種タイプの方が速いです。
いずれも成分中の鉛と植物油とが反応して鉛石けんを生成し、この分解生成物が腐食性因子を遮断する鉛の作用を利用したものになります。塗膜と被塗物表面の界面を微アルカリ性に保持し、酸化被膜の欠陥の補修を容易にするなどの防食効果があります。
亜酸化鉛さび止めペイントは活性に富む亜酸化鉛(Pb2O)を含む塗料で、鉛系顔料に共通のさび止め機構のほかに次式のような反応を行い、これらの反応生成物が鉄面を腐食し難い状態に保持する作用を有するとされています。
Pb2O + 1/2O2 → 2PbO
Pb2O + H2O →Pb(OH)2 + Pb
塩基性クロム酸鉛さび止めはPbO・PbCrO4の組成を有するもので鉛系さび止め顔料に共通のさび止め機構による防食効果を発揮します。クロム酸とPbOの比率によりある程度性質が異なります。
シアナミド鉛さび止めペイントはPbCN2の組成を有する含量を含む塗料で、第二次大戦中鉛資源節約のためドイツで開発されたものになります。鉛系さび止め共通のさび止め機構のほかにアンモニアを遊離して鉄面をアルカリに保持します。我が国では昭和30年代に使用が開始されましたが、鋼構造物のさび止め塗装などに用いられています。
鉛丹ペイントは鉛丹(Pb3O4)をさび止め顔料の主成分としますが多少PbOを含んでいます。鋼構造物用さび止めペイントとして最も長い実績を有します。さび止め機構は先に述べた鉛系共通の機構によります。鉛丹ペイントは防食性能は優れますが、塗膜の乾燥と硬化が遅いという欠点を有します。したがって、屋外の塗替え塗装のように、速やかに塗膜としての機能を発揮する必要がある用途には不向きです。しかし、橋梁、鉄骨など新設鋼構造物の塗装に用いられています。
また、主として亜鉛めっき面用に用いられるものとして鉛酸カルシウムさび止めペイントがあります。
近年に実施されてJISの統廃合により、環境への負荷の高い製品のJIS廃止(JIS K 5622、JIS K 5624)が行われ、暫定継続規格とされた規格(JIS K 5623、JIS K 5625、 JIS K 5629)も、製品動向を調査し、廃止、継続、あるいは問題点を解決した規格への修正などが行われる予定です。