防食塗装系の独特な中塗り塗料としてMIO塗料があります。MIOはMicaceous Iron Oxide (鱗片状酸化鉄)の略で、天然鉱石より精製された暗褐色の結晶性酸化鉄で鱗片状をなす顔料で、塗膜面に平行に並ぶ性質があり、外部から侵入する物質の透過経路を長くすることによって塗膜の遮断機能を向上します。また日光を反射するので耐白亜化性が良くなります。これらの特徴により海外では防食塗料の中塗りや上塗りとして使用されています。
MIO塗料を中塗りとして使用する場合は2つの利点を生じます。第1点は上塗りとの塗装間隔が長くなっても、中塗りと上塗りとの層間付着性の低下が少ないことです。これはMIO塗膜面が比較的表面あらさが大きく、上塗りの付着性が良いこと、ほとんど白亜化しないことによると考えられています。
鋼構造物の防食塗装では工場塗装で下塗りを行い、現地建設作業終了後中塗りを塗装することがありますが、その場合下塗りと中・上塗りの塗装間隔が長くなることがあります。この際に工場の最終塗装をMIO塗料中塗りとすることにより層間付着性の確保をはかることができます。
また、通常塗り重ねることのできない下塗りと、上塗りの間にMIO塗料を中塗りとして入れることによりその組み合わせを可能にする利用法です。MIO系中塗り塗料は顔料濃度が大きく、それ自身耐溶剤性が大きいとともに上塗りの溶剤が下塗りまで浸透することを防ぐ機能を有します。たとえば油性さび止めペイントの上に塩化ゴム系塗料を塗り重ねた場合には塩化ゴム系塗料の溶剤が油性さび止めペイントの塗膜を膨潤させるので通常このような組み合わせの塗り重ねはできません。しかし、下塗り油性さび止めペイント、中塗りフェノール樹脂系MIO塗料、上塗り塩化ゴム系の塗装系にすれば、重ね塗りが可能となります。この塗装系は橋梁・石油タンクなどの鋼構造物用に使用されていました。
しかしながら、工場で上塗りまでの全塗装を行うことが主流になってきていることや、その表面粗さのため、いったん塗膜表面についた塩分などの付着阻害物を除去することが困難であり、上塗りとの付着性に影響を及ぼすケースがあることなどから、次第に使用されなくなってきています。JIS規格として、ビヒクルにフェノール樹脂を用いたJIS K 5554 「フェノール樹脂系雲母状酸化鉄塗料」及びエポキシ樹脂を用いたJIS K 5555 「エポキシ樹脂雲母状酸化鉄塗料」がありましたが、両規格とも2009年に廃止されました。