アクリル樹脂をバインダーとする塗料で、透明性、光沢、耐候性に優れ、上塗り塗料として用いられます。それぞれバインダーとしてのアクリル樹脂の形態から溶剤形、NAD、水系、粉体塗料などが作られますが、それぞれの概要は以下のようなものになります。
溶剤形には熱可塑性アクリル樹脂塗料と熱硬化性アクリル樹脂塗料があります。熱可塑性アクリル樹脂塗料はアクリルラッカーと呼ばれ、分子量2~5万のアクリル樹脂を溶剤で溶かしたもので、溶剤の蒸発により成膜します。アクリルラッカーは金属、金属建材などの上塗りに用いられますが、溶剤含有量が多いため近年は使用量が少ないです。熱硬化性アクリル樹脂塗料では2-ヒドロキシルエチルメタクリレート等の水酸基含有モノマーを共重合し、水酸基価40~120 KOH/g程度の樹脂とし、メラミン樹脂あるいはポリイソシアネートと混合して用います。メラミン樹脂硬化の場合は内部触媒としてアクリル酸などのカルボン酸含有モノマーを少量共重合します。熱硬化性アクリル樹脂塗料は家庭電化製品、金属建材、自動車上塗りなどの分野に用いられます。
NAD(non-aqueous dispersion) 形は脂肪族炭化水素溶剤中に0.1~数μmのアクリル樹脂粒子を分散させたもので、当初アメリカのRule66による芳香族炭化水素、ケトン系溶剤の規制に対応して開発され、NADラッカーという名称で自動車の塗装に用いられましたが、現在では低臭形ハウスペイントとして用いられるほか、自動車用塗料のレオロジー調整剤に用いられます。
水系にはエマルション形、コロイダルディスパーション形、水溶性形があります。エマルション塗料は界面活性剤の存在下、水中でエマルション重合して得た0.1~数μmの分散体を用いた塗料で、建築用などに用いられます。近年はコア/シェル形の二重構造を持つエマルションが自動車用ベースコートに開発されています。コロイダルディスパーション、水溶性形は樹脂酸価30~60mg KOH/gに設計したアクリル樹脂を溶液重合で合成し、脱溶剤後、アミン、水を加えて得ます。工業用、家庭用塗料に用いられます。粉体塗料には溶液重合した後脱溶剤した樹脂、懸濁重合するなどした得られた樹脂から水を除き球状粒子とした樹脂を用います。粒子間の融着を防ぐためガラス転移温度を55℃程度以上に設計します。粉体塗料は建材、電気製品などに用いられます。一度に厚膜が得られ、エッジ部分にも塗膜が付きやすく、塗料のリサイクルが可能などの特徴があります。