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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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さび止め顔料各論:塩基性クロム酸塩、シアナミド鉛、鉛酸カルシウム、塩基性硫酸鉛



(3)塩基性クロム酸塩

 nPbO・PbCrO4を主成分とする黄赤色の顔料で、使用されるのはPbOの含有量の比較的多いものです。クロム酸成分を含んでいますが、クロム酸イオンの溶出はほどんどなく、塩基性顔料として作用します。防食作用は鉛丹とほぼ同様です。用途はボイル油をビヒクルとする油性さび止め塗料の形で鉄構造物の新設、補修に用いられ、また樹脂ワニスを用いたプライマーにも使用されています。

(4)シアナミド鉛

 PbCN2の組成を持つ黄色の顔料で、比較的歴史が新しいものです。防食作用のおもなものは次の通りです。
a)ビヒクルの油と反応して緻密な塗膜とする。浸透する水を非腐食性のものとする。
b)水分と反応してアンモニアを生じ陰極反応を抑える。
 用途は、ボイルをベースとした油性さび止め塗料として、新設の鉄鋼構造物の新設及び補修用として用いられ、また樹脂ワニスを用いたプライマーにも使用されます。

(5)鉛酸カルシウム

 Ca2PbO4(2CaO・PbO2)の組成を持つ白色に近いクリーム色の顔料です。防食力は鉛丹や亜酸化鉛に比べて若干劣りますが、白色に近いので、白色のさび止め塗料や淡彩色仕上げの場合の下・中塗り用として便利です。
 また亜鉛面に対して特に有効果とされていますので、亜鉛めっき面の下塗りや、ジンクリッチペイント塗装系のメンテナンスに使われています。防食作用は他の鉛系顔料と類似していますが、水により分解して生じるカルシウムイオンと、鉛酸イオン両方の作用により、腐食の局部電池の陰陽両極に働いてその反応を妨げる作用もあります。亜鉛めっき面用としてJIS化されています。

(6)塩基性硫酸鉛

 nPbO・PbSO4の組成を持つ白色の顔料で鉛酸カルシウムと同様、白色または淡彩色のさび止め塗料用として使用されていますが、防食力はあまり大きくなく、さび止め用として単独で用いられることは少ないです。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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さび止め顔料各論:鉛丹と亜酸化鉛



(1)鉛丹

 Pb3O4を主成分とする橙色の顔料で、もっとも古くから優れたさび止め顔料として使用されています。Pb3O4の純度により等級が分けられており、塗料用としては純度の高い特号や1号が使用されます。Pb3O4以外の成分はほとんどPbOであり、Pb3O4の純度が低い2号や3号は活性が強く、塗料に用いたときビヒクルとの反応性が大きくなります。この顔料の防食作用の主なものは次の通りです。
a)ビヒクルの油と反応して鉛石けんを作り、緻密な塗膜とする。
b)PbOによるアルカリ性により、さび発生反応の陰極反応を抑える。
c)陽極酸化作用により鉄面を不動態化する。
 油性系、長油系アルキド樹脂系ビヒクルと組み合わせて鉛丹ペイントとして最も実績があり、他の樹脂系のプライマーにも使用されます。ジンククロメートと併用されることもあります。

(2)亜酸化鉛

 Pb2Oを主成分とする暗灰色の顔料で、鉛丹に次いで古くから優れた使用実績があります。鉛丹よりも活性が強いので、元来は使用前に塗料ベースと亜酸化鉛を混合する現場調合形ですが、既調合形のものもあります。
 非常に優れた防錆力を有しており、防食作用の主なものは次の通りです。
a)ビヒクルの油と反応して緻密な塗膜を作る。
b)浸透してくる水分や酸素と反応して腐食を防止する。
c)アルカリ性により陰極反応を防止する。
d)鉄面に作用して不動態化する。
 用途は鉛丹と同様に鉄鋼構造物の新設、補修用塗料として広く使用されるほか、樹脂ワニスを用いたプライマーとしても用いられています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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さび止め顔料の分類:金属粉顔料




 さび止め顔料として利用されている金属粉顔料は、亜鉛末です。亜鉛末を使用したさび止め塗料はジンクリッチペイントと呼ばれます。ジンクリッチペイントはほかの防食塗料とは全く異なる防食機構に基づき、乾燥塗膜の大部分が亜鉛末から成り、ごくわずかのバインダーでこれを結合して鉄鋼面に付着させるような構成の塗料です。亜鉛末は、相互間及び鉄面との間に金属接触を保持しています。乾燥塗膜中の亜鉛末の濃度を増加していくと、ある濃度を超えたとき塗膜の電気抵抗が急激に減少します。
 この結果亜鉛末は、電気防食における流電陽極や亜鉛めっきと同様な防食作用を行います。あるデータでは乾燥塗膜中の亜鉛末重量が95%付近で塗膜抵抗が最低となりますが、実用的には他の性能も考慮して、これよりやや低い濃度で使用されています。このようにジンクリッチペイントは、亜鉛末の電気防食作用を基本として設計された塗料であり、少なくとも使用開始初期には、この作用が防食効果の主役を果たしています。しかし塗膜が腐食環境にさらされると、亜鉛の腐食生成物である塩基性亜鉛塩が塗膜内部及び素地鉄鋼表面に沈殿し、塗膜が遮断機能を有するようになります。このため後期には、遮断効果の寄与率がかなり大きくなると考えられます。
 またこのため亜鉛末の消費速度が減少し耐久性の延長に役立ちます。
 この塗料は亜鉛末の電気防食作用によるので塗膜損傷部にもある程度防食作用が及ぶ特長があります。塗膜表面が亜鉛の腐食性成分で覆われていると、電気防食作用は休止してしまいますが、塗膜が傷つけられると、その周囲には新しい亜鉛末の露出が起こり、再び電気防食作用が働き始めます。
 アルミニウム粉は防食塗装において、しばしば用いられる顔料ですが、通常はさび止め顔料として使用されるのではありません。りん片状で、塗膜面に平行して並ぶ性質によって塗膜の遮断性能の向上、日光を反射する性質によって耐候性の向上、金属的外観の付与などの目的で、上塗り塗料の顔料として利用されることが多いです。アルミニウムは元来、亜鉛よりもさらに卑な電位を有する金属ですが、表面が緻密な酸化皮膜で覆われているため、通常は鉄鋼に対して電気防食作用を示しません。しかし、塩素イオンなど、不動態化皮膜を破壊するイオンが存在する環境では電気防食作用を示し、ジンクリッチペイント中に添加するなどして、さび止め顔料として利用されていることもあります。

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