ジンクリッチペイントは乾燥塗膜の大部分が亜鉛末から成り、これをごくわずかのバインダーで結合している塗料になります。この状態では、乾燥塗膜はかなり高い導電性を有しています。これは顔料の隙間を埋めるに十分な量のバインダーが存在していないために、亜鉛末相互及び亜鉛末と鋼板の間に金属接触が保持されているからです。したがって、外部から水分や腐食性物質が侵入すると、亜鉛末と素地鋼板との間に電池が構成され、亜鉛末は流電電極として作用し、素地鋼板は保護されます。亜鉛末の消耗が起こるとともに、亜鉛の腐食生成物が素地鋼材面及び塗膜内の顔料間の隙間に沈積し、塗膜の遮断機能を増し、素地鋼板を防食するとともに亜鉛の消耗速度を低下させ、塗膜寿命を延ばす効果をもたらします。
ジンクリッチペイントは鋼構造物の建造工程において、加工組立期間中の一時防錆の目的で原板に塗装されるショッププライマーとして、また、合成樹脂系塗料を中・上塗りする場合のさび止め用の下塗り塗料として広く利用されています。バインダーの種類によって、主にエポキシ樹脂系から成る有機質と、アルキルシリケート系及びアルカリシリケート系の無機質のものがあります。それぞれの大まかな特徴として、有機質のものは施工性に優れ、無機質のものは防食性能に優れています。