化学的前処理は主に工業塗装の前処理として利用されており、脱脂、除錆、皮膜化成処理の一連の工程によるのが普通です。
脱脂には、溶剤脱脂(ワイピング、浸漬法、蒸気洗浄)、アルカリ脱脂、エマルジョン脱脂等があります。金属の種類、油脂の種類と付着量、脱脂後に予定されている工程などによって適切な方法が選択されます。
酸洗い(除錆)によるミルスケールや赤さびの除去は、塩酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、硝酸などが使用されますが、ほぼ最初の3種類が利用されます。浸透・湿潤剤として界面活性剤を加え、腐食抑制剤としてアミンなどを添加して鋼材自身の溶解(エッチング)を防ぎます。アルカリ除錆もありますが、一般に高温、長時間の処理となりますので、特殊な場合にしか用いられていません。
鉄鋼用の塗装下地に用いられる皮膜化成処理はリン酸塩化成処理が大半を占めております。亜鉛合金及び亜鉛めっき鋼板にもリン酸塩化成処理やクロメート処理などの皮膜化成処理が行われています。リン酸塩化成処理には、リン酸マンガン系、リン酸亜鉛系、リン酸鉄系統があり、浸漬あるいはスプレーにより処理されています。塗装下地用には、リン酸亜鉛系で0.5~5g/㎡が多く、厚膜塗装の場合6~15g/㎡、リン酸鉄系では0.5~1.0g/㎡が多くなっています。アルミニウム及びその合金は適当な方法で酸化皮膜を除去した後、クロメート及びノンクロメート処理、リン酸亜鉛系処理、有機チタン系処理などが用いられます。
塗装下地として化成処理を行う目的は、耐食性と塗膜の付着性の向上になります。例えば、リン酸亜鉛系皮膜は結晶の集まりになりますが、この目的に対しては微細な結晶が緻密に集積していることが望ましいです。塗装金属の物性の見地からも同様です。