(3)塩基性クロム酸塩
nPbO・PbCrO4を主成分とする黄赤色の顔料で、使用されるのはPbOの含有量の比較的多いものです。クロム酸成分を含んでいますが、クロム酸イオンの溶出はほどんどなく、塩基性顔料として作用します。防食作用は鉛丹とほぼ同様です。用途はボイル油をビヒクルとする油性さび止め塗料の形で鉄構造物の新設、補修に用いられ、また樹脂ワニスを用いたプライマーにも使用されています。(4)シアナミド鉛
PbCN2の組成を持つ黄色の顔料で、比較的歴史が新しいものです。防食作用のおもなものは次の通りです。
a)ビヒクルの油と反応して緻密な塗膜とする。浸透する水を非腐食性のものとする。
b)水分と反応してアンモニアを生じ陰極反応を抑える。
用途は、ボイルをベースとした油性さび止め塗料として、新設の鉄鋼構造物の新設及び補修用として用いられ、また樹脂ワニスを用いたプライマーにも使用されます。(5)鉛酸カルシウム
Ca2PbO4(2CaO・PbO2)の組成を持つ白色に近いクリーム色の顔料です。防食力は鉛丹や亜酸化鉛に比べて若干劣りますが、白色に近いので、白色のさび止め塗料や淡彩色仕上げの場合の下・中塗り用として便利です。
また亜鉛面に対して特に有効果とされていますので、亜鉛めっき面の下塗りや、ジンクリッチペイント塗装系のメンテナンスに使われています。防食作用は他の鉛系顔料と類似していますが、水により分解して生じるカルシウムイオンと、鉛酸イオン両方の作用により、腐食の局部電池の陰陽両極に働いてその反応を妨げる作用もあります。亜鉛めっき面用としてJIS化されています。(6)塩基性硫酸鉛
nPbO・PbSO4の組成を持つ白色の顔料で鉛酸カルシウムと同様、白色または淡彩色のさび止め塗料用として使用されていますが、防食力はあまり大きくなく、さび止め用として単独で用いられることは少ないです。