《ビニル樹脂》
ビニル樹脂としては塩化ビニル樹脂をはじめとして、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂など種類が多く、塗料用展色剤としてはほとんどが共重合体のものが使用されます。その代表的樹脂が塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体であり、これは塩化ビニルの強じん性、耐化学薬品性と酢酸ビニルの易溶性、可塑性、付着性などを兼ね備えています。塩化ビニルが87%前後のものは溶解性があまりなく、溶液粘度はやや高いですが、塗膜は強靭で耐薬品性が特に優れています。塩化ビニルと酢酸ビニルのモル比が70:30くらいの共重合体あ溶解性が良く、溶液粘度も高くなりません。共重合体の性質は、重合度により異なり、塗料用としては大体平均重合度100~400程度です。ケトン類、酢酸エステル類、芳香族系溶剤に溶解します。またアクリルエステル樹脂、アルキルフェノール樹脂などと相溶します。塗膜は酸、アルカリをはじめ、耐海水性、耐水性、耐候性などに優れています。
アクリル樹脂をさび止め塗料の展色剤として用いる場合には、アクリル酸エステルを重合させた、いわゆる熱可塑性のものが用いられます。塗料用としては、これで単独では硬化膜が硬すぎるので、塩化ビニルと同様、酢酸ビニルとの共重合体が用いられます。前述した塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体に比べて紫外線、熱などに対してより安定なので、特に外面塗装に用いられます。
これらビニル樹脂を用いた塗料は、溶剤蒸発によって乾燥するので速乾性です。これは耐水性、耐薬品性に優れていますが、耐溶剤性、耐熱性はあまりよくありません。従来この塗料は塗装1回あたりの膜厚が小さく、多数回の塗装を必要とする欠点がありましたが、最近では1回に60μm程度の膜厚が得られる厚膜形の製品も開発されています。