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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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内部壁の塗装について



《内部壁の素地ごしらえ》

 素地とは、これから塗装しようとする素材面のことをいい、塗装準備のために素地に対して行う作業のすべてを素地ごしらえといいます。素地ごしらえは塗装工程のうちで最も大切な工程です。いかに塗料の品質が良くても、また塗装方法が適切であっても、素地ごしらえが十分でない場合には、塗装効果があがりません。

《水分》

 コンクリートやモルタルの新設工事の場合、一般には施工後、3週間以上放置した後、塗装に入るのが適切とされています。これはコンクリートやモルタルの乾燥が3週間くらいで平衡状態になり、その含水率が8%前後となって水分の塗膜に対する影響力がほとんどなくなるからです。水分の含水率が高いと塗料が塗面から内部へ浸透できないため、物理的密着性は不良となります。
 この結果、ブリスター(ふくれ)やハガレ、クラック等の現象が起きます。また、素地の吸い込みがほとんどないため、塗装した塗膜の乾燥が極度に遅くなって、塗膜が流れる(タレ)現象が発生します。
 水分の測定にはKETTのコンクリート、モルタル用高周波水分計が用いられます。

《アルカリ》

 新設のモルタルやコンクリートは強いアルカリ性を示し、pHは一般に12以上であります。しかし、これらの強いアルカリ性も空気中の炭酸ガスと反応して。炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムとなって表面から徐々にアルカリ性を失っていきます。
 内部のアルカリ性物質は中和されるのに長時間を要し、また中和化は表面ほど均一には進まないため、局所に濃度の高いアルカリが残留しやすいです。
 表面のアルカリ消失は水分と同様、約3週間で安定化し、壁材の呼吸で水分とともにアルカリ分が塗膜の表面に持ち出され、水分が揮散すると表面に白い粉が残り仕上がりを不良にします。これがエフロレッセンスという現象です。また、耐アルカリ性の悪い酢酸ビニル系エマルション塗料などは、この活性なアルカリに負けて変色を起こすことがあります。特にこの変色は水分のたまりやすい壁のコーナー部や下部に集中して起こりやすいです。いずれにしても、水分とアルカリ分は互いに相乗して塗膜の劣化を促進する危険があるので、十分な注意が必要であります。
 アルカリ度の測定にはpH試験紙または万年筆型の万能指示薬を使ったpHコンパレーターなどが用いられています。

《シーラー》

 素地調製が終わるとシーラーを塗布しますが、この目的は次の3つに集約できます。
 ①素地の内部からのアルカリ作用を抑制する・緩和する。
 ②素地と上塗りとの密着性を向上させる。
 ③塗面の吸い込みを防ぎ、刷毛塗り作業性を向上させ、色ムラつやムラを防止する。
 シーラーの種類としては水系と溶剤系があります。水系は②,③、溶剤系は①,②,③の目的を満足させます。一般的には溶剤系のシーラーの方が水、アルカリの影響を受け難く、また下地の粉化を抑え込む力があるので、塗りかえ用シーラーとしても巾があります。

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内部壁用塗料の分類




 建築物内部には、昨今張り紙やクロス張りが増えてきていますが、壁用塗料の占める割合は依然と大きく、そのメンテナンスの容易さから、一般に水希釈性のアクリル及び酢酸ビニル系エマルション塗料が使用されています。また、場所によっては耐水性や耐薬品性のよい溶剤形の塩化ビニル塗料が使用されています。また、塗料の無公害化の研究にともなって、この溶剤形塩化ビニル樹脂系塗料に代わる水系つや有りエマルション系塗料や汚れにくく、汚れが取りやすい特殊アクリル樹脂系塗料や環境対応形水系内装塗料も脚光を浴びてきています。このような観点から、内部壁用塗料を体系的に分類すると次のようになります。

●エマルション塗料

 合成樹脂エマルション塗料は、塗装の際は水で適当に薄められ、火災、溶剤中毒などの危険がなく、塗装作業も安全で、内壁用塗料の主流をなしています。
 エマルション塗料は、一般の溶剤型塗料と異なり、塗膜を形成する合成樹脂の粒子が互いに溶け合うことなく混ざり合って浮遊懸濁している塗料で、エマルション樹脂が融着して塗膜を形成しますので塗膜性能を発揮するまでやや時間がかかります。特に高湿気、低温下や換気の悪い場所ではこの傾向が大きいです。

●アクリル系エマルション塗料

 酢酸ビニル系に比べて耐候性、耐水性、耐アルカリ性に優れていますので、高級着装用として、屋内・外を問わず使用されています。

●酢酸ビニル系エマルション塗料

 エマルション系ではもっとも古くから塗料化されたもので、アクリル系に比べて耐候性、耐水性等劣るものの、美装面と適度な価格から、主に内装用に使用されています。

●特殊アクリル樹脂系塗料(含みつや)

 壁用エマルション塗料は通常手垢などで汚れやすく、拭いてもとれにくいという欠点がありますが、この欠点をなくし、マジックやサインペンの汚れでも拭き取れる塗膜機能を有した塗料です。塩化ビニル樹脂塗料(つや消し)の分野である、学校や病院の内壁の新築や塗り替えの用途に、脚光を浴びています。

●環境対応形水系内装塗料

 シックハウス症候群対策として建材等から発生するホルムアルデヒド等の有害物質を吸着、固定化する塗料や、臭いがなく、有機溶剤(VOC)を含まない安全な塗料も開発されています。

●つや有りエマルション塗料

 塩化ビニル、アクリル溶剤形つや有り塗料の欠点を補うべく、近年誕生した塗料としてつや有りエマルション塗料があります。特に強溶剤による毒性、臭気、引火性の欠点を水系タイプにすることで安全面の作業性アップをはかることができます。

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耐熱塗料(heat resisting paint)




 耐熱塗料は、100℃以上の高温にさらされる場所に塗られ、被塗物の防食、美観などの機能を果たす塗料であります。したがって、塗膜は高温に耐え、かつ使用環境にあっても変色がなく、防錆力、耐候性も優れていなければなりません。
 耐熱塗料は宇宙開発や家電などの進歩につれて、性能のよい塗料が要求されるようになりました。また、耐熱性の合成樹脂も開発されました。その代表的なものにはポリアリルシロキサン、ポリイミド、ポリフェニルオキサイド、ポリパラキシレン、ポリフェニレンなどありますが、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース、アルキッド樹脂なども用いられます。
 現在、市販されている耐熱塗料は、150℃まで耐えられるものはアルキッド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が用いられ、150℃以上のものはエポキシ樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂などを使用しています。

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