《内部壁の素地ごしらえ》
素地とは、これから塗装しようとする素材面のことをいい、塗装準備のために素地に対して行う作業のすべてを素地ごしらえといいます。素地ごしらえは塗装工程のうちで最も大切な工程です。いかに塗料の品質が良くても、また塗装方法が適切であっても、素地ごしらえが十分でない場合には、塗装効果があがりません。《水分》
コンクリートやモルタルの新設工事の場合、一般には施工後、3週間以上放置した後、塗装に入るのが適切とされています。これはコンクリートやモルタルの乾燥が3週間くらいで平衡状態になり、その含水率が8%前後となって水分の塗膜に対する影響力がほとんどなくなるからです。水分の含水率が高いと塗料が塗面から内部へ浸透できないため、物理的密着性は不良となります。
この結果、ブリスター(ふくれ)やハガレ、クラック等の現象が起きます。また、素地の吸い込みがほとんどないため、塗装した塗膜の乾燥が極度に遅くなって、塗膜が流れる(タレ)現象が発生します。
水分の測定にはKETTのコンクリート、モルタル用高周波水分計が用いられます。《アルカリ》
新設のモルタルやコンクリートは強いアルカリ性を示し、pHは一般に12以上であります。しかし、これらの強いアルカリ性も空気中の炭酸ガスと反応して。炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムとなって表面から徐々にアルカリ性を失っていきます。
内部のアルカリ性物質は中和されるのに長時間を要し、また中和化は表面ほど均一には進まないため、局所に濃度の高いアルカリが残留しやすいです。
表面のアルカリ消失は水分と同様、約3週間で安定化し、壁材の呼吸で水分とともにアルカリ分が塗膜の表面に持ち出され、水分が揮散すると表面に白い粉が残り仕上がりを不良にします。これがエフロレッセンスという現象です。また、耐アルカリ性の悪い酢酸ビニル系エマルション塗料などは、この活性なアルカリに負けて変色を起こすことがあります。特にこの変色は水分のたまりやすい壁のコーナー部や下部に集中して起こりやすいです。いずれにしても、水分とアルカリ分は互いに相乗して塗膜の劣化を促進する危険があるので、十分な注意が必要であります。
アルカリ度の測定にはpH試験紙または万年筆型の万能指示薬を使ったpHコンパレーターなどが用いられています。《シーラー》
素地調製が終わるとシーラーを塗布しますが、この目的は次の3つに集約できます。
①素地の内部からのアルカリ作用を抑制する・緩和する。
②素地と上塗りとの密着性を向上させる。
③塗面の吸い込みを防ぎ、刷毛塗り作業性を向上させ、色ムラつやムラを防止する。
シーラーの種類としては水系と溶剤系があります。水系は②,③、溶剤系は①,②,③の目的を満足させます。一般的には溶剤系のシーラーの方が水、アルカリの影響を受け難く、また下地の粉化を抑え込む力があるので、塗りかえ用シーラーとしても巾があります。