建築物内部には、昨今張り紙やクロス張りが増えてきていますが、壁用塗料の占める割合は依然と大きく、そのメンテナンスの容易さから、一般に水希釈性のアクリル及び酢酸ビニル系エマルション塗料が使用されています。また、場所によっては耐水性や耐薬品性のよい溶剤形の塩化ビニル塗料が使用されています。また、塗料の無公害化の研究にともなって、この溶剤形塩化ビニル樹脂系塗料に代わる水系つや有りエマルション系塗料や汚れにくく、汚れが取りやすい特殊アクリル樹脂系塗料や環境対応形水系内装塗料も脚光を浴びてきています。このような観点から、内部壁用塗料を体系的に分類すると次のようになります。
●エマルション塗料
合成樹脂エマルション塗料は、塗装の際は水で適当に薄められ、火災、溶剤中毒などの危険がなく、塗装作業も安全で、内壁用塗料の主流をなしています。
エマルション塗料は、一般の溶剤型塗料と異なり、塗膜を形成する合成樹脂の粒子が互いに溶け合うことなく混ざり合って浮遊懸濁している塗料で、エマルション樹脂が融着して塗膜を形成しますので塗膜性能を発揮するまでやや時間がかかります。特に高湿気、低温下や換気の悪い場所ではこの傾向が大きいです。●アクリル系エマルション塗料
酢酸ビニル系に比べて耐候性、耐水性、耐アルカリ性に優れていますので、高級着装用として、屋内・外を問わず使用されています。●酢酸ビニル系エマルション塗料
エマルション系ではもっとも古くから塗料化されたもので、アクリル系に比べて耐候性、耐水性等劣るものの、美装面と適度な価格から、主に内装用に使用されています。●特殊アクリル樹脂系塗料(含みつや)
壁用エマルション塗料は通常手垢などで汚れやすく、拭いてもとれにくいという欠点がありますが、この欠点をなくし、マジックやサインペンの汚れでも拭き取れる塗膜機能を有した塗料です。塩化ビニル樹脂塗料(つや消し)の分野である、学校や病院の内壁の新築や塗り替えの用途に、脚光を浴びています。●環境対応形水系内装塗料
シックハウス症候群対策として建材等から発生するホルムアルデヒド等の有害物質を吸着、固定化する塗料や、臭いがなく、有機溶剤(VOC)を含まない安全な塗料も開発されています。●つや有りエマルション塗料
塩化ビニル、アクリル溶剤形つや有り塗料の欠点を補うべく、近年誕生した塗料としてつや有りエマルション塗料があります。特に強溶剤による毒性、臭気、引火性の欠点を水系タイプにすることで安全面の作業性アップをはかることができます。