エポキシ樹脂にコールタール、ビチューメン(瀝青質)などと硬化剤を原料とした塗料です。旧JIS K 5664:2002「タールエポキシ樹脂塗料」では、その種類を次のように分けています。
1種:耐油性・耐薬品性が優れているもの。
2種:耐油性・耐薬品性をもっているもの。
3種:耐油性・耐薬品性を必要としないところに用いるもの。
中でも1種タイプはすぐれた耐水性や対塩水性もあるため、海洋構造物の没水部を中心に広く使用されてきました。極めて防食性が優れ、厚塗りが可能であるため、高度の防食性能と耐久性が必要な箇所や、塗り替え塗装の困難が伴う箇所などに用いられます。他の合成樹脂系塗料と比較して素地への浸透性が良く、不安定な素地調整面への適用性がやや良いです。この塗料は防錆顔料が配合されておらず、防食効果はもっぱら塗膜の環境遮断機能によるものであるので、塗装に当たっては必要な塗膜厚を確保してピンホールのないように施工することが非常に重要です。タールエポキシ樹脂塗料には、次のような使用上に制約・留意点があります。
①色が黒と茶褐色に限定される。
美装仕上げを目的に一般の上塗り塗料を塗り重ねると、タールが表面ににじみ出る(ブリード)
現象を生じます。
②低温下では硬化しにくい
一般のものは、10℃以下で硬化反応が進みにくいため、低温時にはイソシアネート系硬化剤を用いた
タイプのものが使用されます。
タールには発がん性の懸念がある物質を含んでおり、2009年にJIS K 5664は廃止されました。しかし安全衛生性を考慮して、コールタールそのものは使用せずビチューメンとして特殊膨潤端を用いたタールエポキシ樹脂塗料もあります。