建築物の高層化やプレハブ工法の出現に加え、工期の短縮、品質の確保、市街地での現場作業の困難等の増加などに伴い、最近の建築物外観は、PC板、ALC板、金属パネル、スレート板など、工場で生産、加工される構成材や部材に置き換えられる傾向にあります。
《外壁用塗料とその動向》
建築物の使用目的、構造、立地条件などにより多少は異なるものの、外壁用塗料とその動向については次のようなことがいえます。
①建築物の高層化あるいは大気汚染の進行に伴い、より一層耐久性、耐汚染性などに優れるとともに、容易にメンテナンス(補修、塗り替え)が出来る塗料と塗装工程が重要なものとなっています。
②意匠やテクスチュアなどの仕上がり外観においても、建築物と環境の調和を図りながら、たえず斬新なものが求められており、従来の砂壁状吹吹付材(リシン)やアクリルエマルション塗料仕上げから複層仕上塗材(吹付タイル、弾性タイル)仕上げに代表されるふっ素、シリコン、ウレタン仕上げなどの高級化への傾向が見られます。《セメント系外壁材の下地とその調整》
外壁の塗装においては、耐久性に優れた塗料と塗装系を選択することはもちろんのこと、その下地の性状について十分知った上、塗装に適切な下地(素地)調整を施すことが非常に重要であります。●現場打ちコンクリート
現場打ちコンクリートの一般的な組成としては、セメント1、砂2、砂利3、水0.6からなり、その工法も現在はベニヤ型わくが主流になっています。実際の建物の場合、コンクリート面に直接塗装されるケースは少なく、通常は樹脂モルタルによる下地調整面への塗装が大部分を占めます。
コンクリート面に直接塗装する場合は、エマルション塗装の場合と同様に、水分とアルカリ度が十分消失してから塗装する必要があります。●セメントモルタル
セメントモルタルの組成としては、セメント1,砂2~3、水からなり、コンクリートの組成から砂利を除いたようなものであり、アルカリ度や水分はともにコンクリートに類似しています。
一般的にはコンクリート面に約20mm程度の厚さにモルタルを塗布し、その仕上げ方法は大きく分けて、平滑な面に仕上げる金ゴテ仕上げと、リシン状の砂を露出した表面に仕上げるはけ引き仕上げの2通りがあります。
①塗装の下地としては金ゴテ仕上げが良い
塗料とモルタルの物理的な接着性から見れば、下地としてははけ引き仕上げの方が適していますが、次に述べるレイタンス層がはけ引き仕上げの方が多いため、金ゴテ仕上げ仕上げの方が良いです。
②はけ引き仕上げの場合、水にしめらせたはけでモルタル面をはけ引きすると、モルタル表面の水分が多くなり、乾燥後レイタンス層(白い粉が吹いたような層)が出来る場合があります。このレイタンス層は強度がなく、また、塗料の性能をさまたげることがあるので、溶剤形シーラーを必ず塗装する必要があります。●樹脂モルタル
セメントモルタルに代わるコンクリート面の下地調整用として最近盛んに使用されてきており、施工目的としてはコンクリート面の素穴をを埋めたり、段違いを直すために部分的に使用する場合と、コンクリート面をうすく均一に全面コテで仕上げる場合とに分けられます。この場合も同様、水分、アルカリ度の消失を待って塗装する必要があります。